第1話
有川シニアの三人の天才達の進路は知っている人なら誰もが気になる事だった。
だが誰かが詮索しようと意味はない。
何故なら彼達自身がまだ進路を決めていなかったからだ。
それもその筈で人はみんな目的をもって将来を決める。
高校選びでも人それぞれだろう。
しかし彼達は野球を続けると言う目的はあるがただそれだけだった。
野球を続けるなら何処の高校でも言い訳だが彼達は違う。
全国制覇を成し遂げ、天才とまで呼ばれた彼達の次の目標は甲子園出場、そしてその先にある甲子園優勝だ。
この目標を達成するには何処の高校でもいいとはならない。
いくら彼達が凄いと言えども野球は九人でするスポーツだ。
出来るだけ甲子園に近い高校を選ばなければいけない。
有川シニアを引退後も練習には参加していた三人は帰りにファミレスに寄り、進路について話し合っていた。
ここで嵐士が一つの提案を出した。
「てかさぁ俺達別々の高校行くの?一緒にやろうぜ!」
彼達は有川シニアではチームメイトだったが中学校はみんな別々だった。
陵謙と晃樹は嵐士の提案を受けることにした。
「んで一応陵謙と嵐士と俺で同じ所に行くのは決まったが何処にする?」
「お前らで決めて、俺はマウンドに立てればそれでいい」
そんな時、何処かの高校の野球部が話しを始めた。
「やっぱ稜陽は強いわ、流石あの大阪で王者って言われるだけあるわ」
よく見ると彼達の持つエナメルバッグには"海江高校"と書かれていた。
和歌山県の海江高校は甲子園常連校で7年前には和歌山大会で6連覇を達成した強豪校。
今年の夏の甲子園にも出場しておりベスト8まで進出した。
その話しを聞いた彼達、そしてすぐに嵐士が携帯を取り出す。
「やば!秋季の近畿大会で稜陽が海江に圧勝してる!」
先程から名前が出る"稜陽高校"は大阪府の王者と呼ばれる強豪校。
ここ最近は毎年のように甲子園に出場していて今年も春のセンバツがベスト8、夏の甲子園が準優勝と結果を出している。
「稜陽はやっぱやばいな!どうせなら稜陽倒して甲子園行きたいな!」
嵐士の一言に陵謙と晃樹が反応した。
「それは…面白そうだな」
「完璧に抑える」
彼達の目的は決まった。
三人一緒の高校に行き、大阪府の王者と言われる稜陽高校に勝って甲子園に行く事に決まった…が。
「その前に親に相談だな!」
陵謙と晃樹もそうだなと言い、今日は解散した。
あとは何処の高校に行くか。
三人の天才が同じ目的に向かって走り出した。