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龍王の加護  作者: 仙幽
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第二十七話:迷想

深夜アレクトリアから龍王国へ一直線に飛鳥で飛んでいたキリトは、どこか泊まれそうな村を探していた。

ふと、キリトは自分が乗っている飛鳥を撫でた。


──…まさか飛鳥の養殖に成功する国があったとは…


アレクトリアから借り、今キリトが乗っている飛鳥ひちょうは、獣よりも体が大きく、力も強く獰猛で、尚かつ知能が著しく高いものを総じて『妖種』と呼ぶが、飛鳥はその中では妖鳥に属す。

飛鳥は人を乗せて飛べるほど巨大化もするし、肩に乗るほど小さくもなる。

しかも性格はいたって温厚なので、乗り物として調教しようと、どの国でも躍起になっている。

だが、相手はどんなに温厚でも妖鳥である。

捕まえるには相当な技量と体力もしくは魔力が必要不可欠となるが、それらを合わせもつ人はそうはいない。

その上、あまりにリスクが高いので皆やりたがらない。そこで考え出されたのが、飛鳥を人の手で育て殖やすつまり養殖するということだった。だが、死に物狂いで取ってきた卵がせっかく孵化しても、なぜか飛鳥の雛はすぐに死んでしまうのだ。今はどこの国でも雛の死亡要因の研究に多額の資金を投じている。

キリトは訝しげな顔をした。


──なぜ…成功した?…妖種は人の手では育てることは不可能なはず…。


キリトは考え始めると周りが見えなくなる傾向があった。だから 不気味なくらい澄んだ月夜を、猛烈なスピードで横切る光に気づかないまま、飛び続けていた。


──本当に…養殖か…?


キリトは妖種や動物などの生態には詳しい方だ。だが養殖以外の方法で妖種を育ってる方法は聞いたことがなかった。だが──飛那が。飛那が妖種について語ったことがあった。

妖種は闇から生まれると。

果てしない闇から生まれ、光にのまれ闇に帰す。

闇はどこにでも存在しているから妖種は簡単に産まれる。と。

──ならば、闇の扱いに長けたものなら創り出せる……?……だが……いったいだれが。

その時突然の眩しさに目がくらんだ。

何事かと周りを見渡してみると、ついさっきまで美しい月夜だったはずが月の変わりに、山から朝日がのぞいていた。更にキリトの耳に唸り声に似た鳴き声が聞こえてきた。飛鳥の顔をのぞいてみると、飛鳥は恨めしそうにこちらを睨みつけてきた。まるで、『お前は乗ってるだけだから楽かもしれないけどこっちは休み無しで飛びっぱなしなんだせ?少しは休ませろよ。』と言わんばかりだった。

キリトはちょうど真下にあった、龍王国に近い村が目に入った。上から見ると、なかなか大きい村のようで、村の真ん中あたりに宿屋らしき大きな建物が見えた。キリトはこの村で休むことにした。



村から少し離れた場所で飛鳥から降り、手のひらに乗るくらいの大きさになった飛鳥を胸ポケットに入れた。キリトが村に向かって歩くと、しばらくすると、飛鳥が眠りについたのか、規則的な鼓動が伝わってきた。妖種は基本的には人の前で寝ることはない。そんなに疲れていたのかと、キリトは悪かったと感じた。本来なら二日はかかる道のりを一日で来てしまったのだ。流石に妖鳥といえども、疲れる。

そうこうしてる間に村に着いた。

早朝に着いたせいか、村には人の気配がしなかった。村に一歩はいると、上からは見えないものが見えた。


「村を…捨てたか。」


死体は無いものの、そこらじゅうに血痕が残されていた。何者かの襲撃を受けた事は確かなはずだが、隠れる場所を削ぐために普通、建物類は焼かれるのだが、この村の建物は全て綺麗に(血痕は付いているが)残されていた。


宿屋に向かったがやはり誰もいなかったので、キリトは勝手に泊まることにした。今はゆっくり休んで、普通、町や村を襲うときは夜襲が基本なので、夕方頃龍王国に向かう事にした。



村に女の悲鳴が響いたのは、真昼だった。



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