第四十七話:二人
予想してる方もいると思いますが、最終話……近いです。後十話ないと思います。どうか最終話までお付き合い願います〜。
あまりの轟音に耐えきれず、音が鳴り止むまで、地面に突っ伏したキリトは、地面に何かが勢いよく落ちる振動を感度も何度も感じていた。
ようやく音も振動も止み、体を起こすと、自分の周りには巨石や大木や土や泥が降り積もっていた。自分にもかかっていたので、手で払いながら、上を向いた。
上空には太陽を遮る黒い塊があった。
位置が悪いと思い、少し歩いてみると、その黒い塊の正体が分かった。
魔力だけでは決して浮かすことなど不可能なほどの、常識外れにでかい島だった。
「…今の…これが降りてきた音か?」
キリトはしばらく島を眺めていた。眺めながら、徐々に徐々に、この島と龍王国とが結びついてきた。
「……姿を現してくれたのはいいが…飛鳥はいない…俺は魔力は持ってない玉もない…どうやって龍王国へ行くか…」
キリトが考え込んでいると、今度は大量の羽音がした。
「…鳥か?───飛鳥!?」
大量の飛鳥が龍王国へ向かって飛んでいたのだ。しかもどれも人を乗せている。
「なっ…馬鹿な!!」
ただでさえ難しい飛鳥の養殖を成功させるだけではなく、あんなに人になつかせるなんて、キリトはいったいどこの国だと、兵らしき人間が持つ旗に目を凝らした。
「…ゼノン…?」
──アレクトリアじゃないのか!?
キリトはハッとして飛鳥の死骸の中から出てきた宝石を取り出した。
そして辺りを見回すと、近くを歩いていたカブトムシによく似た虫を捕まえた。そしてその虫の上に砕いた宝石の欠片を落ちないように結びつけると、その虫は、キリトの側から離れなくなった。キリトはその虫に指をさし出した。すると、虫はまるで人になつくよう調教されたように、指に頭をすり寄せてきた。そして、キリトが
「飛べ」
と命じれば飛び、
「回れ」
と命じれば回った。
他の虫でも試したが全てにおいて同じことが起こったのだ。
「やはり…あの飛鳥はゼノンがアレクトリアに貸したのか…」
──おそらく、あの飛鳥達の体内にもこれと同じ……ゼノンの操る術をかけた玉が埋め込まれている。だから…逃げることも、人に襲いかかることもないのか。
キリトは自分の周りに虫をはべらしながら、どうやって龍王国へ行くかという問題を忘れ、日が暮れたにも関わらず飛鳥について永遠考え込んている。
すると、唐突に夜空に似つかわしくない、青白い光が現れた。まるで龍王国を照らしているかのようなその光に、キリトは目がくらんだ。
「何んだ…?」
キリトは今まで上空を飛んでいた飛鳥達が、真っ逆さまに自分が今立っている地面めがけて飛んでくるのが見えた。
だがその飛鳥達はまた飛び上がることなくそのまま地面に激突し、死んだ。
また、その背に乗っていた人間達もまた、地面に激突した。
次から次ぎへと落ちてくる。そのあまりにも凄惨な光景に耐えきれず、キリトはその場を離れるため、歩き出した。
しばらく歩いていると、上空から自分を呼ぶ声が聞こえた。
本来なら、日が暮れ人の顔など見分けがつかないはずが、あの青白い光のおかげで、キリトを呼ぶ人物の顔がよく見えた。
精鳥にまたがった、シアとイシズだった。
飛那についていこうとしたが、ゼノンの兵に断固として拒否されたディアスは、渋々町の人達と町の片付けをしていた。
見慣れない大剣を背負い、しかも飛那と共に現れたディアスは、民衆の注目の的だった。
──ほら見て。あの方よ。
──まぁ…ひょろっとして弱そうね…あんなんで背負ってる剣を扱えるのかしら?
──ほら、能ある鷹はなんとやらよ。飛那様が助けられたとおっしゃるくらいだもの…きっとお強いのよ。ほら、お顔だってよく見れば凛々しいじゃない?
──やだーっあなたあんなひょろっとしたのがタイプなのー!?
──きゃ…やめてよ聞こえるでしょう!
きゃぁきゃぁと若い女性陣は好みだの好みではないだのと盛り上がっている。
──ほぅ…あんな骨と皮だけの男を飛那様が連れてこられたと?
──まぁ。なかなか良い男じゃないか。飛那様もようやく婿をとる気になられたのかねぇ。
──なにもあんな弱そうな男でなくとも…
──馬鹿だねあんた。飛那様のことだ…あんな細くてもきっとお強いのだろうよ。見なよあの大剣。あんたじゃ背負うこともできんだろうさ。
年を召した人達は、飛那に婿が来たと好き勝手に噂を広めている。
ディアスはいい加減うんざりして、飛那を探しに、ゼノンのテントが見える丘へ逃げた。
興味本意な視線から逃れようやく1人になったディアスは星を見ている。
「やっぱ星は綺麗だよなぁ。なぁ?マコト?」
ディアスは誰もいない隣を振り向いた。
「…マコト…マコト?」
マコトなんて人は知らないはずだ。なのに口から自然と出てきた。ディアスは首を傾げた。
「…誰だよマコトって…」
誰とも無く苦笑が漏れた。
もしかしたら、自分の無くした記憶に関係しているかもしれない。そうも思ったが、ディアスは無理に思いだそうとすることはなかった。無理に思い出そうとすると、気分が悪くなるということの他に、妙に嫌な予感がするのだ。思い出したら全てが消えて無くなる…そんな嫌な予感が。
ディアスは仰向けに寝ると、星空を眺めた。どこまでも深い闇に輝く月と星。悲しくなるほど美しく輝くその輝きを唐突に消し去るほどの光が現れた。
ディアスは飛び起き、慌てて飛那を探しにテントに向かって走り出した。