短編『ある男性の苦悩』
「間違ってるのは解ってる」
いつだって自問自答だ。アイツがしてることも、俺がここに存在してる事も間違ってるんだ。
死者は消えるべきで、生者は残りの人生を歩むべきで。だから、アイツの、アイツ等のしてる事は全て間違いなんだ。
実はアイツの間違いを止める方法を俺は知ってる。俺が消えれば良い。ただそれだけだ。
アイツは俺らと別れたくないから、失いたくないから殺人を繰り返す。人のいない地球を作ろうとする。俺を、俺の住む楽園を守るために。
だから俺さえいなくなれば、理由が無くなってしまえば、アイツの殺人は止まるんだ。そうやって消えて行った自我達や、それで歩みを止めた戦士を沢山見た。
でも、でも俺には出来ない。それはアイツを悲しませることになる。間違いは止まるけど、アイツが悲しむ。今以上に悲しむ。
結局人はどこまでいっても自分勝手だ。生きてても、死んでても。アイツは俺といたいという理由のために人を殺すし、俺は……俺はアイツといたいから消えたくない。
つまり我儘なんだ。ただの俺の我儘。幼いころに母を失い、その後出会い恋した女性……彼女と共にいたいと願ってしまってるだけなんだ。
だから間違ってる。俺は間違ってる。アイツだけじゃない、俺も間違ってるんだ。私利私欲のため、俺がアイツといたいがために、アイツの殺人に加担してる。
本当は殺人だけ止めてすぐにこっちに来て欲しいけど……他人に殺人を任せて自分だけ楽するような人間じゃ、アイツはない。人を殺しておいて、世界を破滅させておいて、正義感は強いんだ。そういう所が好きなんだ。
だから──
「早く終わってくれよ。この苦しみの時間」
そう、願う事しか出来ない。我儘に、自分勝手に。そう。
「愛は、世界を滅ぼすのか……」
まさか親を殺された俺が、そっち側になるなんてなぁ。
でももう来るところまで来た。覚悟はとっくに決まっている。
『愛してるよ、シーエ。早く終わらせよう』
「あぁ、一緒にやり遂げようね。エムジ」
──俺らの罪は続く。
現在脳仕掛けの楽園はcomicoにて連載中です。
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内容は同じですが読みやすく文章を改変してたり、伏線を解りやすく強調してたりしております。
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あと現在連載中のゼロマキナIFもヨロシク
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