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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ドラゴンメイデン #4~ある男の夢?~:大魔女の最弱夫外伝

作者: 武無由乃
掲載日:2026/07/25

 僕は——、物心ついたときには親が居なかった。

 いや、親として育ててくれた女性(ひと)は居たが——、


 ——彼女は僕を憎んでいた。


「……早く仕事に向かいなさい……。今度粗相をしたら……、()()だけでは済まないわよ?」

「……はい……リアンさん……」

「……」


 その女性(ひと)は——その日も僕を見下ろしながら冷酷に言い放つ。

 ——汚れた血……、

 ——友人の娘を死なせた子ども……、


 ……その()()()()こそ僕の母なのだが……、

 僕は物心つく頃には——、


【……お前の母親を死なせた原因はお前自身だ……】

【……お前は呪われた子どもだ……】


 ——そうその女性(ひと)に言われ続けていた。


 でも……、初めこそそれを信じて苦しんでいた僕だけど——、

 ——今の僕にはそれが間違いだと理解できる……。


 なぜなら——僕の名前は——■■……、

 それは……僕の母が僕につけてくれた名前なのだ。

 ——その女性(ひと)は一度も僕のことをそう呼ばないが……、ある日見つけた母の日記に書かれていた内容だった。


 ……まあ、それが読めるようになったのは……、()()()()()()()()()事ができるように……と、文字を読めるように勉強させられてからだけど……。


 ——その女性(ひと)は……、多分……、悲しかったのだと思う。

 ()()()()()()()()()()()()——、僕はそう考えた。

 ——たしかに僕は……汚れた血を持った……存在だった。


 その時の僕は——果てのない闇の中をただ歩き続けていた。

 僕を悲しくも憎み続けるその女性(ひと)に言われるままに——、身を売る毎日……。

 お前は汚れているからこそ……、汚れた世界こそ相応しいのだ……と言うように。


 ——でも、唐突にその日常は終わりを告げる。

 ある日——、()()()()()が見つかって、そして——、僕はその()()()()()に私兵を差し向けられたのだ。

 僕はそうして追われて……、路地裏で血にまみれた。


(……そうか……、僕はこれで終わるのか……)


 ただその時の僕は——やっと苦しみから逃れられると喜んでいた。

 苦しみしかないその生を終える時が来たのだ——。

 ——しかし、せっかく僕は母に■■なんて名前をもらったのに……、結局僕は……。


 ——苦しみから解放される安堵と、言いようのない悲しみが、僕の血とともに流れ続ける。

 そんな僕にとどめを刺すべく——、その私兵は剣を構えた。


 ——が……、


「ひいいいいい!!」


 気がつくと……、恐怖に駆られた私兵達が慌てて逃げ去ってゆく姿が見えた。

 そして——、僕は——、


 ——生まれて初めての……、恋をした。


「……まさか……、あの子の望んだ()()()が、こんな事になるなんてね……」

「姉さま……、あの時無理にでも二人を……」

「……エストレーラ……。それよりもその子の手当を……」


 そこに居たのはあまりに美しい【魔種】の令嬢。

 漆黒のドレス——、銀髪に赤い瞳——、竜角に竜尾——、そして漆黒の皮膜翼——。

 ——その容貌がそっくりな、双児の【玄鱗龍姫(ドラゴンメイデン)】。


(……これって……、もしかして死後の世界? こんなきれいな女神様がいるのか? すごい……)


 上手く回らぬ頭で勝手な解釈を思考する僕だが……、直ぐに僕が死んでいないことに気がつく。

 そして——、


「……え?」


 僕はその双児の【玄鱗龍姫(ドラゴンメイデン)】に支えられて空へと舞い上がった。

 直ぐに街明かりは遠くなり——、

 僕はそうして空の彼方へと飛んでいったのである。



 ◆◇◆



 それから数ヶ月後——、


「紅茶が入りました……ルア様……」

「うん……ありがと■■……」


 僕は双児女神——、ルア・ベレーザ様とエストレーラ・ベレーザ様が住まう霊峰の宮にて使用人として働いていた。

 別に彼女らに命令されてそんな事をしているのではない。自分から望んで働いているのだ。


「ふんふふん~~」


 僕は今日も楽しげに仕事をこなしてゆく。

 そんな僕に少し笑いながらエストレーラ様が話しかけてきた。


()()……仕事に慣れてきたみたいね?」

「あ! エストレーラ様!! はい!」


 嬉しそうに返事をする僕に、小さくため息を付いてエストレーラ様は言った。


「……別に、そんな事しなくてもいいって言ってるのに……、ホント困った下僕ね……」

「それは……、助けて頂いたお礼ですし……」

「でも……貴方のあの境遇を……結果的にとはいえ放置してたのは私たちよ?」


 その少し悲しそうな目に僕は笑顔で答える。


「……いいえ……、誰のせいでもありません! そして僕はこうして楽しく元気に過ごしている!! ならばもういいのです!!」

「……」


 その僕の言葉に一瞬驚いてから……、小さくエストレーラ様は笑った。


「……本当に……貴方は……、あの二人の孫なのね……」

「それって……」


 少し驚きの目を向ける僕に、エストレーラ様は頷きながら言った。


「……人々の悲しみを止めるべく、()()()()()に立ち向かった二人……」


 ——あの()()()()……。


 その時、僕は——、僕の母の両親の事を知った。



 ◆◇◆



 ——()()()()……、

 ——そうであってほしかった夢……。


 ——()()()()……、僕にそんな救いなどない。


 ——()()()()()()()()()()()


 ——僕は母に憎まれていた……、()()()()()()()()()()()()

 ——だからこそ母はその女性(ひと)に僕を育てさせた……。


 ——()()()()……、僕は汚れた上に望まれなかった子ども。


 ——()()()()()()()()()()()


 ——世界は苦しみしかなく……、

 ——そんな苦しみからの解放は……【焦魔帝グラムザグ】様の糧にする事は正しい行為だ……。

 

 ——()()()()……、僕は双児女神などとは出会わなかった。


 ——()()()()()()()()()()()



 ——そうだよ……、■■……、お前は母親に憎まれて、そして子どもを虐待するカス女に育てられて……、この世界の真理を悟ったんだ!

 ——だから行こう! この私……、君の父親である——、


 ——■■■■■・■■■■■■とともに……。



 僕は()()()()()()——、

 

 遥か時の果てに消えた……、

 ……()()()()()……、もはや思い出せない——、

 ()()()()()()()()()()()()()を——、


 ——微かに聞きながら……今日も眠りについた。

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