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リリィは早めの時間に家を出て行く。

何故なら馬車が混むからだ。

学校の少し手前で下ろしてもらって、のんびり歩いて行く。


と、横をシリルの馬車が通り過ぎて行った。

門を入った所で馬車が止まってシリルが下りて来た。ドアに向かって手を差し出す。

金色の髪をふわふわとさせ、優雅な仕草でロメリアが下りて来た。


リリィは立ち止った。

鞄の中身をチェックする振りをして背中を向ける。

「あのお二人、ご一緒に登校されているのね」

「ロメリア様の馬車が壊れてしまったと言う事ですわ」

「馬車なんか買えば宜しいのに。ジャニス国の宰相の御令嬢ですもの、お金は捨てる程お持ちでしょうに……」

「シリル様とご一緒したいのでしょうね」

令嬢達がそんな事を言いながら歩いて行く。

「それよりも昨日のお二人のダンスをご覧になったかしら?」

「見ましたわ。すごく情熱的なダンスでしたわね」


思わずリリィは天を仰ぐ。

と、その背中をぽんと叩かれた。

振り向くとそこにはミーナ・シャロンが立っていた。



◇◇◇


ランチの時間になってリリィは食堂へ行った。

と、「ここ、宜しいかしら」とロメリアの声がした。

リリィは顔を上げた。

シリルとロメリアが立っていた。


にっこりと頷きながらも、心の中ではうんざりとしていた。

この二人のツーショットはいい加減勘弁して欲しかった。

二度と見たくない。

「折角時間をずらして来ているのに……」

そう思った。



地震の時にリリィが何も言わずに立ち去った事を謝るだろうと待っていたが、何も言わないのでロメリアは自分から言った。

「リリィさん。地震の後、黙ってどこかへ行ってしまったから心配したのよ」

「あら、済みませんわ。ロメリア様。紅茶がばしゃっとスカートに掛かってしまったので、すぐに洗面所に向かいましたの。熱かったから火傷になっていると困ると思いまして。……御挨拶も無くて申し訳がありませんでした」

リリィは笑顔でそう言った。

「火傷……。大丈夫だったのか?」

シリルは言った。

「ええ。すぐに冷やしたから平気よ」

リリィはにっこりと笑った。

「お洋服も保健室で貸して頂いたの。だってスカートがびしょ濡れなのですもの」

「そうか。……火傷をしなくて良かった。俺は昨日ずっと君を探していたのだけれど、午後は一体どこに行っていたのだ?」

「ちょっとお友達と会っていたの」

「授業を休んで?」

「そうよ」

「誰と……?」

リリィはちょっと視線を宙に浮かせた。

「図書館繋がりの……あなたの知らない人よ」

つまらなそうにそう答えた。


暫く無言で食事をする。


「リリィさん。昨日の放課後、音楽室へいらっしゃったかしら?」

ロメリアがプレートの肉を切り分けながら言った。

リリィは平静に返す。

「ええ、人が集まっていたから何かあるのかなって思って、行ってみたらお二人がダンスの練習をされていましたわ」

「どうでした。私達のダンス」

「息がぴったり合ってとても素敵でした」

リリィは微笑む。

ロメリアは嬉しそうに笑う。

「でしょう? 有難う。シリルとは初めてダンスを踊ったけれど、初めてとは思えない位、スムーズで、私、すごく楽しかったわ。私達、きっと相性がいいのね。……リリィさん、シリルとダンスは?」

リリィはちらりとシリルを見る。

シリルは無言でパンを千切って食べている。

「シリルと踊ったのはもう随分前です。……子供の頃かしら?」

「違う」

シリルが口を開いた。

「俺が学園の二年生の時に花祭で踊った。バーベナ伯の城で。星祭も風祭も踊った」

「ああ……そうだったわね」

リリィはくすくすと笑った。

「もう2年も前だわ。……息も合わないかも知れないわね」

「夏フェスのダンス、練習をしなくていいの?」

ロメリアが尋ねた。

「そうですね。その内……どこかで時間を取って」

シリルがプレートに目を落としたまま言った。

「いえ、大丈夫ですわ。私、兄が帰って来ていますから兄と一緒に練習します。シリルはロメリア様のサポートで忙しいみたいですから」

「……」

リリィの言葉にシリルは手をとめてリリィを見た。

ロメリアは不思議そうにリリィとシリルを代わる代わる見ている。


「では、お先に御免遊ばせ。次の授業がありますの」

リリィはそう言うと席を立った。


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