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第9層 VSおっさん

殆ど書き終わっていたのに投稿が遅れたのは酔っぱらい卓を発見したせいです。

オロロロロロロロ・・・

 

「どうしてこうなった・・・」

「きゅい!」


俺達は今、冒険者ギルドの奥にある訓練場でおっさんと対峙している。

俺が構えているのはもともと俺が持っていた鉄剣。おっさんが構えているのは刃引きをしてある訓練用の模擬剣だ。

なんでもおっさんは、俺の剣には一太刀も当たらないから、これから自分が使う剣の感触に慣れておけとの事だ。いや、この剣は飾りで、これからも剣を使う予定は無いんですがそれは・・・


「おらどうした!いつまでもびびってないでかかって来い!びびって腰が引ければ剣は鈍くなる!本番でびびって死にたくなかたら勇気を振り絞ってかかってこんかい!!」


おっさん熱血だなぁ・・・

うすうす感じてたけど、このおっさんも悪い人では無いんだよなぁ・・・人の話を聞かないけど。

本音を言えば今すぐ踵をかえして帰りたいんだが・・・


「ふんすっ!ふんすっ!きゅい!」


サクラがやる気なんだよなぁ・・・


「そうだなぁ。ダンジョン探索なんて依頼があるぐらいだし、冒険者の強さを確かめておくのもいいか。んじゃ、サクラ。今出来る全力で相手をしてもらおうか!!」

「きゅい!」


1つ息を吐いて剣を構えなおす。といっても俺のは見せかけだけだが。


「ふんっ!やっとやる気になりやがったか。先手を譲ってやってるんだから早く・・・おい。なんだそれは」


俺達の準備が整うのを発破をかけながら待っていたおっさんの視線が俺を通り越して背後へと向かう。同時に訓練場で野次馬をしていた冒険者達からもどよめきがおこった。

背後を見なくても分る。何度も聞いたこのサワサワという葉が擦れあう音は桜魔法が発動している合図。


「行くぞ!」

「きゅい!」


俺が叫ぶのに合わせて万年桜の花びらがおっさんへと飛来する。だが、所詮はサクラのミニバックに詰められる程度の花びらだ。ダンジョンで使ったときのように、視界全てを塞ぐほどの桜吹雪には到底及ばない。


「ボウズのユニークか?花を飛ばすとは面妖な・・・だが、その程度ではなんの障害にもならんわ!」


おっさんはそう叫ぶと目にも止まらぬ速さで、手に持った剣を飛来する花びらに叩き付けた。

剣が当たった花びらは剣に張り付くように打ち落とされたが、全部の花びらを一振りで落とすことは出来ていない。残った花びらは変わらずおっさんへと飛んでいく。狙いは目。ついで耳。鼻。口だ。花びら自体に攻撃能力はほとんど無いからな。視覚と聴覚を奪い。呼吸を止めて倒す。今の花びらの枚数じゃ、顔を覆うだけで限界だな。


「ぬぅううん!」


おっさんも俺達の狙いに気づいたのか、顔へと飛んでくる花びらをスウェーで回避し、肘から先が消える速度で何度も何度も空を飛ぶ花びらへと剣を叩きつける。


お、おっさんつえぇええ!!え?冒険者ってみんなこんなに強いの!?剣先どころか腕の途中からブレて見えないんだけど!?


おっさんの剣が走る度に空を飛ぶ花びらは数を減らし、剣に張り付く花びらが増えていく。

そして、次第におっさんの剣が俺にも見えるようになってきた。これは俺が成長しているからでは無い。おっさんが俺に見えるレベルまで落ちてきたのだ。


「ボウズ・・・お前、剣に張り付いた花も操れるな?」

「もちろん。この魔法は花びらが壊れない限り、操作をし続けられる。剣に張り付いたからって花びらじゃなくなるわけじゃないだろ?なんなら指で一枚ずつ剥がして千切っててもいいんだぜ?後ろから切りつけてやるから」


なんか俺が桜魔法を使っているみたいになったけど、まぁいっか。どうせ説明しても、あいつは人の話しを聞かないからな。


「はっ、ほざけ!刃引きしているとはいえ俺の剣で切れないんだ。今更手で裂けるとは思えん!」

「・・・いや、刃引きしているのに切れたら刃引きの意味が無いと思うんだが・・・」


万年桜は枯れない。1万年経とうと決して朽ちることなく咲き続ける。

その生命力は凄まじく、普通の斧では傷1つつけられず、火を付けても燃えることは無い。

その特性は花びらにも受け継がれている。植物特攻が付いていない武器では、傷1つつける事は叶わない。

買った時は知らなかったが、簡単には処理できない廃棄物(花びら)を延々つくり続ける万年桜は害樹扱いで、能力に比べて購入に必要なDMが安くなっていたらしい。

桜魔法が無いと用途が少ないとはいえ、特攻以外無効とか強すぎだよな。

ちなみにサクラ達が万年桜の花びらを食べられたのは草食獣のおかげだ。草食獣は食事時に限り、植物特攻の効果が付くらしい。

まぁ、草食獣は植物の天敵だろうしな。


「ところで悠長に俺と喋ってていいのか?おっさんの相手は俺だけじゃないはずだろ?」

「なに?」


「きゅいー!」


花びらの攻撃に隠れ、おっさんの後ろを取っていたサクラが特攻をかける。狙いはおっさんの足。機動力を削ぐことだ。


「甘いわ!」


しかし、おっさんには通用しない。ひょいと片足を上げるだけであっさりと避けられてしまった。だが、サクラの攻撃はこれで終わりじゃない。おっさんの注意が足元へ向かった瞬間を見計らい、剣に張り付いていた花びらの一部をおっさんの目に向けて射出するも、剣から手を放した左手であっさり防がれてしまった。


「きゅいきゅいきゅいきゅい!」

「ちっ!足元をチョロチョロと!」


だが、サクラの攻撃はこれで終わりではない。足元をチョロチョロ動くサクラに対して、鈍っている剣では当たらない。

それを理解したおっさんは蹴りで迎え撃とうとするも、剣とは違い鍛えていないのか、蹴りはそれほど速くないし、予備動作が大きいため当たらない。


「きゅいー!」

「カー!花が邪魔だ!!」


それがわかれば簡単だ。小回りの効くサクラはおっさんの横や後ろに回ろうとちょこまか動き回り、おっさんがサクラを追おうとすると花びらが目潰しに飛んでくる。左手で花びらを受け止めても、今度は自分の左手が邪魔でサクラを見失う。


「きゅいきゅい!」

「くっ!うっ!おぅ!?」


サクラを見失えば左右や後ろに回ったサクラの蹴りがおっさんの足首に叩き込まれる。

蹴られた足首に意識を向ければ花びらが顔へ飛んでくる。


・・・二手に分かれた花びらが。


最初は左目と右耳を狙って。おっさんは左目を庇った。

次は右目と左耳を狙って。おっさんは上体を逸らせてかわして、サクラに後頭部を蹴られた。

次は両目と鼻を狙って。おっさんは花びらの移動速度よりも速く引き戻した剣でかばおうとして、顔の前に掲げた剣から飛び移った花びらに顔中を覆われた。


「ぐぅおおおおお。ゴフォッ・・・」


おっさんは顔に張り付いた花びらを引き剥がそうと剣を手放し、両手で顔を掻き毟るが、その程度で破れる万年桜では無い。

爪が欠けるのではないかというほど力を込めてピンクに染まった顔を掻き毟るおっさんと、蹲るおっさんを遠慮なく蹴り続けるサクラという構図がしばらく続いたが、そのうちおっさんがクタっと脱力して倒れた。恐らく酸欠だろう。鼻を塞がれ、口を塞がれ、無理やり叫んだときに喉を塞がれたんだろう。


お、おそろしい・・・なにが恐ろしいっておっさんはもう倒れたのにドッカンバッコン音を立てながら後頭部を蹴り続けてるサクラが恐ろしい。というか止めなさい!死んじゃうから!人殺しは仕方ない時以外はダメ!


「サクラー!もういいぞー!今回はサクラの勝ちだぞー!」

「きゅい?・・・きゅいー!」


俺の言葉で我に返ったサクラが、花びらをずらして白目を向いているおっさんの顔を確認し、確かに意識が無い事を確認したら嬉しそうに俺に飛びついてきた。

お~よしよし。よくがんばったな~。でも褒める前におっさんの確認を・・・よし。脈はある。息もしている。なら大丈夫だな!


「あのぅ・・・」


なんか職員っぽいお姉さんが戦闘に勝った俺達におずおずと話かけてきた。

・・・ちらりとおっさんに目を向ける。桜魔法はもう発動していないみたいで、顔面に張り付いていた花びらは落ちているが、耳や鼻にはまだ花びらが詰まっているし、おっさんは失神して白目を向いてピクピクと痙攣している。うん。ちょーとやりすぎたかな?


・・・よし。逃げるか。


「この勝負はおっさんが挑んできたことですから!俺達悪くありませんから!そもそも冒険者でも無いですから!サクラ!花びらをしまって撤収!ゴー!」

「きゅいい?」


さくらがおっさんの顔面に張り付いた花びらを引き剥がしてふわふわと宙に浮かべると、おっさんの鼻の中やら口の中やらから出てきた花びらが体液でヌゥ~と糸を引いてきた。


「汚ッ!ちょっ!おっさんの体液の付いたばっちい花びらは要らないから!ぽいっしなさい!ぽいっ!」

「きゅい!」


おっさんの穴から抜き取ったバッチイ花びらをべちゃっと捨て去ってスタコラサッサと逃げ出した。


「いや、ちょっと、まって!・・・」


あ~あ~あ~。聞こえな~い!

ちょっと予想外の戦闘もあったし、今日はもうダンジョンへ帰ろう・・・疲れた。

まぁ、戦ったのはサクラだけで、俺は後ろで見てただけなんだけどな。


とはいえ、成果はあった。

サクラが一対一でダンジョン探索とかの依頼が貼ってある掲示板を見に来るレベルの冒険者を倒せたことだ。

まぁ、倒せたといっても、おっさんは顔が真っ赤になるほど酔っ払っていて、練習用のしょぼい剣しか持ってなくて、最初から俺達に対して手加減して相手しようとしてくれていて、相手の知らない桜魔法で不意打ちをしてなんとかって感じだけどな。


・・・あれ?全然一対一で倒せたって喜べる内容じゃなくね?桜魔法は対策さえ取れればなんとでもなるし、サクラのキック自体では殆どダメージ入ってなかったもんな。やっぱりウサギの基礎スペックじゃ、この世界の人間には勝てないのか・・・


となると、やっぱりスキルだな。ウサギでエリア統一を狙うなら、やっぱり多種多様なウサギを揃えて、それぞれのスキルが最大限生きる戦場を作ってやらなきゃな!

それこそがダンジョンマスターである、俺の仕事なのだから!


うん。今カッコイイこと言った俺。

まぁ、そんなこと言いつつも、今は傷害事件にならない様に逃亡中だけどな。

あ、兵士のおっさんごめん!サクラは人間に危害は加えないって言ったけど、思いっきりオーバーキルしてた!

でも、冒険者のおっさんは殺してないし、先にかかって来いって言ったのはあっちだから許してね!

もふもふ!

誤字脱字ありましたら感想のほうへお願いします。


次回は10話なので掲示板・・・もといダンジョンマスター同士の会話ログ回です。

これからも10話毎に会話ログ回を入れる予定ですのでヨロシク!

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