第22層 天使ちゃん
燈火が出てくると尺が伸びる・・・
もう諦めました。好きなだけ喋れ!
あ、あと今回新しい幼女がでます。
「おお、でっかい壁だぁ。巨人でも進撃してくるのかな?」
「はいはい。いつまでも壁見てないで中入るぞ。こんちわー。町に入りたいんですけどー」
「きゅーいー」
持ち歌が尽きたのか、さっきまで「歩こう歩こう。私は元気~♪」と歌いながら全力疾走で市壁へ駆け出していた燈火の手を掴んで門へ近づくと、見覚えのある兵士のおっさんがいた。
おっさんは訝しげな顔で俺を見て、燈火を見て。燈火の頭の上のサクラを見て。満面の笑みで俺を見た。
「おう、この前のにいちゃんか!久しぶりだな!」
「お、おう。まぁ、久しぶり・・・なのか?」
まだ会うのは2回目だと思うんだが。
あれか?1度話したら友達的な?ボーパルの仲間かな?
ちょんちょん
と、俺が対応に困っていると横から裾を引っ張られた。
横を見ると、燈火がちょいちょいと手招きしているので耳を貸してやる。
「・・・じゅんにぃのお知り合いの人?」
「あ~、まぁ。知り合い・・・になるのかな。前来た時に俺に対応してくれた人なんだよ」
「きゅいきゅい」
家族愛に溢れるいい人だったよな。溢れるどころかこぼれまくって大洪水状態だったけど。
「おや?そこの可愛らしいお嬢さんはにいちゃんの妹さんか?にいちゃんと違って別嬪さんじゃねーか!ま、うちの天使には劣るがな!!あっはっはー!」
へいへい。フツメンで悪かったですね~。その手の揶揄は前世で聞き飽きましたよ~。
「・・・はじめまして。久遠時 燈火と言います。じゅんにぃの妻「では無く友達」です」
バカな事を言うであろう事は予想の範囲内だったので、セリフを被せてやった。よりにもよって兵士の人にその冗談を言う奴があるか。しかも目の前の人は「ロリコン死すべし慈悲は無い」とか普通に言い出しそうな人だし。
「むぅ。酷いよじゅんにぃ!折角私が外堀から埋めていこうと考えてたのに!」
「酷いのはお前の思考回路の方だわ。あ、こいつは単なる友達なんで」
俺がそういうと、おっさんは大変そうだなって感じの目を向けてくれた。分かってくれますか、俺の苦労が。
「単なる友達じゃないよ!未来のお嫁さんだよ!」
「あ、こいつは単なる知り合いなんで」
「友達より下がってない!?私達は永遠の愛を誓った仲じゃない!」
「やっぱり単なる顔見知りです」
「更に下がった!酷い!この世に生を受けた瞬間から愛し合う夫婦なのに!」
「本当は赤の他人でした」
「なんで私との関係がそんなに下がっていくの!?赤の他人相手に愛してるって言うとか、私がイタイ子みたいじゃない!」
「いや、燈火の方が上げてくるから俺が下げてバランスを取ろうかと思って。というか、燈火は普段からイタイ子だぞ?」
兵士のおっさん、ぽかーんである。そりゃ、突然目の前でこんなコントをやられりゃ脳の処理も追いつかんわな。
「・・・まぁ・・・その・・・なんだ?にいちゃんも大変だな。うん。俺もちょっと家族の話は控えようかな・・・」
兵士のおっさんが燈火を見て若干引きながらそう言った瞬間。おっさんの後ろで働いていた他の兵士の人全員から、「お嬢ちゃんよくやった!」って感じのサムズアップを貰ってしまった。
そして、燈火もキランと歯を輝かせて背後のおっさん達に親指を立てて返してる。
おい。お前はなんで褒められてるか分かってないだろ。適当に返事するんじゃありません。
「んで、俺達は町に入りたいんですけど。前回は銀貨3枚だったし、今回は6枚でいいですか?」
「あぁ・・・いや。お嬢ちゃんはまだ子供だし、2人で銀貨5枚でいいぞ。ほれ、従魔のタグだ」
おっさんは俺が差し出した6枚の銀貨の内1枚と、前回ももらったタグを差し出してくれた。
「ん。ありがとうございます」
「おじさんありがとー!式にはきっと呼ぶからね!」
なんの式に呼ぶつもりなんですかねぇ。
まったく。隙あらばこいつは・・・
・・・まさか、町に行きたいって言い出したのも外堀を埋めるためとかじゃないよな?な?
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
「ん?」
「はぇ?」
「きゅぃ?」
俺達はおっさんに礼を告げると、さっそく町へ入ろうとしたんだが、その前におっさんに呼び止められてしまった。
「実は君達に1つお願いがあるんだが・・・」
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「ぱぱ~おかり~!」
「ただいま~。ぱぱですよ~。でへへ~」
玄関でデレデレと愛娘とじゃれてるおっさんを玄関の外から見つめる。
いや、だっておっさんが邪魔で入れないんだもん。せめてもうちょっと退いてくれたら入れるけど、家主をおいて家に入るのもな。
「あら、あなた。おかえりなさい。今日は早かったのね・・・あら?お客さんかしら?」
玄関でしゃがみこんで一歩も動く気配のおっさんを燈火と2人で苦笑いを浮かべながら眺めていると、家の置くからもう一人の女性が現れた。
金糸の様な細く長い髪の、碧眼の女性だな。おっさんは女神だなんだ言ってたが、確かにどこかの絵画から抜け出してきたような美女だ。とても子供がいる母親には見えないほど若い奥さんだな。だからどうという事はないが。
「・・・じゅんにぃ。私はじゅんにぃに安心するべきなのか、心配するべきなのかすごい迷ってるよ。どうすればいいと思う?」
「・・・笑えばいいと思うよ?」
「きゅい!」
そこで、おっさんを構ってあげていた娘さんも俺達の存在に気づいたようで、こちらを見た瞬間目を輝かせた。
「うしゃぎしゃん!」
「きゅい?」
「そうだよ~。うさぎさんだよ~。パパが連れてくるって言ってただろ~。ちゃんと連れてきたぞ~」
兵士のおっさんが、サクラを見て目を輝かせている娘さんに大人の威厳も何もあったもんじゃない声音でそう言った。
そう。俺達はおっさんの「父親としての尊厳がかかっているんだ!どうか、娘にそのウサギを見せてやってくれ!頼む!」と、普通に人が通る門の前で門番に土下座されるというドン引きレベルのお願いをされて、おっさんの家へやってきたのだ。
サボらずに仕事しろよと言いたい所だが、同僚の兵士達が「娘さんが待ってるならしょうがない」って感じで全員OKしてくれたので、今に至る。やさしい職場。
「うん!ぱぱだいしゅき!」
「ガハッ!」ドサッ
あ、娘さんの笑顔+大好き攻撃を喰らったおっさんが血を吐いて倒れた。死因はキュン死だな。間違いない。
「うしゃぎしゃ~ん!」
「ふみゅ、ぎゅふ!」
そして倒れたおっさんの上を、サクラしか目に入ってないような娘さんが踏んづけて歩いてくる。
止めるべきなのかも知れないが、おっさんは幸せそうな顔してるし、お母さんは「あらあら、まあまあ」って感じで微笑んでいるから放置でいいか。
「うしゃぎしゃん!」
おっさんを踏み越え、サクラの乗っている燈火の前まできた娘さんは、お母さんの遺伝子を色濃く受け継げたみたいで、輝くような金色の髪に、エメラルドの様な綺麗な碧の瞳を本物の宝石の様にキラキラと輝かせて、上目遣いでサクラを見つめてる。
なんだ。ただの天使か。
「じゅんにぃ・・・?信じてるからね・・・?」
「いや~、流石に守備範囲外ですね」
だからハイライトの消えた瞳で俺を見上げるのはヤメテクダサイ。怖いです。
いや、まぁ。確かにかわいいけど、幼女ってか幼児だし。流石に幼すぎだよな。
・・・いや、待てよ?光源氏方式で自分好みの幼女に育てるというのも・・・いや、それだとボーパルが2人になるだけだな。止めとこう。やっぱり幼女は両親の元で元気に育つのが一番だな。うん。
「きゅい~?」
自分が天使ちゃんに求められていることに気づいたのだろう。サクラは燈火の頭の上から肩へと降りてきて、そこからぴょんと地面に降り立つと、天使ちゃんを見つめた。
「うしゃぎしゃん!」
「きゅい!」
「ガハッ!」
自分の手の届く範囲にサクラが降りてきたのに気づいた天使ちゃんはとてとてとサクラに近づくと、そのまま飛びつくようにぎゅぅ~っと抱きついた。
その顔は満面の笑みで今が幸せの絶好調にある事がよく分かる。
かわいい天使に、かわいいウサギとかわいい笑顔が合わさって、最強に見える。あと、おっさんの吐血量が増えた。やめて!おっさんの体内はもうボロボロよ!
というか、どういう原理で血が出てるんだろう。内臓に穴でも開いてるのかな。
「きゅい・・・」
天使ちゃんに力いっぱい抱きしめられてるサクラは、ちょっと鬱陶しそうな顔してるけどしばらく我慢してやってな~。
「うしゃぎしゃん!まま!うしゃぎしゃん!」
「そうね。よかったわね」
「うん!!」
幸せオーラを撒き散らしている天使ちゃんの前では、流石の燈火もセクハラ発言は憚られるらしく、黙ってにこにこと天使ちゃんを見つめている。
燈火のセクハラを完封するだなんて、さすが本物の幼女は幼女力の桁が違うぜ。ぅゎょぅじょっょぃ。
「今日はうちの子の為に来ていただいたのですよね?ありがとうございます。いつまでもこんな所で立ち話をしているのもなんですから。どうぞ中にお入りください」
「うしゃぎしゃんも!」
「きゅい~」
俺達の近くまでやってきたお母さんが、サクラを抱きしめている天使ちゃんごと、抱き上げると、家の中へと案内してくれた。
・・・当然玄関で伸びているおっさんを踏んづけて歩いていったわけだが、突っ込んだら負けなんだろうか。負けなんだろうなぁ。
もふもふ!
誤字脱字ありましたら感想の方へお願いします。
ガチ幼女キタコレ。流石の燈火さんも自重するレベルの幼女力の持ち主です。やったね。
実は次の話はもう出来てます。投稿する気力と、後書きに書くネタを思いついたら今日中に投稿します。
あ、その前に感想返しもしないと・・・いつも感想ありがとうね!




