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次の日。

朝、シリルが学園に行ったらジョンが話し掛けて来た。

彼は「リリィ嬢の事だが」と言って話し始めた。

「アンドレアの奴が、『ロメリア嬢に誘われて街に買い物に行った』と言ってしまって……。きっと、帰りの馬車だったのじゃないかな。送って行こうかと言ったら『大丈夫です』と言って出て行ってしまったのだが」

「え?」

「まさか、歩いて帰ったって事は無いと思うけれど……。お前、リリィ嬢の婚約者だろう? 確かにロメリア様のサポートも大切だが、言いなりって言うのもどうなんだ? どう考えたってリリィ嬢を蔑ろにしているぜ」

ジョンは言った。

「リリィは分かっているから大丈夫だ」

シリルはあっさりと言った。

その言葉にジョンは呆れた顔をした。


「お前なあ……。リリィ嬢は領地から出て来たばかりだろう? まだ3か月だ。心細いと思わないのか? お前がロメリア様とランチを取っているからリリィ嬢はたった一人でランチを食べているんだぞ? 知っているのか? 彼女が可哀想だと思わないのか」

シリルはちょっと眉を上げた。

「一人で? 何で? 友達は?」

「そんなの俺が知るかよ。何で婚約者であるお前が知らないんだよ。おかしいだろう?」

「……仕方が無い。ロメリア様が優先だから」

「そうか。俺はもう知らんからな。婚約解消をされても」

「そんな事は有り得ない」

そう言って笑ったシリルにジョンは腕を組んでむすりとした顔をした。



昨日はロメリアにねだられて街へ出掛けた。

滅多に無いが、もしもリリィが馬車に乗り損ねていたら困ると思って図書館へ向かった。

司書に聞いたら、本を返して帰ったと言った。

だから帰ったとばかり思っていた。

失敗したなとシリルは思った。

閲覧室を見に行けば良かった。



昨日は雨も降っていた。

どうやって帰ったのだろう。まさか歩いて帰るなどという事は……。

幾らリリィが引っ込み思案だと言っても、誰か知り合いに頼るとか位は出来るだろう。

もう15歳なのだから。


そうして2年の教室へ向かったら、リリィは風邪をひいて休んでいるという話だった。



◇◇◇◇


その日の放課後、シリルはリリィの家を訪れた。

授業が終わると学園から直接やって来たのだ。

花束を持ってやって来た。


「風邪で休んでいると聞いて……会う事は出来ますか」

シリルは言った。

「熱があるから無理ね。昨日雨に濡れて帰って来たの。あなたはいなかったのですってね。

夕方、川を眺めていたら傘を落としてしまったって言っていたわ。……全く、相変わらずの子で、私は心配ばかりしているわ。ずぶ濡れで一人で歩いている所を、何と言ったか、……そうそうレナード様と仰る方が見掛けて馬車に乗せて連れて来てくださったのよ」

ダリアはお茶を入れながら言った。



「歩いて帰ったのですか? 誰にも頼まず?」

シリルは返した。

「あの子は人にそんな事を頼める子じゃないわ。そんな事はあなたも知っているでしょう? それでなくても領地から突然王都の学園に編入して委縮しているのに……。ねえ。シリル。あなたはちゃんとあの子と話をしているの? 学園であの子を守ってあげているのかしら?」

「あ、……ええ」

シリルは曖昧な返事をする。


「シリル。あの子最近すごく元気が無いの」

ダリアはそう言ってシリルを見た。

「私が聞いても何も言わないし……平気だって笑うけれど、すごく寂しそうな笑顔なの。私、心配なのよ」

「……」

目を逸らせたシリルを非難する目でダリアは見る。


「……もう帰りの馬車は頼まないわ。ロッシュ家の方々がそう言うからそうしたのだけれど。馭者に待ち合わせの場所にいなかったら図書館に行くように言って置いたから、もう結構よ」

ダリアは言った。


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