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龍王の加護  作者: 仙幽
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第十七話:確信

シアとディアスが龍王の国との境にある村『ラグン』に着いた頃には、すっかり日が暮れ、辺りを夕闇が取り巻いていた。

この村では電灯など無いため、代わりを果たす巨大な焚き火が村の中心にある。そこには自然と人が集まっていて、雑談をしたり、食事をしたりしている。


二人は、焚き火の周りに集まっている人々から、飛那についての情報を集めようと、村人たちの話に混ざった。

「ほぉー。おめっさんゼノンから来たのけ?えらい遠くから来たもんだがね。」


ディアスが会話しているのは80代の笑顔の可愛い老人だった。

「マジに遠いっすよね〜ここに着くのに10日ぐらいかかったっすよ〜。」


「ぬぁに10日〜そんなにかかんのけ?おら、ここから出たことねぇっけ、ゼノンがそんなに遠いって知らねがったがね。」



「へぇ〜?じーちゃん、ここから出たこと無いんすか?」


「そだ〜。こかぁーええ所だ〜出ていく必要ないがね。森があって川もある。その上龍王さんとこにもちけーでの、加護を受けることもできる。小さき村じゃが、十分がね。」


ディアスはしめたと思った。

「ここって本当に龍王の国から近いっすよね。じーちゃんは龍王の国には行ったりはしないんすか?」


ごく自然に話を持っていけたことに、密かに一人で小さくガッツポーズをとるディアスだった。

「行かね〜がね。あそこはおらが物心つく頃から、危ねっけ、とても行けねがったがね。」


「そうなんすか。そう言えば最近、王が亡くなったそうじゃないっすか?いよいよ不安っすね…」


ディアスは老人を心配する素振りを見せながら話を進めた。話が暗くなると思ったが、予想外に老人は笑いだした。

「要王はもう駄目だったがね。王が変わった方が、あん国もここも、安心できるがね。」


「新しい王って、誰がなるんすか?やっぱ、息子さんとか?」


「いんや〜、噂によれば、禁忌を犯した姫が継ぐみてぇなごと、言ってたがねなぁ〜」



「…禁忌…」



「おらも、よぐはわがんねなぁ〜。なぁんでも、要王から国を追いだされたらしいがね。そん姫が継ぐってもっぱらの噂だ〜。ゼノンの玉王ぎょくおうも気が気でねぇんでないか〜?」


「?なんで、ゼノンが……」


「おめっさん知らねぇのけ?玉王が、龍王の加護狙って、戦争の準備を始めたって、有名な話がね。」







「きっと玉王だけじゃないわ。」


だいたいの人から話を聞いたところで、宿屋に戻ったディアスはシアに老人の話を聞かせた。シアは苦しい顔をしながら頷いていた。

「…なぁ?加護って…何なんだ?物なのか?」


シアは軽く息をつくと、真顔で頭を横に振った。

「それは…私には分からないわ。私は…龍王が術か何かで王を守ることを言ってるのだと思ってた………村人の話を聞くと……どうも違うみたいよね…」


ディアスも頷き返した。

まるで、道具のように

「便利」

だの

「使う」

だの

「欲しい」

のような言葉を村人は使うのだ。


「それはそうと、飛那さんはどうも、生きてるみてぇだよな。聞く奴みんな、口をそろえて姫が王になるって言ってたぜ?」


シアは微かに笑みを漏らした。シアも村人の話を聞いて、飛那が生きていることを確信していた。だが、今飛那が生きていても、戦争が起これば飛那の命はまた危険にさらされることになる。それでは意味がない。

「これだから人は。…なんて欲深い…」


シアの吐き捨てるようなつぶやきは、ディアスには聞き取れなかった。

「戦争…止めさせること、できないんかねぇ…?」


シアはディアスを不思議そうに見た。

「王が戦争したがってるなら、王を説得するしか…ねぇよなぁ〜。」


「…説得……各王に意見できるほどの地位が必要よ。」


ディアスは大きく溜息をつくと、両腕を頭の後ろに回して、天井を仰いだ。

「そんな大層な地位なんてそう簡単に手にはいんねぇしな…」


シアは黙ったまま机を見ている。額に手を当てて。

「おっ…もうこんな時間か…シアそろそろ寝ないか?明日また考えよう。」


二人はそれぞれ部屋に戻り、静かな夜を過ごした。






異変があったのは、豪雨になった、次の日の早朝だった。宿主が朝食を食べていない二人の客を呼びに、部屋に向かった。しかし女性の部屋は雨が入り込んだのか床全面が湿り、男性の部屋もまた湿っていたが、所々に血痕が残されていた。

その2つの部屋には誰もいなかった。


二人は忽然と姿を消した。


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