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龍王の加護  作者: 仙幽
30/59

第三十話:表裏

ついに、30話になりました。いつも読んでくださってありがとうございます。終わりの見えないこの小説の感想や好きなキャラなどをぜひ聞かせてください。今後参考にしたいので、初めて読んでくださった方も、常連の方も、気軽にお願い致します。


「黒祠!起きてますか?」


黒磨に呼ばれる前から黒祠は起きていた。王宮中が落ち着きがなかったので、寝ていられなかったのだ。

「詳しいことが分かりましたよ。飛竜様は要王の首を取り返しに行かれたらしいです。」

「あぁ…首が無いことばれていたんですね…まぁ、いつかはバレると思ってました……」

黒祠はぼーっとしているようだった。

「何を暢気なことを言っているんですか。飛竜様の教育係りとして心配ではないのですか?」

黒祠はうつらうつらしながら答えた。

「飛那様がついておられるのでしょう?ならば何も心配する必要は無いですよ。なんせ飛那様は龍王国一の実力の持ち主であらせられるのだから…」


黒磨は訝しげに黒祠を見た。

「…どうか…したのですか…?眠いのですか?」

黒祠を目をつむり、低く唸るようにした。

「……自分の力のなさに、いい加減嫌気がさしただけです。」

「…黒祠──」


「嫌気がさす前に、その怪我、さっさと治せよ黒祠。」

突然ふすまが勢い良く開いた。現れたのは、首から長い黒い数珠をかけた見た目は二十代後半の、太ももが半分も見えるようなミニのスカートを着て、髪は肩ほどまである女性と、首から白く長い数珠をかけた見た目は二十代前半の、白装束に身を包んだ表情穏やかな男性の二人だった。

黒磨はその場に慌てて膝をついて頭を下げた。

音闇ねあん様!雪弥ゆきや様!どうしてこの様な場所に…」

黒祠は冷ややかな視線を音闇にぶつけた。

「…ねぇさん…何しにここへ?わざわざ私の怪我を悪化させにいらしたか。」

音闇と呼ばれた女性は腰に手を当てて、息を吸い込むと、黒祠に向かって声を張り上げた。

「馬鹿者!!!!情けない弟に喝を入れに来たに決まってるだろ!大した怪我でもないくせに大げさに寝込んで!!わざわざ来てやったんだ、茶くらいだしな!!」


ただならぬ険悪な雰囲気に、逃げ出すように、黒磨は颯爽と立ち上がった。

「私が。只今すぐにお持ちいたします!」

黒磨は慌てて部屋から出ていった。部屋の入り口に穏やかに立っていた雪弥がその姿を見送った。

音闇は黒祠の側に来て腰を下ろした。雪弥は立ったまま外を見ている。

黒祠は大げさなほどのため息をついた。

「……いったい何しにいらしたんですか…黒磨を追い出してまで…」

音闇は黒祠の顔を真顔で両手でつかんだ。

「お前老けたな。」

黒祠は軽く笑った。

「姉上は相変わらず変わりない。体の年齢が変わらないのは力が強いことの現れ。流石です姉上。」

音闇は表情を変えなかった。

「黒祠。戦争を起こそうとしている国がある。言いたいことは分かるな?」

黒祠は音闇の目を見た。いつ見ても、その目に宿る輝きは燃えたぎる炎と、怒りを宿している。戦争に対する戦争を起こそうとする者に対する怒りだ。

黒祠は布団から起き上がった。

「分かりました。」

黒祠の動きはいたって普通で、とても怪我をしているようには見えなかった。

「良かったですね。音闇。」

雪弥が優しく笑んで近づいてきた。

黒祠は真っ直ぐな目で音闇を見た。

「行きましょう。」



「あ…あれ…黒祠?」

お茶と茶菓子を持ち、部屋に戻った黒磨は、黒祠も音闇も雪弥もいない部屋で呆然とした。

「いったい…どこへ…」

「黒祠と音闇は実家へ帰りましたよ。」

唐突に後ろから声がしたので、黒磨は飛び上がるほど驚いた。

「音闇が連れ帰りましたよ。あなたは黒亜から指示を仰いでください。」

雪弥はそのまま、背景の庭に溶けるように姿を消した。

黒磨は雪弥の消えた場所を見つめた。

「……実家へ?」

──そんなはずはない。あの音闇様がわざわざここまで来た…他に…何かあったはず──

「深入りは禁物ですよ。」

見ると雪弥が上半身だけでこちらを見ていた。

「長生きはするものです。さぁ。黒亜の所へ行ってください。」

雪弥はいたって穏やかに話していた。しかし、優しい笑顔の裏には何があるのかと、黒磨は恐ろしかった。


「──はい…黒亜の所へ…行きます…」

黒磨はゆっくりと部屋を出ると、廊下を歩き出した。背後にはまだ雪弥の気配がした。走り出したい感情を鞭打って押さえつけ、歩くように歩くようにと努力しながら廊下を歩いた。

廊下の角を曲がろうとした時、後ろにいたはずの雪弥が真横に立っていた。そして、黒磨に優しく耳打ちした。

「今あったことは、忘れてくださいね。…私はあなたを殺したくはありませんからね。」

そう、呟くと、雪弥は軽く笑って、完全に姿を消した。

黒磨はしばらくその場に大量の汗と共に立ち尽くしていた。

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