第1話「響け爆音! 筋肉とフリルのラプソディ」
※本作は「爆音×戦隊×ギャグ」をテーマにしたフィクションです。
シリアスな戦闘描写もありますが、基本的には勢い重視で進行します。
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──シャカ
世界から、音が消えたはずだった。
だが瓦礫の中で、“それ”だけが鳴っていた。
「笑い声がねぇ世界なんて……間違ってるだろうが!!」
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世界は「静寂」という名の絶望に沈みかけている。
宇宙の彼方より来訪した悪の帝国『サイレント』
彼らの目的は、地球上のあらゆる「音」を消し去ること。音楽、笑い声、雑踏、そして人々の心のざわめき。それらすべてを「不快なノイズ」として排除し、完全なる無音の墓場へと作り変えること。街は、まるで静止画のように冷たく静まり返っていた。
「ひ、ひとまず退却だ! グリーンのシールドじゃこれ以上もたない!」
「嘘でしょ!? 私の特製防護服が、一瞬で音響中和されちゃうなんて……!」
崩壊した市街地の片隅。後に『スマイルダンサー』と呼ばれることになる若者たち──冷静沈着な頭脳派・ブルーと、衣装・開発担当のピンク、そしてお調子者のグリーンは、サイレントの先遣隊が放つ「無音の衝撃波」の前に圧倒されていた。
「ククク……無駄だ。すべての音は我が帝国の前に平伏す。この星に、二度と不快な『声』は響かない」
漆黒のアーマーをまとったサイレントの怪人が、冷酷に右腕を掲げる。世界が永遠の暗黒へ沈もうとしていた。
──シャカ
静寂の世界に、およそ戦場には似つかわしくない、乾いた軽快な音が響いた。
──轟 烈火
その男は、笑っていた。
はち切れんばかりの大胸筋。
丸太のように太い二の腕。
地響きを立てそうなほど強靭な下半身。
誰もが圧倒されるほどの「筋肉の塊」
しかし、その圧倒的な肉体とは裏腹に、彼の戦闘服には、首元、両肩、そして袖口にかけて、驚くほどフワフワとした、純白の「フリル」が何重にもあしらわれていた。
シャカ──
「な、何の音だ……? 我が静寂の結界を破り、音を鳴らす不届き者は!」
怪人が周囲を見回と崩落したビルの瓦礫の向こうから、一人の男がゆっくりと歩いて現れた。
「えぇ……何あの人……ムキムキなのに、フリル……?」
誰かが思わず呆然と呟く。
烈火は、その恐るべき巨躯を揺らしながら、両手に握った一対の「マラカス」をシャカシャカと振り、不敵に笑った。
「ハハハハハ! 随分と静かじゃねえか、悪党ども! お前らのせいで、街の子供たちの笑い声が聞こえねえ。……そんな冷え切った世界、この俺が許さねえッ!」
2
「ふん、ただの狂人が。消し去ってくれる!」
怪人の合図とともに、無数の戦闘員『サイレント・ソルジャー』が一斉に烈火へと襲いかかる。
「よっしゃあ! 俺のステップを拝ませてやるぜ!!」
同時に、彼の胸のチェンジ・ブレスが黄金に輝いた。
「この世界を、もう一度“笑えるステージ”にしてやる!」
「変身!!」
光が弾け、烈火の全身が深紅のスーツに包まれた。
大胆に開いた「口元」から、真っ白な歯と、満面の笑みを覗かせる。そして、その赤い戦闘服の腕や肩には、やはりあのボリューミーな白いフリルが、これでもかと主張するように波打っていた。
「『爆音戦隊スマイルダンサー』──スマイルレッド!!
さあ、お前らも一緒に踊ろうぜぇぇぇ!!」
レッドは、凄まじい脚力で大地を蹴ると、そのまま激しいサンバのステップを踏みながら戦闘員の渦へと飛び込んだ。
シャカシャカシャカシャカシャカシャカッ!!!
レッドがマラカスを猛烈にシェイクする!
その瞬間、マラカスから放たれた目に見えるほどの「大爆音の衝撃波」が、周囲の戦闘員たちを次々と吹き飛ばしていく。悪の帝国の無音結界が、レッドの刻む生命のリズムによって、内側から粉々に打ち砕かれていく。
「すごい……! サイレントの力を音波で相殺、いや、圧倒している!?」ブルーが目を見張る。
しかし、その直後だった。
「がはっ……ふ、ハハハハハ!」
マラカスを振るたびに、レッド自身の身体が激しく痙攣した。
彼の武器であるマラカスは、あまりにも出力が高すぎるため、放った衝撃波の半分が、反動として自分自身の肉体にも突き刺さる「自傷兵器」だったのだ。
「レッド!? 自分で自分の衝撃波を喰らってるじゃない!」
ピンクが悲鳴を上げる。
だが、レッドの肉体が崩壊することはなかった。彼がマラカスを振るたびに、その両腕と肩にある「白いフリル」が、バババババッ!と風圧で激しく波打ち、火花を散らしたのだ。フリルの無数の「ひだ」が、衣服にかかる凄まじい衝撃波を空気中に分散し、受け流していく。
「フリルは、ただの飾りじゃない! 自分の衝撃波の反動を逃がすための、超高密度な『衝撃吸収装甲』なんだ!」ブルーが叫ぶ。
「ハハハハ! フリルがなきゃ、腕が一本ずつ消し飛ぶところだぜ!!」
レッドは口元から一筋の血を流しながらも、満面の笑みで叫び返す。完全には防ぎきれていない。戦闘服のフリルの先端は、徐々に衝撃波の熱で焦げ、ボロボロと千切れていく。蓄積していくダメージ。
それでも、レッドは笑う。
「痛え! 猛烈に痛えぜ! だがな……俺のステップは、みんなの笑顔を取り戻すまで止まらねえええ!!」
狂気とも言える熱血。圧倒的な漢の執念。ドン引きしながらも、その背中に言葉を失うブルーたち。
3
「おのれ、ノイズめ! 私自らが消してやる!」
焦った怪人が、最大出力の「消音破壊波」を放つ。周囲の空気が一瞬で凍りつくような、完全なる静寂の呪いだ。
「関係ねえ! 俺たちの音は、誰にも消させねえッ!!」
レッドは満身創痍の身体を無理やり駆動させ、最高速度のステップを踏む。千切れかけるフリル。悲鳴を上げる筋肉。しかし、彼の心臓の鼓動は、何よりも高く、熱く鳴り響いていた。
「これで終わりだッ! 一撃必殺・スマイルスマッシュ!!!」
レッドは、残されたすべての力を両腕に込め、怪人の胸元へ飛び込むと、一対のマラカスを同時に叩きつけた。
ズドォォォォォォォンッ!!!!!
レッドの肉体から放たれた最大級の爆音衝撃波が、怪人の巨体を完全に貫いた。怪人は爆発四散し、街を覆っていたサイレントの結界は、ガラスが割れるように木っ端微塵に吹き飛んだ。同時に、世界に「音」が戻ってくる。
風の音。鳥のさえずり。そして、何より、遠くから聞こえる人々の「あ、声が出る!」という歓声と笑顔。
「……ハハ、ハハハハ! やった、ぜ……」
スマイルレッド──轟烈火は、両腕のフリルを完全に喪失し、ボロボロになりながらも、その場に仁王立ちのまま、マスクの奥の口元で、太陽のように眩しく笑っていた。
「おい、大丈夫かレッド! しっかりしろ!」
「あぁ……みんな、無事か? ……いい風の音が、聞こえるな」
そう言うと、烈火は限界を迎え、笑顔のままドサリと仰向けに倒れ込んだ。
「心拍数低下! すぐに秘密基地へ運ぶわよ! 博士、医療班の準備を!」
ピンクが通信に叫ぶ。
ドン引きするほどの無茶苦茶な戦闘。しかし、彼らの胸には、確かにこの「筋肉とフリルの漢」への、熱い信頼の火が灯っていた。
だが、サイレントはまだ終わっていない──
次の“静寂災害”が、すでに世界各地で動き始めている
(第1話・完)
『爆音戦隊スマイルダンサー』
──次回、第2話「不揃いなステップ! 絆を繋ぐ最初のフリル」
スマイルダンサー、始動──!




