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龍王の加護  作者: 仙幽
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第十四話:情報

二日かけて森を抜け、玉都『ゼノン』に着いたシアとディアスは、旅館の食堂で雑談をしている。

「しかし、驚いたわ〜。ディアスは本当に強いのね。」

ディアスはチャーハンに似た焼きめしを幸福に満ちた顔でほおばっている。

「そぉか〜?ってかこれすっげーうめぇ!!!!!悪いな〜おごってもらっちゃってな。」

シアは呆れたような顔をした。

「まったく…一銭も持たずに森で何をしていたのよ…?」ディアスは照れ笑いをしながら、夢中で焼きめしを口に運んでいる。

「…それにしても…………ずいぶん食べるわね…」

シアとディアスのテーブルの周りには、空の食器が散乱している。ざっと見て、ディアスは一人で十人前は食べている。

「シクイでも腹一杯にはなったけど、やっぱ、味のついたおかず!!そして真っ白なご飯!!!と香りの良い茶!!!!これに限る!!!!おねーさん!!!!」

ディアスは近くを通った初老の女性従業員に机を軽く叩きながら声をかけた。

「お茶とこれもう一つ追加ね。」

「まだ食うんかい!!!!!」

思わずつっこみを入れたシアだった。

──なぁ…聞いたか?

──あ゛ー?なんだぁ?

──龍の国の王がついに倒されたらしいぜ。

──あ゛ー……あの堕ちた賢王な………あ゛!!!?な……本当か!!?ついに?

──あぁ。だから……ほら…最近戦争が増えたろ。──確かに…で…息子が跡を継いだのか?

──それがどうも違うらしいぜ。

──?普通子供が継ぐじゃねぇか

──なんだか前に追い出された姫?だかなんだかが戻ってきて、そいつが継ぐみてぇだぜ。なんか皇子は王と死んだ?って聞いたなぁ。

──へぇ…じゃぁ次は女王…

「その話、本当!!?」

今まで話をしていた男二人は、唐突に割って入ってきた、シアに目を見張っている。

「皇子が死んで、姫が継ぐって話、本当?」

シアは真剣そのもので二人の男の顔を見据えている。

「あ…いや。聞いた話だ…。でも、そいつは確かな情報だと言ってたぜ。」

シアは追及の手をゆるめない。

「なぜ皇子が死んで姫が生きているとわかるの。逆かもしれないじゃない。」

男は困った表情になった。

「俺に言われたってわかんねぇよ。」

「あなたにその情報を伝えた人物を教えて。」

シアのあまりに真剣な表情に押された男はあっさりと、教えた。名はジク。たいていアパートにいると言うことだった。

「……。おい…シア…あんたが生死を確かめたい人って…お姫さんなのか?」

ディアスは追加で頼んだ焼きめしをもごもごさせながら聞いた。

シアはそんなディアスには振り向きもせずに、足早に食堂から出て行った。ディアスは一人焼きめしをほおばっている。

「おい、兄ちゃん。」

さっきの男がディアスに話しかけてきた。

「さっきの嬢ちゃんは何なんだ?龍の関係者かなにかか?」

ディアスも思案顔になった。

「さぁ〜?俺も良く分からねぇんすよ。」

ディアスはシアが出ていった出入り口を見ながら首を傾げた


シアは食堂を出た後人目に付かない場所を探し、袋の中から水晶玉を出し、語りかけた。

「話は聞いていたわね。ゼノンのジクよ。探して。……あっ…魔力は極力おさえるのよ。」

水晶玉は薄く緑に輝くと、アパートで寝ている、見るからに怪しそうな男の姿を映し出した。

「…よし…アパートにいるわね。」

シアは教えられた道を歩き出した。

アパートについたシアは二階の角部屋に向かった。

「…ジクさん。いらっしゃいますよね。訪ねたいことがあります。出てきて下さいませんか。」

シアは慎重に声をかけた。すると、奥から物音がして、玄関の前に人が立った気配がした。

「…ガキ…?何の用だい?」

「お尋ねしたいことがあります。答えていただけますか。」

「…怪しいガキだな……なんだい…その聞きたいことって?」

シアは一息ついていった

「龍王の国の姫が生きているのは本当ですか。」

返事はすぐに返ってきた。

「ああ。それか。それなら事実だ。」

シアは慎重に聞き返した。

「何故そう言いきれるのですか。」

男は笑っているようだった。

「俺もな、姫が王にとどめをさしたと聞いてたから、龍に殺されたのは、姫だと思ったんだけどな、二日ぐらい前に目撃者がこの町に来てな。龍の牙にかかったのは、皇子の方だったと言い切って、そのまま絶命したんだ。ひどい怪我で逃げてきたらしいが、悲惨だったなぁ。」

「…その方は…名を名乗りましたか?」

「ん?…ん──…いや…名乗らなかったな。」

シアは額に手を当て、思案顔になり、ジクに言った。

「…ありがとう。知りたかったのはそれだけなの。おじゃましてごめんなさい。」

シアはそのままアパートを離れた。アパートからはジクがドアの隙間から、シアを見ていた。


「…変わった色の髪だ…青の髪には魔力が宿るって聞いたけど…」

シアに違和感を感じながらジクは部屋の中に戻った。


──飛那が生きていると言い切って死んだその目撃者…龍王の国からは決して近くないゼノンにわざわざ来たと言うの…?瀕死の怪我を負いながら…?……この話…あまり信用しない方がいいわね……。次の町で、何か知ってる人がいるかもしれないわ…明日はできる限り進まなければ…………

「…って…何してるのよ?ディアス…」

考えながら旅館の食堂に戻ったシアの目にうつったのは、ディアスが食堂でせっせと働いている姿だった。

「お金なら心配いらないって言ったじゃない…」

シアが言い切るより先に、ディアスが叫ぶ方が早かった。

「戻るのがおせぇんだよ!!」

シアは目が点になった。

「え?あ…あらっ…四時間も…過ぎてたのね………」

ディアスも食堂の従業員もシアを睨んでいる。

「わっ…分かってるわよぅ…睨まないでよ…お金ならあるから……はい…迷惑料ってことでお釣りはいらないから。さ、ディアス行きましょ」

そう言ってシアが出したのは、一枚の金貨だった。ディアスにその価値は分からなかったが、従業員の顔を見れば、一目瞭然である。次の日には、従業員達の態度が一変したことは言うまでもない。

それは二日かけて着いた町でも、シアが金貨を出すたび、同じ事が起こった。

「シアって…金持ちだな…」

シアは涼しい顔をしながら町中を歩いている。

「お金ならあるわ。実家からもてるだけ持ってきたんだもの。」

「…いいのかよ…両親…困ってんじゃ…」

「心配ないわ。両親は行方不明だから。言わなかった?私元々両親を探す旅をしてたのよ。その途中…私がかなり荒んでるときに飛那に会ったってわけ。」

ディアスはシアの話を真剣に聞いている。

「飛那は…本当にすごいの。時には優しく、時には厳しく私に世の中を教えてくれたわ。…飛那以上に素晴らしい師はいない。」

この町に着いてから既に二日経つが、飛那の生死に関する信用できる情報はほぼゼロに等しかった。

「……シアは本当に飛那さんが好きなんだな。」

シアは泣きそうな顔をながら頷いた。ディアスはそんなシアの頭を優しく叩いた。

「飛那さん生きてるといいよな。」

シアはうつむいたまま頷いた。目からは光ものが落ちていた。

二人は、飛那の生死の情報を求めて、また聞き込みを再開した。





──ねぇ…飛那……いつまで…寝てるつもり?君にはやらなきゃならない事があるでしょう?……早く…私の元に加護を取りに来てよ……あぁ…早く会いたいよ…私の大事な大事な主を殺したあなたに───



飛那が目を覚ました時、近くに、飛竜がとても心配そうに座っていた。


「…飛…竜…?今は……夜なの…?」

飛竜は泣き笑いで、飛那の手をとり言った。

「…姉上…今は…朝です。姉上…僕…朝に起きたんです。」

飛那は優しい笑みを浮かべた。

「…そう…良かった…。良かったわ…成功して…」

「…はいっ…姉上…本当にありがとうございます…僕の命も…………父上も…」

飛那は飛竜を見つめた。

「姉上…加護を…取りに行きますよね……?」

飛竜はおずおずと飛那を見た。小さな体がより小さく見えた。

飛那は視線を飛竜から天井に移し、つぶやくように言った。

「…行くわ…龍騎に…加護を…返してもらいに…」

飛竜は泣きながら飛那のその横顔を見続けた。自分の姉の………決意の顔を。

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