表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私には居場所が無い。

作者: 宇奈月 凪留
掲載日:2018/07/08

「私には居場所が無い。」


いや、こう言うと語弊があるかもしれない。


「私には居心地の良い居場所が無い。」


幾分、納得のいく文章になった。




私は家庭に問題があるわけでも、

いじめられているわけでもない。


しかしそれは、居場所がある事にはならない。




彼女が欲しいという男は幾らでもいる。

そして私もその一人だ。


私は周りのことを気にしたり、

或いは自分の歳を気にしてそう言っているのではない。


何なら私はまだ二十歳を迎えていないし、

ましてや結婚に焦るような年齢でもない。


しかしながら私は。

どうしようもない孤独感に苛まれている。




別に私は家族と不仲な訳ではないし、

友人が一人もいない訳でもない。


だが。

贅沢を言うなと言われればそれまでだが、

私は現状に多大な不満を抱いている。


例えば、勉強。

例えば、仕事。

例えば、趣味。

更には、休憩。


それらをするときに私は孤独になる。


確かに、マイペースな私には誰かと一緒に何かをするのは向かないだろう。

だが、それとこれとは別問題だ。


一人で淡々と勉強をしていても。

複数人でやった方が楽しいゲームを一人でやっていても。


つまらないことはないが。

心の底から楽しいと、思えないのだ。


もし、隣で一緒にやる人が居たら。

きっとそこには何の不足もない。




味気のない毎日の繰り返し。

じわりじわりと蝕んでくる孤独感に、私は気が狂いそうになる。




そんな理想的な存在が。

居ない訳ではないのだ。


しかし、手は届かない。


私の目に彼女は映っても、

彼女の目に私が目に映ることは永遠に無いのだ。




そんな現実に嫌気がさした私は、気晴らしに小説を書こうとする。

空想の中で、自分だけの世界を構築する。


その世界は、理想郷だ。

私の欲しいものが全て揃っている。


実在するもの、しないもの。

科学的なもの、非科学的なもの。


それら全てが私の作る世界を彩り、輝かせ、豊かにする。


人間味のある登場人物たちや、彼らの住まう街並みが。

彼らの喜び、悲しみ、怒り、恐怖、全ての感情が。


私によって作られ、世界中に満ちて行く。


私の手によって創り上げられた理想郷は。

しかし私の存在を許容しない。


世界を創造した「神」は、立ち入ることはおろか、存在することすら許されない。




空想の世界なのだ。

仕方のないことだと、わかってはいる。


そこで私は、登場人物たちに感情移入をし、少しでも、その理想郷に立ち入ろうとするのだ。


暖かな食卓、苦楽を共にする仲間たち。

そして恋をし、やがて愛し合う……。




ふと正気に戻ると、私は酷い恐怖感、いや、嫌悪感、否、そのどちらともつかぬ不快な感情に襲われる。


彼らの持つものを、私は持っていないと思い知らされる。


彼らは、苦しみ足掻いても、最終的には皆がそれぞれ居場所を持っている。


私がそう描いたのだ。


しかし、肝心の私は。




空想を膨らませ、世界を彩れば彩るほど、私の目に映る私は色を失っていく。


紙面上の、あるいは画面の向こうの世界は、理想郷などではなく。

ただ、現実をモノクロに写すだけの鏡だ。




息苦しい。


自分の描いた夢に、溺れてしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者の方の気持ちがよく伝わる分かりやすい文章でした。 [一言] 不自由のない日々を送っていてもその変化の乏しい、まるで延々と同じことを繰り返しているかのような日々が時に孤独感と不安感を感じ…
2018/07/08 12:25 退会済み
管理
[良い点] >自分の描いた夢に、溺れてしまう。 壮大な夢でいいですね。普通は儚いもんですから。 >現実をモノクロに写すだけの鏡だ。 ベンハムの独楽のように白と黒でも色付くことはあります。 同じ素…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ