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龍王の加護  作者: 仙幽
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第十三話:出会い

すみません…なんだか長くなってしまいました。

白の汚れたローブを着て、額には、黒の飾りをつけた15・6歳に見える少女が、道なき道をコンパスも地図も持たずに、一生懸命歩いている。

「ふぅ…ふぅ…。きっついなぁ……確か…龍が泣いたのはこっちのはず…」


ぐにゃり。


「………え。」

何か柔らかい物を踏んだ気がして、少女は下を見た。

自分の靴の下敷きになっていたのは、片手に160センチはあろうかという大剣を持った………小汚い男がうつ伏せに大の字で倒れていた。

少女はしばし、男とその剣を見比べていたが、関わるのは得策ではないと察したのかそのまま、立ち去ろうとした。

少女が男の横を通ったそのとき、


がしっ


「ひっ!?」

少女は男に足首を捕まえられた。

少女は必死にその手を解こうとしたが、男の手はびくともしなかった。

少女が男の手と格闘していると、男が少女の方を、ゆ〜っくり と見た。

「……ほか…ほか…の…ご飯……で…きたて…の…カ…レー…にく…じる…たっ…ぷり…の……さかな…」

「は?肉汁たっぷりの魚?何言って──」

「お肉いっただきまーっす!!!!!!!」

がぷり。

「………………!!!っ…くぉの……へんたーーーーーいっ!!!!!!」

バァチィィィィィン!!!!

少女は自分の足にかぶりついてきた男にフルスイングの平手をぶちかました。

「いってぇぇ〜っ!!!!なぁにすんだ!このがきゃー!!!」

男は起き上がり、怒鳴りつけた。

「…ん…ガキ?」

男は自分よりはるかに小さい少女を目にした。

自分は今、あの鳴き声の主にかぶりついたはずなのに、なぜこんなちっこい少女が目の前にいて、しかも叩かれたのだろう?と男は思った。

「ちょっとあなたね…人の足を噛まないでいただけます!?」

プリプリに怒っているその少女は髪の毛がとても長く、、膝裏まであり、色も薄い青色をしていた。

「それに、私ガキじゃありませんから。これでも、もう、はちじゅ………」


──年の数なんて……何の意味もないわ。

大切なのは自分自身。年の数になんて振り回されることないわ。


少女の動きが一瞬止まった。何か思いを馳せているようだった。

男は不信そうに少女を見上げている

「…?どした?」

「………いや…何でもないわ。」

「…そっか?それならさ……なんか食いもん持ってねぇかなぁ。俺この2日間何もとれなくて、限界なんだ。」

男はなんとともかわいらしい笑顔で少女に頼んだ。少女は驚いたように、男を見た。

「な…この森にはいるときに何か持ってこなかったの!?」

男は笑顔を返した。

「頼むよ。動きたくてももう動けないんだ。」

「…はぁ。しょうがないわね…これあげるわよ。シクイよ。」

男は、クッキーのようなものを受け取った。

「しくい?クッキーじゃねぇの?」

少女はあきれたように男を見た。

「あんな焼き菓子と一緒にしないでよ…。シクイ知らないの?一口食べればお腹を満たしてくれる魔法菓子よ…」

男は不思議そうにシクイを見ている。

「へぇ…魔法菓子ね。じゃ、いただきま〜す」

男は一口かじってもぐもぐしている。

そんな様子の男を見ながら少女は不信そうにしている。

あまり関わらない方が妥当だと感じた少女は早めに話をきりだした。

「さ、それがあればゼノンに着くまでにはもつわ。じゃ私は先を急ぐか…」

「ほんとだ!!!一口なのに腹一杯だ!すっげ〜っ!!ありがとう。助かったぜ。」

「…。いや…気にしないで。じゃ私急ぐから。じゃぁね。」

少女がその場を去ろうとしたとき、男が呼び止めた。

「…そっちはやめた方がいいと思うぞ。」

少女は少し苛つかせながら振り返った。

「なんでよ…私はこっちに用があるのよ。」

少女はかまわず先へ行ってしまった。

男は少女が見えなくなると立ち上がり、空を仰いだ。

「…な〜んか…やな予感するんだけどな…しょうがねぇなぁ…」

男は少女の消えた先に向かって歩き出した。




少女は相変わらず道無き道を突き進んでいる。

と、突然開けた場所にでた。

それはとても山林とは思えない程、木々草花がない。茶色い土と石ばかりが目に付く。

少女はこの場所を知っていた。


──死の予感──



少女は自然と後ずさりをしていた。

息が上がり汗がにじみ出る。

あの開けた場所が木々で見えなくなるまで下がると、自然と深く息を吐いた。

だがまだ安心はできない。

少女は振り返って走ろうとした。が、目の前には、少女が恐れていたものが立っていた。

黒い……白い爪と獰猛な白い牙が妙に目に付くそれは、ディアスと呼ばれる……熊に近いが似ても似つかない『妖獣』だった。

ごく一般の人間にかなう相手ではない。出会ったら………最後である。

少女は自分よりはるかにでかいディアスが爪を振り上げ自分に向かって振り下ろそうとしているのに反応して、頭を抱えしゃがみ込もうとしたとき、体が宙に浮いた。

「…っ」

「あっ……えっ?あなた…何でここに……」

さっきの男が自分を抱えて、ディアスの一撃から救ってくれたのだ。

「さっきの飯の礼してなかったじゃん?ちょっと下がってて。あぶねぇから。」

少女は言われるままに、下がった。木に隠れながら男を見守った。

男は大剣を背に担ぐように構えた。

ディアスは素早く男に向かって突進してきた。

ディアスは自分の間合いに入り自慢の爪を男に放ったが………男が消えた。

ディアスが男を探していると、後ろから衝撃が走った。

ディアスは後ろを向いた。下の方に目をやると、男が自分の背に大剣を突き刺していた。

ディアスはそのまま絶命した。

少女は驚きのあまり、体が硬直してしまっている。

ディアスに勝ったのを見たのは…何年ぶりだろうか。

あの人もたいそう軽やかにディアスを倒していた。そして決まって同じセリフを言った。

「やった!飯ゲット〜弱肉強食万歳〜」


──さぁ、食事にしましょう。弱肉強食は自然の摂理だからね。


男は少女の方を向いて笑いかけた。

「これって食えるよな?あんたも食うだろ?」


──食べるよね?シクイだけじゃ、栄養偏るわよ。


男は、思いもよらない反応をした少女に驚いたように、すまなそうに、言った。

「…怖かった?」

少女は男を見たまま涙を流していた。

「行…かなきゃ…」

男は少女に近づいた。

「…どこへ?」

「…ひ……なに…会いに……」

男が大好きな知り合いにかぶる。

少女は急に歩き出した。男は少女の前に立っった。

「少し、落ち着いた方がいいんじゃねぇかな。食ってけよ。さっきの礼もかねて。な?」

少女は取り乱しているようだった。

「行かなきゃ!行かなきゃ!龍の国に!!行かなきゃ!ひな……!離して!!」

男は少女の頬を軽く叩いた。

「落ち着けって。な?」


「………」

「今火焚くからさ。座ってな?」

「……」

少女は素直に座った。男は手際よく火をおこし、ディアスの肉を焼き始めた。

少女が男に話しかけた。

「さっきは…ありがとう…」

男は笑顔で少女を見た。

「お互い様じゃん?俺、餓死寸前だったし。ホントありがとな。」

少女はふと笑った。初めてこの男を好ましく思った。

「もういいかな。なぁ、あんた旅してるんだろ?塩とか持ってねぇ?」

「持ってないわよ…旅…ってわけじゃ…ないし。」

「へぇ?どっか行くんじゃねぇのか?」

少女は少し考えるようにした。

「…行くわ。知り合いの…生死を確かめに。」

男の顔がこわばった。

「……生死って…」

「…死んだ…はずなんだけど…でも…様子がおかしいの。」

「死んだ…はずって…確認したんか?」

「……それを……確認しに行く途中だったのよ。」

少女は真剣そのものだった。

「私も…そんなに時間がないの。早く…行かなきゃ…。」

「どこまで行くんだ?」

「…龍の国よ。」

男はすっとんきょんな顔をした。

「り…りゅう…?」

少女は肉を食べ終わると、その場を立った。

「なんだ?どうした?」

少女は男に笑いかけた。

「お肉ありがとう。私行くわね。」

少女女は歩き出した。男は慌ててそれを止めた。

「お…おい!!まてって!!さっきみてぇなのにまた会ったらどうすんだよ。俺も行くよ。」

少女は驚いて俺を見た。

「あなたには…関係ないのよ…?なんで?さっきも…助けてくれて…」

男は困惑を露わに、当たり前みたいに、少女に言った。

「あんたが最初に俺を救ったんだぜ?恩は返すのが当たり前じゃねぇか……なんでそんなに不思議がるんだ?変わった奴だな。」

最後は笑う風だった。

少女は突然笑い出した。

「……なんだぁ〜?」

少女は笑い続けている。

「ごめんごめん。あははは。あまりに……似てて…」

男は何も言わず少女をみている。

「私の大好きな人に。姿形じゃなくて…雰囲気が。」

男は軽く笑った。

「ねぇ、あなた名前は?一緒に旅するなら名前くらい知っとかなきゃ」

男は笑いながらも困ったような仕草をした。

「…悪いな。俺、名前忘れたみたいなんだ。」

少女は首を傾げたが、名前を知られたくない人もいることは少女も知っていたので あえて追求しなかった。

「そうなの?じゃぁ、思い出すまで、私があだ名を付けてあげる。」

少女は考えるように手を額に当てた。

「……そうね……ディアスは?さっきあなたが倒した、妖獣の名前よ。」

男は笑った。

「良い名だな。気に入ったよ。で、あんたの名は?」

「私はシアよ。シア=ルシケンス。道は私が知ってるわ。行きましょ?ディアス。」

二人は笑い、妖獣ディアスの巣を横切り、森の奥に姿を消した。

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