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龍王の加護  作者: 仙幽
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第二十八話:予定外


「いや!!!!離して!!離してよ!」


キリトは女の悲鳴で目を覚ました。夜まで寝入ってしまったのかと思ったが、窓のカーテンを開けると、サンサンと太陽が照りつけていた。時計を見てみると、四時間ほどしか寝ていない。

村を襲った奴と村の人間がはち合わせたのかと思い、声の方へ向かった。

戦いでも始められたら、村から出られなくなってしまう。

宿屋の入り口から外をそっと覗いた。

宿屋から少し離れた場所で数人の男が一人の女を連れているところだった。女は必死に激しく抵抗しているようで、男達の手を煩わせていた。

キリトは様子を見ながらも、女を助けに行くかどうか真剣に考えていた。

今なら飛鳥がいるからあの人数でも充分に女を助け出すことはできるだろう。だが、飛鳥を使う限りはいやでも目立つ。今、目立つ事はどうしても──絶対に避けたかった。今しなければならないことは……第一に考えなければならないことは──飛那。飛那をアレクトリアに連れていく事。今はそれだけを頭に入れて行動すればいい。


──そう今は…。


女には悪いと思いながらも、キリトは宿屋の裏からこっそり抜け出すことにした。

ポケットに飛鳥がいるか確認した後、裏口へ向かおうと、後ろを向いた。すると、目の前に真っ黒い壁が突如として現れた。キリトはこんなところに壁があっただろうかと不思議そうに黒い壁を見つめていると、上から声が聞こえてきた。

「何者だお前?」

キリトが上を向くと、壁かと思ったものは見知らぬ男で、しかもキリトに銃を突きつけていた。

キリトは目を見張ったが、軽くため息を付き、素直に両手を挙げた。

「はあぁ…」

やってしまった。


キリトは男達の前に連れて行かれた。

「何だそいつは?」

「この村の奴じゃないみたいですね。」

男達はここにいるだけなら、13人いた。男達は盗賊の様な風体ではなかった。皆、どこにでもいる人が着る服を着ていた。

「宿屋にいたのか?」

「ええ。先輩をずっと見てましたよ。」

キリトは後ろで両手を縛られた。

「何か武器でも持ってんじゃないだろうな?…しかし…無表情な男だな。少しは怖がってもよさそうなもんなのにな。」

ほかの男達よりも頭一つ出た背の高い、中心人物のような男は笑うように話していたが、キリトを見る目は笑ってはいなかった。

「あ。そう言えば、ポケットを見てたような…」

キリトは無言で背の高い男の目を見た。背の高い男はキリトと視線を合わせたまま、キリトの近くにいた男に調べるように言った。

男がキリトのポケットの中に手を入れた瞬間───

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」


男がポケットから慌てて抜いた手には肘から下が無くなっていた。男は血が流れ出ている腕を押さえながら悲鳴をあげた。

他の男達は何が起こったのかと、悲鳴をあげている男の周りに注意を向けている。

「ポケットから何か出たぞ!!」

「魔術かもしれん!!!気を張れ!!!」

背の高い男が一番に気づいた。

「上だ!!!避けろ!!」

避けきれなかったのは、8人。たった一瞬でただの肉塊と化した。

キリトはその場に伏せていたので肉塊にならずに済んだ。キリトは捕まっていた女はどうしたかと、周りを見た。すると、振り向きもせずに、森の中へ消えていく姿を見つけた。

混乱に乗じて逃げるとは、なかなかくえない女である。

「なんで飛鳥が!!」

「くそっ!!8人も喰いやがった!!」

「シンさん!!森へ逃げましょう!!」

シンと呼ばれた背の高い男は手だけで、男達を下がらせた。どうやら一人で飛鳥を倒すつもりらしい。

キリトは飛鳥が何故暴れ出したのか考えていた。その時凄まじい風音がした。

上空にいた飛鳥が真っ直ぐにキリトに向かって飛んできたのだ。

キリトには避けきれるものではない。

──こんな所で…

と、目の前にシンの姿が。飛鳥はかまわず嘴を全開にした。


──何をする気……

シンはどこから出したのか、飾りっけの無い剣を横に構え、踏み込んだ───


ブシュゥッ……


キリトは流石に思考が止まった。

なんと鮮やな…ただの一瞬で、人の手で育てられたとは言え、あの飛鳥を殺したのだ。飛那でさえ飛鳥には苦労させられたというのに、この男は…。

「明らかにあんたを狙ってたな。この飛鳥。」

シンは動かなくなった飛鳥に背を向け、キリトの方へ近づいてきた。キリトはその様を淡々と見ていた。

シンはキリトの顔を覗き込むようにした。

「あんたが飼ってたのか?」

キリトはようやく回復してきた頭で、シンが何を言いたいのかを、汲み取った。要は、飛鳥をペットにしたのか?そして自分のペットに命を狙われるのは何故か?と言うことだろう。


──口封じ…


考えられるのはそれしかなかった。

もしも、キリトが捕まったりしたら、アレクトリアの陰謀がばれる前に殺せとそう命じられたのだろう。

キリトが黙っていると、シンはおもむろにキリトの手の縄をほどいた。

「あんたはめんどくさそうだからいいや。この村と関係なさそうだし、俺達女追いかけなきゃならないし。」

シンはそのまま、森へ向かった。

「シンさん、他はルリを追いました。こっちです。」

「行くぞ。あの女がいなきゃはじまんねぇからな…」


シンはそのまま森の奥へ消えていった。後に残されたキリトはただ呆然と死骸と化した飛鳥を見つめていた。

──もし、口封じで飛鳥に俺を襲わせたなら、アレクトリアに俺が死んだと思われた可能性があるな…そうなると…マナミとイシズは…。……何にせよこうしてても…はじまらない…

キリトは立ち上がり、飛鳥の横を通った。すると、飛鳥の内臓部分に光物を見つけた。

──何だ?

キリトは内臓から光物を取り出した。よく見ると手のひらほどもある先の尖った宝だった。

──…まて…これが刺さってイライラして、それで俺を襲ったのだとしたら…

キリトは倒れた飛鳥を見下ろした。

──行くしかない。龍王国へ。

キリトは男達とは逆方向の、龍王国の方角へ向かって歩きだした。


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