おひとりさま
私には恋人がいる。
「みてみて、このリップ新しい色だ」
とても女子力が高い。
パンケーキを食べに行ったら必ず写真を撮ってインスタにあげる。どこかしらで可愛い流行のスイーツがあれば行こうと誘う。
それにやけに化粧品について詳しい。いつもは、もっぱら100均やちふれの化粧品を使っている。だから、canmakeなんて私はつい最近まで知らなかったのだ。
香水も私より詳しい。
どうしてそんなにも女子力が高いのか気になるところだ。
「ほら、気を付けなよ」
女子らしい所があると思えば男らしい所もあった。
よくわからない連中に絡まれそうだと手を引いて助けてくれる。ミニスカを履いて電車に乗ろうとするものなら毎回怒られた。
女子と男子が混ざりあってそれはそれで良いところがある。
「だけど最近よくわからない」
「なんでそれを私に言うの?」
梨那が首を傾げる。
「だってさ」
上の2つに不満はないよ。別に。
「だけど、だけどね」
ここが大学のカフェテラスということを忘れて梨那に語り尽くした。
「この人誰?」
Twitterでたまたま長話していた人について浮気なのかそうなのか長々と聞かれる。
始めの内は心配してるんだ、とか思えたけれど流石にこう多いとめんどくさくなる。
それに信頼されていないようで悲しい。
「仲良いんだ」
それなりに交流がある舞台役者さんとやり取りしていたら刺のある言葉を言われた。
そもそも、その役者さんは彼氏と付き合う前から舞台を見て知り合った人だしあちらももう良い歳してて熱狂的なファンもいる。
私はどちらかと言うと普通のファンだから物凄く親密なやり取りはしてない。
「あっ、おねーちゃん?」
シスコン。
私と出掛けているのにどうして君は電話しているのでしょうか。あと、私が少しだけ弟びいきになったときあれほど切れたのに君がシスコンで私が切れても改善しないのはどうしてかな。
おねーちゃん、おねーちゃんずっと言ってますよね。いい加減にしてくれませんかね。
「シスコンは困ったものね」
梨那が呆れた顔をする。
「でしょ?」
それにテストが近くてもデートとか行こうって言い出すし。困るのよそれも…
あと、話の間も変だし。そこでこんな返事するのって思う。
この前、カラオケに行ったときなんかすぐ飽きちゃうし。
「正直いって楽しいって思えない」
すごくつまらない。
「別れたら?」
「それができたら苦労しない…」
でも、正直別れようか迷ってる。
「私がワガママなのかな?」
でもね、別にいつも楽しそうにしろなんて思ってないよ。ただ、楽しくおしゃべりとかしたいのになんでできないの?って思うの。
皆こんなんなの?
「いったいなに?」
「性格の不一致」
梨那がティーカップをことりっと置く。
「一回距離を置いてみたら?」
何か見えるかもよ?
「久々に一人ででかける」
いつも彼氏がいた。友達とはまあまあ行ったかな。でも、一人は久々。
昔は色んな所に出掛けてたけど付き合いはじめてから制限がかかったし。
一人もそれはそれで楽しい。
「久しぶりだね」
「神楽さんお久しぶりです」
久々に舞台を見ることが出来た。神楽さんは単純に舞台俳優さんとして好きな人だ。
「相変わらず囲まれてますね」
フフッと笑う。
熱狂的なファンも多いから神楽さんの周りは人が多い。
「あっ、ちょうどよかった」
「先生?」
テストで赤点とったかな?
今回はまあまあま出来たと思うんだけど…
「今回、すごくよかったわ!」
「そうなんですか!」
それは良かった。今回は家に籠って必死に頑張ってきたかいがあった。
何か、最近色々と楽しい。気にすることが消えたからかな?
「梨那、ありがとう」
大学のカフェテラスで梨那にお礼を言う。
「お役に立って良かった」
でも、どうして梨那はこういうアドバイスをしたのだろうか?
「昔、私も同じことがあって」
「そうだったんだ」
まぁ、それは違うときに聞くとして。
私は梨那と別れたあとLINEを送っていた。
既読の文字を見ると私はスマホの電源を落とした。