表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍王の加護  作者: 仙幽
53/59

第五十三話:無念

………いったいなぁ…………痛い…痛いよ……あれ…?──生きてる…?

手でひどく痛む自分の胸の辺りを探る。べっとりとまだ温かい血液が付くのが分かった。

心臓近くを探ってみる。生暖かい血液の他に何か、紙のような異物を感じた。

ゆっくりと目を開け、その異物を確認してみる。

血で真っ赤に染まった札だった。

「…ふ…だぁ…?しかも…これ…」

最高峰術符の一つ。身代わりの護符、主符だった。

「…こんなの…買った覚え……」

──飛那…?

ふと笑みがこぼれた。飛那以外に考えられなかった。自分の気づかない内に持たせてくれていたのだろう。だが…。

自分の傷口に手を置いた。

血が流れ続けている。主符では防ぎきれなかったのだろう。それだけ龍王から受けた攻撃が強烈だったのだ。

──そうだ……あれは…

龍王に記憶を蘇させられたとたん、急に静かになった…あれはどうなったのか。

だるい体に鞭打って顔だけ向きを変えた。たったそれだけの動作に酷く疲れる。息も途切れ途切れに視線を泳がすと──いた。

座ったまま、首をダラリと垂れ、体から力が抜けたように見える。

すると、ディアスはゆっくりと、重そうに立ち上がった。立ち上がると、空を仰いだ。月明かりに照らされ、特徴ある白髪が青銀髪に輝く。


──なんて…不気味な…


一枚の絵画のようなその光景に、鳥肌がたった。


──化け物め…。


今ここであれを殺さなければ。あんな…得体の知れない物をこの世に放置するには危険すぎる。

あれを殺さなければならないのに──体が動かない。

──このまま死ぬの?最後まで見ないで死ぬの?……イヤだ…死にたくない。

飛那の王様姿を見るまでは死にたくない。

──倒さなくては…あれ…を……。

ディアスは手を地面にかざした。

しばらくすると、地面から、巨大な剣が現れた。王宮の崩壊と共に埋まってしまったあの剣だった。

──知ら…せなければ……龍王…のこと…を。飛那………に……

ディアスは確かめるようにその剣を軽く振り回すと、少し屈んだ。そしてその場から消えた。空に向かって、ジャンプしたのだ。


──倒さ…なきゃ…なら…ない…のに………体が…動かない……し…なんだか……眠いよ……飛那………。

ぼんやりと視界が霞む。


──飛……那………………に……げ…て──

王になって──この国のために──僕達のために。


リジンは静かに目を閉じた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ