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二章11『傭兵』※挿絵有

『お疲れさん。シーエ、アルビ』


 そう言いながらウチに飲み物を持ってきてくれるエムジ。あれか。ウチに口無いのに嫌がらせか。食道に直接流し込めってか。


『口を捨てたお前が悪い。俺は悪く無い』


「いや知ってて飲み物差し入れるとか、手の込んだ嫌がらせ以外の何物でもないだろう」



挿絵(By みてみん)



 あれから6年経った。

 エムジに傭兵に誘われ、近くの海岸で大規模戦闘が行われてから、6年経った。



 その戦闘には辛くも勝利し、その後傭兵になったウチはエムジとアルビと共に、マキナヴィス内の戦場を渡り歩いている。ついさっきも戦闘が終わったばっかりだ。だからエムジは差し入れという名の嫌がらせをウチに披露している。クソが!


 6年も戦ってりゃ怪我も絶えず、今やウチは四肢は全滅の下アゴも吹き飛び、中々素敵な見た目になっている。虫じゃんとエムジにはよく言われる。お前だって人には見えねぇじゃん。



 今のウチは戦闘時の機動性を重視し、足を4本に。先端にはローラーをつけて移動速度を上げている。右手は刃物を装備出来るように改造し、機動性と合わせて素早く敵の首を飛ばせる様なカスタマイズだ。色々戦って分かったが、ウチは近距離戦闘の方が得意らしい。


「口の再生はしないの?」


 アルビに聞かれた。今は下アゴは外れたまま、特に気にせず生活してる。アゴ無いと見た目がアンバランスだったので、軽い作業用アームをつけてるが。

 口の再生も考えたが、時間がかかるので今はしていない。肉を生成するには時間とカロリーが必要なので、常に戦場に出ているウチ等には中々向かないのだ。上アゴから生やしているアームも、丁度良く首を守る位置にいるので戦闘時に刃物で首を切られる心配が減り、ソコソコ役立っている。


 なお食事は喉元に開いた食道に流動食を直接流し込んでいる。食道には普段は弁をしてるので不純物が入ることも無いから安心だ。食べ物の味が恋しいが、それは戦争が終わって、じっくり口を治療してからのお楽しみにしよう。そもそもアゴ無くなったのが1ヶ月以上前なので味という概念があまり思い出せない。エムジだってアルビだって長い事食事の楽しみには味わって無いはずだしね。


『え? 俺等培養液通して味を楽しんでるぜ? 味覚部分を刺激する物質が入ってるヤツ売ってるぞ』


「はあ!? え、何? アルビもそうなの!!?」


「う、うん。むしろ何でシーエがそうしないのか結構疑問」


「知らなかったからですやん!!」


 ウチだけかよ食事の楽しみ無くなってたの! ひどいや!!

 でもま、培養液よりは流動食の方がコストもかからないし、とりあえずはこのままで良いか。


 傭兵はエムジが言っていた通りかなり実入りが良く、三人の活動には困らない。培養液のストックも沢山あるのでウチが脳だけになって培養液で生活しても問題は無いが、意味も無く無駄を作るのはあまり好きではないので、内臓が残ってる内は出来る限り胃腸での消化を利用していく。


 と、そんな話をしていたら今夜泊まる宿に到着した。


「疲れたし、汚れたし、ウチ先風呂入ってくるわー」


 チェックインも済まし、部屋に武器や取り外しパーツ等を置いて、ウチは浴場に向かう。


『行ってら』


「エムジも来ていいのよ?」


『お、この両手で背中を全力で洗ってやろうか』


「確実に肉が削げ落ちますやんそれ…」


 二人は完全に機械の体だから風呂はあんま必要無い。軽く水洗いすれば汚れも落ちる。

 あ、風呂行くって言ったけど、流石にあの四脚の見た目は戦闘時のみで、普段は後ろ側の足と前足先端のローラー、右手の武器を外し、元に戻せる様にしている。ついでに目立たない様にアゴも思念魔力で見える様に偽装。アルビと同じ原理だ。四脚の姿だと幅取りすぎて宿入れないしね。まあつまり、普通の人間に近い見た目になる。



   * * *



「ふー」


 風呂につかりながら最近の戦場を思い浮かべる。

 戦況は悪化の一途をたどっている。グーバニアンのテロと戦闘はとどまることを知らず、海岸には絶えず新規の兵が押し寄せている。どれだけの軍人がいるんだ向こうには。

 その上マキナヴィス国民同士でのテロも増加傾向にあり、人口は減少の一途をたどっている。このままでは早ければあと数年で社会のシステムが持たなくなりそうだ。


「何が起きてるんだろうな。マジで」


 依然グーバニアンの動機はわからずじまいだ。むしろ謎ばかり増える。

 グーバスクロに潜入した軍人からの通信では、どうもグーバスクロ内でも、国民同士のテロ活動が行われているらしい。人口が減っているのはこちら側だけではない。潜入部隊に参加したかったが、その時は偵察が主であり、正規軍人のみの少数精鋭で向かったとの事。結局敵国で全員殺されたらしいが。


 グーバスクロの国民も此度の戦争には混乱しており、何故自国がいきなり戦争を仕掛けたのか、そして何故自国内で同じ国民同士で無差別テロを行っているのか、全く分からないのだそうだ。これは戦争開始時に捕虜になったグーバスクロ人も、同じことを言っている。

 最も、彼らは自分たちの国民同士がテロをして殺し合ってる事は知らないが。


 このままでは、世界が終わってしまう。冗談抜きでそう思う。傭兵になったばかりの時は、責めてくるグーバニアンを倒してれば戦争は終わると思っていたと日記にかいてあるが、今はそうは思えない。

 どちらの国も、自国民同志で殺し合いをする。何の為に。何が目的で…。

 仮に攻めてくるグーバニアンを倒しきっても、世界に平和は訪れないのでは。何をしたら、悲しむ人々を減らす事が出来るのだ…。



 考えても今すぐ答えは出ない。ともかくウチ等は目の前のやれることをするしかない。ウチは思考を切り替える目的で、エムジとアルビの事を考える事にした。



「アルビは、この6年で結構成長したよなー」


 記憶は1ヶ月しかないので昔との比較は難しいが、魔力の扱いはうまくなった。

 今は風呂と部屋が直線距離で10m以上離れているが、ウチが植物状態になることは無い。同じ建物内くらいの距離なら思念魔力を飛ばすことが出来るようになっていた。


 顔の立体映像も、意識せずに感情にリンクする様になった。以前は感情が高ぶると思念魔力が消えていたが、今では無意識に顔をコントロールできるらしく、感じたままの表情が出ている。故にアルビ的には恥ずかしいシーンも多々あるみたいだが。


 稼働魔力に関しても以前みたいに戦闘時に自我を消すことは無く、意識があるまま一緒に戦えるくらいまで成長している。リミッター解除は危ないので練習させてないが、一般人よりは魔力は強力になったはずだ。


「エムジは…特に変わらないな」


 なんか知らんがウチとエムジの関係は出会って1ヶ月ほどで完成された感がある。相変わらず奴がウチを弄ってきて、ウチはいじられつつも何かそれを楽しんで、そんな関係だ。友達以上恋人未満。うむ。恋人になりたい。


 つーかエムジは性欲無いのかね? 男性ホルモン入りの培養液使ってるらしいが、一応美少女だと思われる人間が近くにいる訳ですよ? ほぼ毎日股間丸出しで。無いんですかね。心のチ〇コ。


 今はまだついているが、ウチの性器もいつ戦場で無くなるか分からない。その前に色々エロい事しておきたいのだが…。エムジにはヒミツで、あの体に付けられるディルド的なオプションパーツはいくつか購入済だ。いつか奴がウチの誘いに乗ってくれた時に存分に力を発揮するだろう。


「お母さんの件は、心の整理付いたのかね…」


 エムジのお母さんは今から11年前、戦争が始まった際に起きた5か所同時テロで死亡したと、聞いた。

 ドロマイトという地方の街に住んでいた所、一人のグーバニアンが街を強襲。住人を惨殺し、エムジのお母さんも脳を摘出されて使われたらしい。

 エムジはクローゼットの中から、母親の脳が摘出される様を見ていた、と。


(許せる訳、ないよな…)


 ウチだってズンコを殺されている。しかしズンコとエムジのお母さんとでは状況が違う。ズンコは爆破テロに巻き込まれて事故死したみたいな形だが、エムジのお母さんは明確に殺害されている。しかも脳を摘出されて…。

 エムジの目的が復讐だという事は以前聞いた。そりゃそんな光景見てたら、復讐せずにはいられないだろう。

 住人はエムジ以外全員殺害され、脳も何人か回収されたらしい。


(アルビの街と、似た状況だな…)


 時期も同じだ。エムジが語っていた、同時に5か所でテロがあったという話、その一つがウチとアルビが被害にあったソマージュ。そしてエムジが被害にあったドロマイトもその一つだったという訳だ。

 違ったのは軍人のウチが助けに来なかった事。まぁ、ウチはアルビの街を助けに行っても、結局住人はアルビ以外助けられなかったが。



 エムジはこの話を一度してくれたが、それ以降は口に出してない。ウチ等に気を使ってるのか、自分の心にしまっておきたいのか。

 どちらにせよ、エムジの心が楽になるといいなとウチは思う。6年も一緒に活動して、正直もう家族みたいなものだとウチは感じている。勝手に感じてるだけだが。

 エムジの事は好きではある。しかしそれは恋や性欲だけでなく、人として、存在としてエムジが好きだ。幸せになって欲しい。

 復讐が遂げられる可能性は極めて低いだろう。多数のグーバニアンの中から立った一人を探すなんて。もしかしたら既に他の軍人や傭兵に殺されてるかもしれないし。奴らは自分の死を恐れず突っ込んでくるから。


 だから、いつか復讐以外の方法で、エムジの心の穴が埋まると良いなと思う。ウチだって、ズンコがくれた穴や、記憶を失う前に出来たであろう穴はまだ埋まらないが、アルビとエムジと一緒にいて救われた事は沢山ある。



 エムジが見せてくれるズンコの記憶は、少しずつ曖昧なものになってきている。人の記憶なんてそんなものだ。1ヶ月以上覚えられる一般人だって、数年たったら記憶はあいまいになる。親しい人との別れの苦しみも、それと共に少しづつ、回復していくのだ。

 ウチはまだまだ回復しきってないけど、ズンコの記憶がぼんやりしてきたことは、寂しいと感じると共に暖かくも感じる。不思議な感覚だ。


 エムジはウチを支え続けてくれている。だらか逆にウチも、エムジの支えになっていれば良いなと思うんだ。図々しい願いかもしれないけどね。



「しかしエムジの年齢にはビビったなー。まさか出会ったとき10代だったとは…」


 これも衝撃の事実すぎるが、エムジは今23。出会ったときは17だったらしい。あの老け顔で…。時折見せる子供っぽい可愛さはこれが原因なのだろう。


 なお常時機械の体のエムジが何故老け顔か知ってるかというと、たまに思念魔力で肉があった時代の顔を見せてもらってるからだ。ウチがリクエストしても絶対に見せてくれないが、嬉しい事にアルビもちょくちょくリクエストするので、エムジはその時は見せてくれる。アルビ様ありがたやー。


 顔が老けてた理由を本人に聞いたら、軍内で舐められない様にあえて顔を老けさせたとの事だった。エムジのお母さんが殺されたのはそれからさらに5年前。12歳の時だそうだ。軍に入ったのもその直後で、ガキと舐められない様にと。


 12歳で母親を殺されたら、そりゃショッキングだろうな…。しかも凄惨な殺され方…。本当に、エムジには幸せになってもらいたい。


 そしてエムジの年齢だが、恐らく確実にウチより若い。ウチは記憶無いから全く自分の年齢わかんないが、なんとなくこのエムジに会った時に17以下とは思えない。見た目は10代後半くらいだが、皆見た目で年齢はわかんないからな…。


 年上のお姉さんが少年に欲情する。これはすさまじく犯罪のにおいがする。故に興奮する。まあ今は23だし普通に青年だろう。エムジなら何歳だろうと好きだがね? ウチは。

 つーかエムジの実年齢を知っても、なんとなく同い年か年上の様な雰囲気がするのは何故だろうか。奴がSでウチがMだからか。常に会話も行動も主導権を握られている。この支配されてる感はウチ的には興奮するので問題は無い。


「ふう」


 そろそろ風呂から上がろう。ウチは稼働魔力を使いさっと全身の水分を飛ばし、脱衣所に向かう。


挿絵(By みてみん)


 軍用ネットには絶えず救援要請が来ており、明日も近くの戦場に向かう予定だ。本来なら今すぐ駆け付けたいが、傭兵駆け出しのころにそんな事を続けていたらエムジと共に体調を崩し続け、かえって効率が落ちた。寝れるときにはしっかりと寝ておくべきだ。



 ウチはアルビとエムジの待つ部屋へ向かう。これから3P…でも出来れば楽しいが、あいにくそんなことは無い。しかし。



「アルビとエムジがどんな感じなのかは、気になるなー♪」



 アルビは頑なに否定しているが、ウチにはわかる。アルビは確実にエムジが好きだ。エムジと話してる時のモジモジしたアルビ、可愛すぎる。

 エムジが顔を見せてる時も、何か乙女みたいな顔でじっと見つめてるし。



 同じ部屋に男女二人、どんなお話をしているやら。ウチは恋のライバルであるアルビに危機感を覚えるどころか、むしろ応援しつつからかうため、自室に向かうのであった。






■6年間の出来事について


話の展開を早くしたかったので端折りました。というか元々端折る予定でした。

物語の核はエンディングのオチの部分にあるので少しでもそこまで到達を早く。

6年の間には結構な戦闘シーンがありましたがそれらは物語完結後、外伝みたいな形で掲載できたらと考えてます。


海岸での最初の大規模戦闘、航空機や様々な蒸気機関重機を用いた重厚感のある戦場、弱めのグーバニアンが大量に攻めてくる状況での、基地の防衛戦等、描きたい戦闘シーンはあるのですが物語の核には触れないし敵の動機も解らないのでバッサリカットしました。その辺の戦闘は要望があれば完結後に追々。


二章は半分を過ぎ、もう少しで終わります。

読んでくださってる方、ブックマークして下さってる方、評価点を入れて下さってる方、本当に有り難うございます。はげみになります。



マジで完全素人の処女作なので開始前は自信がなかったのですが、現在ではそれらの反応が励みになり、このまま一気に完結まで持って行けそうです。



…ネックは各話に入る挿絵が、意外と制作時間がかかってる事です。今のところまだ話のストックはありますが挿絵が無いのでそれをつくらないと…。

今後はもしかしたら1日だけオヤスミ頂いて挿絵作るフェーズも発生するかもしれませんが、出来る限り短期間での集中連載を目指していきますのでどうか宜しくお願い致します。m(_ _)m




■新シーエ全身

挿絵(By みてみん)

今回の背景も弟のRaptによるものです。こちらは小説「ゼロマキナ」に使ってるものを貸してもらいました。


■新シーエ顔付近アップ

挿絵(By みてみん)


■エムジ全身

挿絵(By みてみん)

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