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龍王の加護  作者: 仙幽
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第二話:決意

 城壁の上で 空を落ち着かない様子で不安げに見続けている 女性がいる。


「……だめ…だめよ黒竜……」


 女性はわかっていた。ただの側近である自分が今からやろうとしていることがどれほど罪深いか。


──もし…今日あの方が現れなかったら……

  だ…だめ!そんなことを考えちゃ……いつもそう……いつも頼りすぎてしまって…あの方の自由を……制限させてしまって……でも決心したはずだったのに。……でも、やっぱり恐ろしいという感情は消えない…。


──あの方を…この手で――!!


 そう考えるだけで女性の全身がふるえた…寒気もする…頭が割れるようにいたんだ。

 しかしやらなくてはならないことは、明白だった。

 犠牲になった二千万の民のため。

 血に酔い、乱れた、『天空の桃源郷』と呼ばれたとは思えないほどの荒廃の中、道を失った三千万の民の平安のために1日でも早くやらなくてはならない。

 女性は泣きそうな顔で、空にまた目を向けた。

 その時、空に黒い影が見えた。女性はその黒い影に集中した。

 その黒い影はいくら見ても、上に人を乗せているようには見えなかった。

 女性はホッとしたが、落胆もした。

 女性は自分が落胆していることに 軽蔑をした。

「……私…なんて最低なの。なんだかんだ言って……こんなに……あの方が来るのを……こんなに期待していたなんて…」

──あの方が来るはずない…あの方が…この国がどうなってしまったか…知らないはずだから……。

 こんなに早く…これるはずもない。

 ……黒竜…あなたは私を止めた…必ず連れてくるから、それだけは止めろと…私がやったら…死だけでは済まされないからと。

 でも…もうこれ以上…あの方に頼るわけにはいかない。


 意を決した女性が建物の中に戻った時、控えていた女性の部下が、なにか恐ろしいものを見たように、真っ青な顔をして、呆然と立ったまま、廊下を見つめていた。

「?どうしたの、白卦はっけ?何か怖いものでも――」

 言いかけたとき、白卦と言う名の側近は、狂ったように、女性にすがりつき、泣き笑いながら、叫んだ

「白竜様ぁぁ〜!!!! キタ!……ミタ!…見ました!! 私……見たんです!!」

「落ち着きなさい! 白卦……」

「ほ…本物でした!! 間違いないです!! あぁぁぁっ………ああああ……!!!!! わ…私は…あぁ…白竜様!!!!」

白竜はピンときた。

「どちらに行かれた?」

「あぁぁぁ……あの方が…飛那様が!!!……『輝竜の間』に向かわれて!!! ああああ!!! 私は……私…うっ……」

 白卦はそのまま倒れ込み、泣き崩れてしまった。

 白竜は輝竜の間に向かって走った。

 今輝竜の間には……要王ようおうがいる。

 飛那は鐘も鳴らさずに王宮に入った。

 理由は一つしかない。

 自分が戻ったことを、側近に知られたくないのだ。白竜はひどい焦燥感にかられていた。


──いやな予感がする…どうか…私が行くまで…どうか…


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