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龍王の加護  作者: 仙幽
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第三十七話:危機(3)

「へぇ…1人で来たんだ意外だな…。私を1人で止められると思ってるの?」

飛那が降りた先は、上方達が倒れていた場所の三倍は広い部屋だった。

部屋の四つの角には柱のような物が立っているが、どれも折れていて、周りには石片が散らばっている。部屋の中心には五つのクリスタルが宙に浮き、それぞれが淡い『赤』『青』『緑』『白』『黒』に優しく光っている。そのクリスタルの前に龍騎が要王の首を左腕で抱きかかえ、右腕には白竜の左腕を握り、立っていた。

「意外…自分の力を過信しているんだね。もっと自分の力を自覚してると思っていた。」


龍騎は冷ややかに飛那に笑いかけた。

「……龍騎…そこで何を──」

龍騎は白竜の左腕を緩やかな動作で淡く黒に光っているクリスタルに当てようとした。

飛那は速かった。まさに一瞬で袖から出した札を龍騎に向かって飛ばした。龍騎にその札が触れるか触れないか、白竜の左腕がクリスタルに触れるか触れないかというところで、龍騎はひらりと華麗に舞い上がり、札をかわした。札はそのままクリスタルにぶつかると、火花を散らせ落ちた。

「へぇ…知ってるんだ?……──おかしいね。何故知ってる?」

ヒヤリと何か背中を伝った。

「…ま、話が早くなるから、」

冷や汗だった。

「いいけど──」

龍騎は飛那を見るのと同時に飛那に飛びかかった。

だが飛那も速かった。

龍騎の体当たりをギリギリかわし、左に逃げ攻撃の体制を整えたが飛那が攻撃を繰り出す前に龍騎が先に仕掛けてきた。

龍騎は片腕に要王の首を、もう片方には白竜の左腕を持っているので両腕がふさがっている。なので自然と攻撃は足技が多くなる。飛那にもそれは分かっていた。分かっていたが、それでも防ぐだけで精一杯だった。恐ろしく速い蹴りを両手両足を使い必死に防ぐ飛那は徐々に徐々に入り口から遠ざけられていた。

──マズい…

飛那に焦りがでた。たった一つしかない入り口から離れるのは非常にマズかった。

とにかく龍騎から離れようと、一か八か攻撃に出た。

龍騎に疲れが出たのか蹴りが一瞬遅くなった。

飛那は素早くその足を払い、龍騎の体のバランスがズレたところにみぞおちを狙った掌底を繰り出した。しかし龍騎は予想していたのか、飛那の攻撃を余裕でかわすと、ひらりと舞うようにクリスタルの近くに着地した。優に百メートルは跳んだのではないだろうか。恐るべき跳躍力である。人ではないから当たり前と言えば当たり前ではあるが。

気がつけば飛那は入り口を向かいに見ていた。入り口から最も遠い位置に追い込まれていたのだ。

「このクリスタルを壊すためには何が必要か知ってる?」

飛那はただ龍騎を見た。龍騎の目的ははっきりしている。このクリスタルを壊し、浮遊力を一気に落とし、龍王国を地上に落とすつもりなのだ。

「白竜の左腕だけでは駄目なんだよ。あともう一つ──」

龍騎は背中のあたりから何かを出した。それは明らかに男の右腕だった。

「黒竜の右腕。この二つがそろわないと、駄目なんだよね。」

飛那は自分でも顔が蒼白になるのが分かった。

「なぜ!?何故龍騎が黒竜の……!!」

龍騎はおもむろに二人の腕を合わせるようにした。二人の腕は粘土が形を崩すように一つの腕が形作られた。右腕のようだった。

「なっ!!?………一つになった!?──」

龍騎は妖麗な笑顔を飛那に向けると無駄のない動作で一番近くにあった淡く青に光っているクリスタルにその腕の手のひらを当てようとした。

飛那に悪寒が走った。頭で考えるより先に体が動いた。地面を強く蹴り龍騎に飛びかかった。龍騎は素早く一本になった腕を宙に投げた。

飛那は腰につけていた刀を素早く抜いた。そして龍騎の首めがけ刀を振った。

龍騎は飛那のその刀を無表情で、素手で止めた。抜き身の刀を素手で握りしめたまま、龍騎はなんとも速い膝蹴りを飛那のみぞおちに当てた。

飛那は蹴りのあまりの速さに十分な防御が出来ず、そのまま床に沈んだ。あまりの激痛に起きあがることができなかった。

龍騎は左手を横に伸ばすと、丁度上から落ちてきた一本になった腕をキャッチした。

「…本当に、よく1人で来る気になったよね。一体何をしに来たの?」

「あんたを止めるために決まってんだろ。」

龍騎は驚き入り口を振り向いた。飛那もまた入り口をみた。

「あんたが龍騎か。ひっでぇ事しやがる…あんたには良心ってもんがねぇのかよ?」

龍騎は初めて見るその顔を訝しげに見つめた。

「……」

だが、興味が無いのかすぐに飛那に視線を落とした。龍騎は飛那の手の届かない位置に立つと、一本になった腕をひらつかせた。

「見ててね飛那。主が最も望んだこと飛那が最も望まないこと、今その両方をするから。」

飛那は真っ青な顔をしながら何とか起きあがったが───立てない。

龍騎は腕を青のクリスタルに近づけた。

「止めて───」


もう終わりだ…飛那がそう感じたとき、風が通った気がした。こんな地下に、風など届くはずもないのに。


「うえぇ〜っ…生腕か?これ…気持ちわりぃ…。」


飛那の後ろから、声が聞こえた。

「───え…?」

飛那が振り返ると、そこにいた人物は───

「ただの腕にしか見えねぇけど…これが、一体何なんだ?飛那さん。」

白いふわふわした髪と、黒い瞳、ひょうきんな態度そして、あの巨大な大剣を今は肩に担いだディアスだった。


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