欲しがり妹と抗いの姉
(間違って連載にしていた&タイトルからして間違えていたので投稿しなおしました)
「ねえ、お姉さま……ちょうだい?」
サブリナの手が私の首元に伸びる。
お母さまの形見のネックレスに、その指先が触れる寸前―――私の喉から叫びが迸った。
「イヤアアアアアアア!!!!」
☆
お母さまが亡くなった。
もともと、そこまでお身体の強いひとではなかった。風邪を拗らせて、あっという間に儚くなられた。
その僅か数日後。哀しみに暮れる私の前に、お父さまは……信じられないことに、どこぞの愛人に産ませたという娘……私の妹にあたるという娘、サブリナを連れてきた。
「この子の母親も死んでいる。母を亡くした姉妹同士、仲良くしてやってくれ」
お父さまは目を逸らしながら、私に告げた。多少良心の呵責はあるらしい。お父さまは婿養子で、何ら権限などないというのに。ただ、私が未成年である限り、後見人という立場ではある。この国では、未成年が家を継ぐ場合、血族か姻族の成人である後見人がいないと取り潰しになってしまう。そして、母方の親戚は……いないのだ。
「よろしくお願いしますぅ、お姉さまぁ」
だらしなく間延びした話し方に嫌悪を覚える。私の爪先から頭まで、舐めるかのような無遠慮な視線にも吐き気がしそう。
「あらぁ??? あらあらあらぁ??? お姉さまぁ、そのネックレス、素敵ねぇ?」
「そ、そう、ありがとう」
「私、欲しいなぁ~?」
「似たものなら、売っているお店を教えてさしあげます」
「もぉ、物分かり悪いなぁ~~~??? 私ぃ、それが欲しいの!」
お父さまは何も言わない。これが、お母さまの形見だと知っているのに。
「これは差し上げられません」
「欲しいの!!」
ドスドスと床を踏みしめるサブリナ。
「お願い、わがままを言わないで。これは大切な……」
「ねえ、お姉さま……ちょうだい?」
サブリナの手が私の首元に伸びる。
お母さまの形見のネックレスに、その指先が触れる寸前―――私の喉から叫びが迸った。
「イヤアアアアアアア!!!!」
腹の底から気合一閃!!
吾はサブリナのなんら鍛えておらぬ生っちろい腕をむんずと掴み、懐にするりと潜り込むとえいやと彼奴の身体を背負い投げた!
「ぐぎゃぴっ!?」
脆弱! 脆弱! 受け身も心得ぬとは!
「ア、アレクサンドラ!? ちょっとやめて!? 一応一般人なんだ!!」
「知らぬ! 存ぜぬ! 降りかかる火の粉は払うのみ!!」
父者の制止なんたるものか!
「吾がいもうとを名乗るのであれば、よもや吾に喰いつくされる覚悟が無いなどとは言わせぬぞ!!」
「そんな覚悟は普通ないから!?」
「黙らっしゃい!」
掴んだままの腕を起点に更に左右に投げ、叩きつけ、叩きつけ、叩きつける!!
「ぐぺっ!? ごぎょっ!? ぎょぱぁ!?」
「ふはは!! 惰弱! 貧弱! 脆弱!」
「もうやめたげてーーー!?!?!?」
「まだまだァッッッ!!」
南無三!
爆散!
南無爆散!
サブリナはすっかり襤褸切れ虫の息になりおった。吾に盾突いた割に、つまらぬ。
「父者よ。どういうおつもりか? 何故かような弱者を吾が館に招き入れたか」
「そ、それは、その、どちらも母親が死んで大変だろうし、どちらも私の娘だから、あわよくば仲良くなってほしいなって……」
「で、あるか。で、あるならば。多少は躾を施しておくべきであったな! かような無礼千万たる野良豚、ここまで醜く育て上げるのもある種見事な手腕といえよう!」
「わ、私もここまで酷いとは思わなくてぇ……」
野良豚がふごふごと吾に吠えている間、父者は驚きと恐怖で固まっておった。まったく、政略上の婚姻とはいえ、母君の苦労が偲ばれるというものよ。
「言語道断! 父者、後見人など知らぬ! 即刻縁を切り申す! この領地から出ていくがよい!!」
「そ、それは法律が……え、えへへ」
「相分かった! されば戦じゃ!! 爺!!」
「はっ!!」
歴戦の古強者たる爺が無音で傍に控える。相変わらず気配を断つのがうまい。吾には過ぎた家臣よ。
「かような横暴悪逆無道を赦す国は、必要か!?」
「否!!」
爺をはじめ、あらゆる場所に潜んでいた吾が家臣たちが集まる。よい家臣に恵まれた!!
「吾らフーマ家は、かような国のために古から命を賭して参ったのか!?」
「否!! 断じて否!!」
「然らば! 忠臣として!! この在り様を変えねばならぬ!!」
「左様!!」
「では征くぞ!! 荒苦惨怒羅・風魔、此処に在り!! 皆の者、武器を取れぃ!! 合戦じゃーーー!!!」
「応ーーー!!!」
☆
「と、いうわけで、千年前にこのフーマ国ができたのよ」
「わぁすごいや!」
「おーい! 建国ごっこしよー! 俺アレク様ー!」
「ずるいぞ! じゃあ俺、爺ー!」
(END)
すごくたのしかったです




