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第45層 デジャブ感じてる


「『さみだれ突き』っと」

「ピギィィィ!」


シルフのレイピアの剣先が5つに分裂した様に見えた瞬間。シルフの前を飛んでいたクラゲっぽいスライムの体に5つの穴が開いて地面にべちゃっと落ちた。

核が売れるから取り出さなきゃいけないんだが・・・触りたくないなぁ・・・

いや、ウサギとかを解体するのに比べれば全然マシなんだけどね。スライムはドロップの大きさの割に売値が高いからお得だし。触りたくないけど。


「シルフお疲れ~。水飲む?」

「きゅぃ~」


「ありがと~。んっ、ぷはっ。このダンジョンの一階はスライムばっかりみたいだね~」

「だな。スライムばっかりのダンジョンなのか、魔法生物系のダンジョンなのかはまだ分かんないけどね」


ダンジョンに入ってからそれなりに経つけど今まで出てきたのはスライム系の敵だけだ。さっきシルフが倒した水属性のクラゲっぽいやつ以外にも、衝撃を加えると火を噴く火属性のやつや、地面と完全に同化している土属性のやつとかいた。


戦力的には俺一人でも杖で殴り殺せる程度の相手なんだが、薄暗い洞窟の中で地面と完全に同化していた土属性のスライムはヤバかった。俺とシルフだけじゃ気づけなかったかもしれない。


「最初はどうなるかと思ったけど、ウサちゃんすっごく有能だよね!借りて大正解だったよ!」

「町で宣伝する代わりにタダで貸して貰えたしな。さっすが心友は心が広い!」

「きゅい!」


お友達価格で貸して貰ったウサギちゃんなんだが、心友が言っていた通りにその索敵能力には目を見張るものがある。

視界の外にいるスライムを見逃すことなく警告してくれるし、音の反響で分かるのか落とし穴や隠し通路なんかもバッチリ教えてくれる。

贅沢を言うなら言葉で伝えてくれるとありがたいんだけど、それはかなり贅沢過ぎるよな。


「きゅい?きゅい!きゅい!」


「ん?敵?」

「ウサギちゃんどっちにいるか分かる?」

「きゅい!」


俺が抱っこしているウサギちゃんがうさ耳をウサウサと動かして鳴き声を上げている。今までのパターン的に近くに敵が居るんだろう。

まぁ、近くとは言っても有視界外だとは思うけどね。ウサギちゃんの索敵のおかげで戦闘効率も爆上がりで時間単位の儲けも一気に上がったんだよな。もうウサギちゃん無しの生活には戻れないかも・・・

心友の為にもキッチリ広告してこれからもご贔屓にしてもらおうっと。


「う~ん近くに気配はするんだけど・・・お姉ちゃん、しっ!静かにしてて」

「・・・いや、特に喋ってはいないんだが・・・」


曲がり角の先をそっと覗いているシルフに叱られてしまった・・・まさか思考がうるさいとでも!?

勝手に心を読んで文句言われてもなぁ。人は考える生き物なんだぞ。


「お、お姉ちゃん。アレ。あのスライムどう思う・・・?」

「んん?どれどれ・・・」


シルフがなんとも言えない微妙な顔で口の端をピクピクさせつつ振り替えるので俺もそっと通路の角から顔を出してスライムの姿を見てみた。


「ぴぎゅい。ぴぎゅいっ」


「あら、可愛い」


通路の先には透き通る白い体をぷるぷると揺らしながらぴょんぴょんと踊るように跳ねる一匹のスライムがいた。

ゼリーの様にぷるんぷるんと揺れる綺麗なお椀型の体は色合いもあってモンスターなのに美味しそうだ。


・・・ん?白いスライムで・・・美味しそう・・・なにか引っ掛かるような・・・


「ぴぎゅちっ!」


頭の中に叩き込んだモンスター図鑑をめくって白いスライムの正体を思い出そうとする俺の下へ、可愛らしいくしゃみの様な鳴き声と共にふんわりと甘い香りが漂ってきた。


「・・・シュガースライム・・・?」


シュガースライムとはスライムの突然変異種の一種だと言われているスライムだ。

戦闘能力が極めて低く、生存能力も低いため、絶対数が極端に少なく人に見つかることは殆ど無い。

他のスライムと大きく違う特徴としてゼリー状の膜の内側に大量の糖分を含んだ水を蓄えており、上手く取り出して沸騰させれば同じ重さの金よりも価値があると言う白砂糖にも負けないスライムシュガーが取り出せるらしい。


・・・まぁ、本物ならばの話だが・・・


「絶対本物だよお姉ちゃん!だってトウカちゃん達の作ったクッキー今まで食べたことがない程甘くて美味しかったもん!きっとシュガースライムの砂糖を使ってるんだよ!」

「金よりも価値のある砂糖をおやつに使った上に初めて会った人にあげるとは思えないけど・・・試してみるだけの価値はあるよな」


「うん!」


輝く笑顔で同意された。


・・・俺は仮に砂糖が取れたら全部売る気なんだが・・・ちゃんと分かってるよね?甘いお菓子に思いをはせてほわほわしてるけど砂糖を売ったお金で買えばいくらでも買えるからね?売り物を舐めないでね?


「よし、そうと決まれば作戦会議だよ!下手に攻撃して傷を付けたら大変だから、挟み撃ちにして優しく捕獲しよう!」

「だな。となれば、一緒に角から飛び出してシルフが先行してシュガースライムの向こう側へ行って貰って、後ろは俺が抑えようか」


「りよーかい!それじゃあタイミングを合わせて行くよ!」

「おう。先頭は任せた」


「任された!」

「きゅい?きゅい!きゅい!」


シルフがわざとらしいほどグッと足に力を込めるのを見て俺も通路の角から飛び出してシュガースライムへと駆けだした。

あっという間に俺を追い抜いたシルフが一陣の風となって駆けていく。

相変わらずシルフは速いな。まったくもって頼もしい妹だよ。


「ぴっ、ぴぎぃ!?」

「きゅい!きゅいい!!」


そしていつの間にか俺の胸元からシルフの肩の上に移動したウサギちゃんがきゅいきゅいと歓声をあげている。

ウサギちゃんはシルフのことを楽しい乗り物とでも思ってるんじゃ無いだろうな・・・


・・・うん?歓声・・・だよな?なんかそれにしてはウサギちゃんが必死な気も・・・



カチッ



その音が聞こえたのは幻聴だったのかもしれない。

だってその瞬間の俺にそんな余裕があったとはとても思えないから。


だが確実に言える事もある。目を見開いた俺の目の前で自分の足の下へと顔を向けてサーっと血の気が引く音が聞こえるほど急速に顔色を青くさせたシルフが必死に俺へと視線を向けて瞳で語るのだ。


「デジャブやわ~。この展開めっちゃデジャブやわ~」と。


いや、知らねーよ!このタイミングでシルフの感じたデジャブを伝えられたところでどうしようも無いから!


パカッ


「お、おねぇちゃぁぁぁ~いたっ!」

「きゅぃぃ!」


遺言がそれでいいのかと言う言葉を言い残して?思い残して?シルフが地面の下に消えていったが思ったよりも底が浅いらしく、俺ならともかくシルフなら重症を負うことは無いだろう。

そして即死じゃないなら俺の魔法でも、シルフが持ってるポーションでも回復できる。後は俺が上からロープを垂らせば問題ないな。こんなこともあろうかとロープは常備してあるのだ!


・・・まぁ、その脱出計画は俺が上に残っていたらの話なんだけどな。


「うわぁぁぁぁ!ぷぎゃ!」

「がふっ!お、お姉ちゃん!?ごほっ!」


運動神経マイナスの俺がね。突然目の前に空いた落とし穴を避けられる訳がないよね。むしろ避けるべきか止まるべきか考えている間に落ちてたよね。


にしても頭から真っ逆さまに落ちたのに殆ど痛くないな。シルフが上手いことキャッチしてくれたのかな?


もにゅん。


「あっ、んんぅ。ちょ、ちょっとお姉ちゃん!そっそこ、揉んじゃだめぇ・・・」

「・・・」


とりあえず状況を整理しようと顔に押し当てられてるシルフの柔らかな肌を退かそうとしたら思ったよりも柔らかな感触と甘い声が帰ってきて一瞬殺意が沸いた。


くっ、だが俺の頭がザクロの様に破裂しなかったのはシルフの巨大スライムのおかげ・・・!

いくらにっくき成長の象徴だとしても命を助けられた相手に嫉妬をぶつけるほど俺は子供ではない!そう!俺は大人の対応が出来る大人なのだ!


「・・・ありがとうございました」

「何が!?えっ!?ちょっと待って!お姉ちゃんナニに対しての感謝なの!?えぇっ!?」


・・・俺は大人の対応として命を救ってくれたシルフのダブルスライムに向けて感謝を伝えただけなのに、両手で胸を庇って落し穴の壁まで後退られるのは誠に遺憾である。


シルフには俺の事をどう思っているのか少しお話が必要みたいだな・・・


もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想の方へお願いします。


あれ・・・名前・・・

なんかもう逆にいいかなって気もしてきた。町の様子を知りたい時ぐらいにしか出てこないだろうし、名前不詳でもいっかなって・・・


そして今回はSSがあります。最近燈火達を書いてなかったからね。仕方ないね。


~~燈火のお料理教室~~


燈火「ふんふふ~ん♪」

ボーパル「なの?燈火お料理してるの?」

燈火「そうだよ~。今日のお昼ご飯はオムライスだよ。楽しみにしててね~」

ボーパル「オムライス!あたちオムライス大好きなの!」

燈火「ふふっ。じゅんにぃもクロちゃんもオムライス大好きだよね。まったく、じゅんにぃはいつまで経っても子供なんだから~。でもそんなところも可愛いんだけどね!」

ボーパル「・・・」(ジ~)

燈火「ん?ボーパルちゃんどうしたの?」

ボーパル「・・・お料理してる燈火楽しそうなの。あたちもやってみたいの」

燈火「そう?じゃあお手伝いお願いしようかな?」

ボーパル「でも、あたちは燈火みたいにお料理上手じゃないの・・・きっとおいしいご飯は作れないの・・・」

燈火「だーいじょーぶ!誰だって最初は初心者なんだから!それにじゅんにぃなら(幼女の)愛情が入った料理なら残さず食べてくれるからね!」

ボーパル「?お料理に愛情を入れるには何を入れればいいの?」

燈火「ふふっ。何を入れればいいと思う?」

ボーパル「・・・血?」

燈火「あ~おしい。じゅんにぃは(幼女の)血の匂いを嗅ぎ分けられるからね異物を混入しても直ぐにバレるんだよ。それでも食べてくれるけどね!」

ボーパル「むむぅ・・・じゃあ何を入れればいいの?」

燈火「別に物を入れる必要は無いんだよ?大切なのは心だからね。自分が作った物を食べてくれる人の事を考えながら作れば、食べてくれる相手が大事なほど美味しくなるんだよ」

ボーパル「ん~、分かったの!それならあたちもおいしいお料理が作れるの!だってあたちはジュンもクロもトウカも大大だ~い好きなの!!」

燈火「え?あれ?私も?」

ボーパル「当たり前なの!いつもあたちに美味しいご飯を作ってくれるトウカも大大大好きな家族なの!」

燈火「ふ、ふふ。さすがボーパルちゃんだね。でも・・・負けないからね」

ボーパル「?燈火何か言ったの?」

燈火「ううん。何でもないよ。それじゃあ早速料理しようか!」

ボーパル「なの!頑張るの!」


~~数分後~~


燈火「包丁を使うときは猫の手でね~」

ボーパル「猫なの?にゃ~?」

燈火「あぁもぅ、ボーパルちゃんは可愛いなぁ!」


~~さらに数分後~~


ボーパル「一緒にお庭で摘んできた美味しい草を入れるの!」

燈火「ちょっと待ってボーパルちゃん!今炒めてる最中のチキンライスに混入した緑の物体は何!?いや、聞いてたけど!分かってるけども!」


~~さらにさらに数分後~~


燈火「な、なんとか形になってしまったよ・・・」

ボーパル「むぅ・・・あたちも卵をくるってしたかったの・・・」

燈火「い、いや、これは結構難しいからまた今度ね?ね?」

ボーパル「最後にケチャップをかけるの!」

燈火「う、うん。落ち着いてね?ゆっくりだからね?」

ボーパル「ぶちゅぅ~・・・あれ?無くなっちゃったの・・・」

燈火「あ、あぁ・・・」


~~完成~~


ジュン「燈火さん?どうしてこうなったのでしょうか・・・?」

燈火「えっと・・・うん。愛情は入ってるから大丈夫」

ボーパル「頑張って作ったの!食べて食べてなの~!」

ジュン「・・・いただきます・・・」

燈火「じゅんにぃ・・・頑張って!」

ボーパル「どきどき。わくわく」

ジュン「・・・口に入れた瞬間溢れんばかりのケチャップの味に口内が凌辱されてふんわりしている卵の触感を楽しむ余裕も無く、噛めば噛むほど苦みと雑味のハーモニーが全てを蹂躙していく・・・」

ボーパル「?つまり?美味しいの?」

ジュン「もうちょっと頑張りましょう。愛があればいいてもんじゃないよ?」

燈火「精進します・・・」

ボーパル「ジュンの為に頑張って作ったの・・・美味しくなかった・・・の・・・?」

ジュン「食べるよ!食べるけども!くぅ・・・燈火頼んだ。俺には無理だ・・・」

燈火「はーい。後でまた練習しようね?」

ボーパル「なの!いっぱい作ってジュンに食べて貰うの!」

ジュン「うぅ・・すごい複雑な気分・・・」


ボーパル特性オムライス(危険を予知して逃げたクロの分含め2人前)は、この後スタッフ(ジュン)が美味しくいただきました。


というわけでジュンが居なければそれなりにマトモな燈火と、天然ちゃんなボーパルのお話でした。

言われたことを素直に信じるボーパルは可愛いなぁ(白目)大丈夫。某ダークマターに比べれば食べれるだけマシだから。


次回はクロと絡もうかなぁ・・・本編で全く出番が無いからなぁ。ノコちゃんとセリフ量で争えるレベルで喋ってないからね。偶には出番を作らないとね。

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