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ミステリー

 憎ければ殺してしまえば良い、いつからだろうそんな言葉が聞こえてきたのは。


 あの日、私は台所で洗い物をしていた。


─憎ければ殺してしまえば良い─


 テレビでもついていたのかと思った。現にソファーでは、旦那がテレビドラマを見ていた。


 ドラマの台詞か何か。その時はたいして気にも止めずに洗い物を続けた。


─憎ければ殺してしまえば良い─


 次に聞こえたのは、服屋の前だった。


 ここには何もない。テレビではない。誰かが私に言っているのだ。


 別に憎い相手も殺したい相手もいない。なら、なぜ私に語りかけるのだろうか。


「南?」


「あら、あなた」


 仕事帰りの旦那に出会った。


「今日は早いのね」


「うん、珍しく早く終わってね」


 旦那は出張やら残業やらで忙しい部署に所属していて日ごろはこんなに早く帰ってこない。


「今日は良い日ね」


「そうだね」


 幻聴には気にも止めずに過ごしていた。


─憎ければ殺してしまえば良い─


 3度目にこの声を聞いたとき私は見に覚えのない口紅を発見したときだった。


 なぜ、家のポストに入っているのだろう?包みも無いことから通販とかではない。そして、わたしは使わないメーカーだ。


 嫌がらせ?


 それとも?なに?


 気味が悪かったので口紅をそくさにゴミ箱に投げ込んでしまった。



 そして、3回目から毎日わたしは訳のわからない幻聴に悩まされていた。


 肉体面でも精神面でもわたしは何ら問題がなかった。だから余計に悩むのだ、


 ピンポーンと玄関のチャイムがなった。


──憎ければ殺してしまえば良い─


 まただ、せっかくの来客なのに。


 ガチャリと扉を開けた。


「あら、東山さん」


 旦那の部下の東山香織ちゃんだ。


「あの人何か忘れていった?」


「あっ、いやお話があって」


 何の用だろう?とりあえず家にあげた。


「どうかしたの?」


 すると彼女は鞄から何かを取り出した。


「部長と離婚してください」


 彼女は刃物を突きつけて静かに言ったのだ。


「浮気相手だったのね」


 まぁ、出張やら残業やらあるから少し気にしていたけれどまさか部下と浮気してるとはね。


 刃物を突きつけられているのに私は妙に冷静だった。殺される恐怖など存在しなかった。


「別れてください!」


 物凄い形相で彼女が言う。


「ねぇ、white lilyの口紅ってもってる?」


 唐突に言ったためか彼女は刃物を落とした。そして、彼女の腕を掴む。


「ないわよね」


 だって、彼女の好きなブランドって言うわけではない。それに今してる口紅だって発色からすると別ブランドだ。


 首を縦に振る彼女にもう1つ質問した。


「憎ければ殺してしまえば良い」


 聞いたことある?と聞く


「その言葉が、頭から…」


 これで彼女も幻聴を患っていることがわかる。


「旦那とは別れるわ」


「えっ?」


 あの人とは別れる。だって、浮気しているのは彼女だけではないのだから。


「家捜しするわ」


 手伝ってくれれば警察には通報しない。そう言いくるめ旦那の部屋にはいった。


 手始めに引き出しから。それにパソコンの購入履歴に閲覧歴。ベッドの所も隅々と見ていく。


「Mary Charlotteの香水貰った?」


 私はないね。彼女も否定する。これは、違う女にあげたやつだ。


 それからホテルの予約。私でも彼女でもない。なのにツイン。これも浮気確定だね。


 それから探すとわんさか証拠が出てきた。


「この人わかるかしら?」


「取引先の三笠さんですね」


 この人と浮気していたのか。


「今日、会うことできる?」


「予定はないですけど」


 行こうと思えば無理はないです。と彼女が答える。


「遠くから見える?」


「はい」


 そうして取引先の会社に行くことにした。


 遠くから例の女を見ると大当たりだった。white lilyの口紅に Mary Charlotteの香水の匂いが微かにする。


「私、部長と別れます」


「その方が賢明よ」


 彼女はあまりにも展開が早かったためか少しうんざりしていた。


「ご迷惑おかけしました」


「まぁ、驚きはしたけど大丈夫よ」


 そうじゃなかったらずっと気づかなかったしね。


 それに幻聴の犯人もわかった。


「明日には幻聴も解決させましょう」


 そのために明日のアポを取ってきたのだから。


「それにしても化粧品に詳しいですね」


「昔、そう言う企業にいたからね」


 今はやめちゃったけど昔は化粧品のセールスをやっていたこともある。


 だから、幻聴の犯人を突き止められたのだけれど。



「三笠啓子さんですね?」


 昔馴染みの弁護士と香織ちゃんの同席のもと旦那抜きで話し合いが行われた。


 幻聴、というかあれはホントに小さなレコーダーをいれていた訳なのだが。まぁ、奇妙な嫌がらせだったね。


 接近禁止とかで手が打てて良かった


 私は、これから最終決戦なのだが。香織ちゃんは、もう別れたらしいけど。


 おや、扉が空いたようだ。


「お帰りなさい」


 私は判子と緑の紙を手にし迎え入れた。

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