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龍王の加護  作者: 仙幽
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第五十六話:微睡みの中で

「なっ…何をする!!その札を返せ!!…」

「……生きてた!!?」

ディアスは、相変わらず、冷え切った目をしたまま札をひらひらとさせている。

「魔力を防ぐには魔力ってな。腹にありったけの魔力を溜めたらこの通り。」

ボロボロの服をめくり腹を露わにしながらディアスは続けた。

「おかげで魔力無くなっちまった。で?この札であの女殺せるんだな?」

ディアスの質問に答えたのは、黒磨だった。

「そうだ。その札は、要主が毎日コツコツと魔力を溜めたものだ。それに勝る魔力はない。」

ディアスはニヤリと笑いながら、しまったという心の声が聞こえてきそうな表情の、マナミの方を向いた。

「止めてディアス!」

そんなディアスに飛那が悲痛に叫ぶ。

「お願い…殺さないで…!!」

「ふざけんなよ。こいつは俺を吹っ飛ばしたんだぜ!?一歩間違えてたら死んでたんだぞ!!」

「マナミに…龍王の加護が取り憑いてるのよ!……マナミが悪いわけじゃ…」

ディアスは冷たく言い放つ。

「関係ねぇよ。」

飛那は絶望的な目でディアスを見た。

「……ディアス…どうしたの?さっきまでのあなたとは…とても思えないわ…」

「何も変わってねぇよ。それに力に取り憑かれた女解放してやるっつってんだ。感謝して欲しいくらいだね。」

「力に取り憑かれてるのはあなたでしょう!!?目を覚ましなさいディアス」

何だととディアスが飛那を睨みつけたその瞬間──


「!?この女……!!」

マナミがディアスに掴みかかり、札を奪おうとした。だが、呆気なくディアスに飛ばされた。

「あっぶねーなぁ…」

ディアスは呟きながら、背中の鞘に収めていた大剣を抜こうとした。だが…


「探してるのはこれ?」

マナミが剣の柄をもち剣先を地面につけ剣の真ん中あたりに魔力の集まる右手を当てていた。

ディアスに始めて焦りが出た。「お前……まさか…」

「…この剣で…力をコントロールしてたんだね。そりゃそうだよね。人がそんなでかい力…使いこなせるはずない。」

マナミは右手を掲げた。

「おまっ……テメ…止めろ!!!」

「安心しろ。あんたが暴走しても私が今あんたを殺すから意味無い。」

マナミは右手をそのまま振り下ろし、ディアスの大剣を砕いた。

大剣の破片が辺りに散った。

「……お前………っ」

ディアスが唐突にひざまづいた。札を地面に落とすと、頭を抱え、

苦しそうに唸り始めた。

急に様子の変わったディアスを不安げに飛那が声をかけるが、反応が無い。

そんな様子を後目に、マナミはディアスに近づき、落ちていた札を拾うと、その札を粉々に破いた。

そんなマナミを飛那が見やる。

「…マナミ…?」

飛那は立とうとしたが、黒磨にあっさり防がれてしまった。


「飛那様!傷口が余計開きます!!赤爛達がつくまでおとなしくしていてください…!!」


マナミは苦しそうに頭を抱えたディアスを仰向けに寝かせ、その上に乗り、ディアスが逃げられないようにすると、魔力を溜めた右手をディアスの心臓上に掲げた。

ディアスは苦しそうに唸りながらも、マナミを睨んでいた。そんなマナミの近くに落ちている剣の破片がディアスの視界に入る。

「……て…め…ぇ…うっ…」

「あなたに恨みはないけど…父上の命令には逆らえないんだ。ごめんな。」

飛那はその様子に、黒磨の腕をふりほどこうともがいている。だが、今の飛那は弱っていて力がない。

そんな飛那に黒磨が囁いた。

「…どうなさるおつもりなのですか?」

ディアスを助けて、どうするつもりか。

そんなこと──

「分からない…でも……もう……目の前で仲間が死ぬの見たくないのよ…」

黒磨の飛那を掴む手が一瞬ゆるんだ。


まさに同時だった。


飛那は2人の元に走る。

マナミは右手を振り下ろす。

ディアスは剣の破片を握り、マナミに振り上げる。



いったい何がどうなったのかと、黒磨は唖然と、ただ見ていた。

飛那は立つこともできなかったはずが走り、ディアスとマナミに駆け寄った。そして、ディアスはディアスに向かって振り下ろされた右手を払った。だがそれが飛那の足をかすり、飛那がよろけマナミに寄りかかるように、2人倒れた。

「飛那様!!!!!」

飛那は遠くなる意識の中、何が起こったのかと、自分の下敷きになったマナミを見た。


マナミは目を開けたままぐったりとしていた。

全く…動かない。

ズキッと右手が痛んだ。

何だろうと思い、右手に目を移す。

──あ……か……?

いや、黒だろうか?

手の中には、ディアスの剣の破片が握られ、マナミの心臓を貫いていた。

──え…?…どう…い………う……事………。

飛那は、黒磨の叫び声と、近くで羽音がするのを聞きながらまどろむ意識の中、上空を飛ぶ青い鳥を視界に入れ、意識を手放した。




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