プロローグ
2016年5月某日。
とある病院の特別個室。
ベットの上で少年と金髪の少女はトランプゲーム(バカラ)で遊んでいる。
このゲームは配られるカード3枚の合計得点が9点もしくはそれに近い人が勝者となる。
少女は既に20連敗中。ここまで負ければ普通ならゲームを止めるか別の遊びに変えるかもしれないが、負けず嫌いな性格故に負けるたび『もう一回!』と叫ぶ。
『これで最後だからな』
少年は頭を掻きながら苦笑いを浮かべている。
ラストの21回戦目。
最初、互いに山札からカードを見ないようにしながら2枚ずつ引き、そのうちの一枚を表向きに返す。
お互いのカードを見て負けを確信したのか、少女は『最初から最後まで絶望的ね』と言った。
カードの得点はAが一点で2~9のカードが数字通りの点数、10~Kは0点となっている。
少女のカードは2枚ともスペードとダイヤのQ、つまり合計得点は最悪の0点。
対して少年のカードはスペードの5とクラブの3の合計8点。
ルールで、少女はカードを一枚引く事ができるが、勝利の希望は無いに等しいと言える。
まず山札の枚数は、場のカードとジョーカーを除いて48枚。勝つには4枚ある9の
カードを引くしか無いが、引けるのは一番上の一枚だけ。引ける確率は紙のように薄い。
『これ、もう負け確定じゃね? 3枚目のカードを引くかい?』
『……私ね……願い事があるの』
いきなりの一言に、少年は少し驚いたのか目を見開く。そして、すぐに真剣な眼差しで少女の方に向き直る。
『どんな? よかったら聴かせてくれ』
『もっと生きたい……死にたくない……でもお医者さんが、手の施しようがないって言うの』
少女は大粒の涙を流しながら、声を詰まらせて言った。
『絶望的だな。だけど、可能性が0じゃないなら――』
少年はラストカード(3枚目のカード)を山札から引き、少女のカードの上に裏側にして置く。
『その願いは必ず叶う』
少年は少女の涙を人差し指で拭う。
『祈りな。祈る者に神は奇跡を見せる』
微笑みながら少年は伏せられたカードを人差し指で小突く。
少女は目を閉じたまま、カードをひっくり返しそっと目を開く。
『嘘でしょ……』
カードはハートの9。
『言った通りだろ? 今日はもう帰るよ』
『待って!』
少女は大きな声で引き止める。
『奇跡を見せてあげよう。神様じゃなく俺が起こす奇跡を』
そう言うと少年は荷物を持って足早に病室を出て行ってしまった。
少女一人の静かな病室を風が吹き抜ける。
『春風……暖かいはずなのに、何故こんなにも冷たく感じるの』
初めて製作した作品です。
自分で前もってチェックしましたが、不自然な表現や誤字などがありましたら指摘していただけると嬉しいです。勉強になります。




