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これは作り話。じゃなきゃ夢だ

 俺は自宅から60キロほど離れた、のどかな風景が広がる場所にある神社に来ている。

 昨日のアーヤの誕生日、郵便受けに俺宛の封筒が一つ届いた。中には今いる場所のマークが記された地図と「あなたの全てをお話しします。同封した地図にマークを付けました。明日の午前三時にそこで会いましょう。お待ちしています」と書かれた紙が入っていた。

 俺はアスカに気づかれないように、やっとの思いでロードバイク(ファントム)で抜け出してきたんだ。つまらない話で俺を呼び出したんだったら張り倒してやる。

 鳥居をくぐって、神社の建物前まで歩みを進める。

 『お待ちしていました。タツキさん』

 木の陰から赤い龍の仮面をつけた男が出てくる。背は俺と同じくらいで、体型はスラッとしている。

 『来てくれると信じていました。僕は灘裕也。テロ組織の頭目にされた男です』

 男が名乗りながら仮面を外す。

 …………嘘だろ? アスカが前に見せてくれた写真のとうりだ。俺と瓜二つ、いや鏡に映った俺がそのまま抜け出してきたんじゃないかってくらいそっくりだ。唯一違うのは声だけだ。若干、裕也の方がトーンが高い。

 『秋葉原にいたあなたを助けたのを最後に関わりを断とうと思っていたのですがね……』

 関わり? 秋葉原で助けられたと言われれば心当たりは一つしかない。狙撃されて川に落ちた俺を和也のところに、金とともに送ったやつか?

 『まさかテロリストに助けられていたなんてな』

 『正確には僕のクローンです。本題に入りましょう』

 『待てよ俺はお前の話を聞くために来たんじゃねぇぞ?』

 『お願いします! …………どうしても助けたい人がいるんです。それにあなた自身後悔することになる』

 俺と裕也の助けたい奴との間に何らかの関係があるのか?

 『…………わかったよ助けられた恩もある。だけど知っていることを全て話してくれ』

 それに確信はないが、テロリストの頭目にされたってことはこいつが本当に事件を起こしたのかどうか怪しい。

 『ありがとうございます。まずはあなたと助けたい人物、キサト博士との関係についてです。……30年前に始まりました。ある大病院の娘として生まれたキサト博士は、高校生の時に重病にかかりました。その病気は心臓を移植しても治るかどうか怪しいものでした。そこに、原因不明の脳障害で入院していた男が心臓の提供を申し出てきました。その男があなたです』

 『心臓の提供? 俺生きてるけど?』

 『あなたは心臓を提供する条件として当時の医院長に2つの条件を提示しました。その一つは、いつの日か自分を蘇生させて未来を見せること。そのあなたの願いはキサト博士に受け継がれ、科学の全てを極めた博士は世界最高の人工心臓をあなたに与えました』

 『人工心臓ね…………』

 『整体ナノマシン搭載人工心臓、名称はフェニックス。人工心臓がナノマシンを製造して血液とともに全身に送る。全身に回ったナノマシンが破壊された細胞を修復し続ける。あなたが生きていられる装置とその仕組みです。この装置が完成するまであなたはコールドスリープ、つまり冷凍保存されていたんです。そしてあなたのもう一つの人格、サイコパスはあなたが当時かかっていた病気が原因で生まれました』 

 『サイコパスが生まれたのは俺がいじめを受けたからだぜ』

 『違います。あなたはある奇病に侵されていたのです。脳内物質の異常分泌で身体能力が著しく高まるかわりに、体への負担が大きく、脳や内臓の細胞が破壊され、やがて苦痛とともに死を迎える。脳への負担を分散するため、あなたの体が自己防衛本能により、脳の活動範囲を大きくした結果生まれた人格がサイコパスなんです』

 それじゃあ、整理すると俺は病気を治してもらう代わりにその博士に心臓を提供してたと。俺がレインに勝てたのはその病気のせいなのか? ということは俺の脳細胞は破壊とナノマシンによる再生が繰り返されているってことになる。今まで怪我が早く治っていたのはそのためだったってことか?

 『しかし博士は山内剛毅の策略によって囚われてしまいました』

 なんか話が一気に飛んだぞ? 焦っているのか。しかもピースキーパーのお偉いさんも絡んでんのか。

 『原因不明の脳障害ってのはウイルスが原因ってわかったのはごく最近なのか?』

 『はい。山内剛毅、奴は博士の研究データの一部を盗み、どこからか入手した僕の細胞からクローンを作り出し、テロを起こしました。その罪をなすりつけられた博士は死刑囚として投獄されています』

 『まるでおとぎ話だな』

 『事実です』

 『じゃあ……夢だな』

 『紛れもない事実です』

 『…………その博士ってのは女か』

 『はい』

 『話が長すぎる。要は無実の罪で幽閉されているお姫様を助けて欲しいと』

 『はい。あなたには力があります』

 どんなお世辞だ。下手くそにもほどがある。

 『断る。俺が今の話を信じられるだけの材料がない。お前らだけで何とかすればいい』

 『できるならそうしたかった。あなたを巻き込まないでと博士に言われました。しかし僕自身も……あなたの細胞を基にしたクローンだから』

 『はあっ?』

 『信じろというのが無理な話でしたね。論より証拠ですね』

 裕也はUSBメモリーと大きなリュックを投げ渡してくる。

 『そのメモリーの中に映像とある重要な情報がが記録されています。その映像を見てから寝てください。あなたから取り出した記憶があなたのもとに戻ります。そして信じていただけたのでしたら、あなたのスマホに処刑場の位置情報を送っておきます。リュックの中には博士を救うための装備が入っています』

 それだけ言い残して裕也は再び闇の中へと消えてしまう。俺は追いかけるが、もう裕也の姿はなかった。

 俺はファントムに飛び乗って家に向かう。真実はどこにあるのかを確かめるために。

 

 家に戻った俺は、自室のパソコンの電源を入れて、受け取ったUSBメモリーをパソコンの側面に差し込む。画面には「動画」 「研究データ」 「フォーレッドドラゴン」の三つのファイルが表示される。

 「動画」とタイトルに書かれたファイルを選択して再生する。

 ……白黒と画面がただ点滅するだけだ。やっぱり嘘だったのか。くそ、眠くなってきたな。残りは明日見よう。

 俺は布団を雑に引いて倒れ込むように横たわって目を閉じる。


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