表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/55

唖然とするリリィの耳にロメリアの言葉が届いた。


「へえ。政略結婚なのね。ふーん。愛の無い結婚なのね。でもまあ、貴族の結婚なんてみんなそんなものよ」

「政略婚でも無いです」

シリルの声。

「じゃあ、何なの?」

「だから親が決めた結婚」

「……」

「ねえ。じゃあ、今度、紹介してくださる? そのご令嬢。お幾つなの?」

ロメリアの明るい声。

「学園の2年生です。ロメリア様の一つ下です。でも、ロメリア様に紹介する程の子ではありませんので」

「ひどーい!自分の婚約者をそんな風に言うなんて」

ロメリアがキャッキャと笑う。



アイスドールと言うのは間違っているのでは?

このはしゃぎ様。全然アイスじゃない。


ああ、でも、きっと相手がシリルだからアイスドールもアイスで無くなるのね。

すごく楽しそう。

羨ましいなあ……。

リリィはそう思った。



「いえ、事実ですから」

「ねえ。じゃあ、今度3人で一緒に勉強をしましょうよ」

「それは無理です。一緒になんて」

「ふふふ。シリル。ねえ、ちょっと耳を貸して……内緒の話があるの」

ロメリアが走り寄る足音が聞こえた。何かを囁いているみたいで何も聞こえなかった。

「じゃあね!! 待っているから。シリル。大好き!」

ロメリアの明るい声が響いた。



◇◇◇



気が付くとぼーと階段下に体育座りで座っていた。

「ふっ……」と息を吐くと「親の決めた結婚か……」と呟いた。

シリルがそんな風に思っていたなんてちっとも知らなかった。



きょろきょろと辺りを見渡す。

ごそごそと階段の下から這い出て来た。

ああ,どれ位ここにいたのだろうと思った。

時計を探したが時計は無かった。

兎に角、図書館へ行こうと思ってリリィはふらふらと歩き出した。


「あら、リリィ。いらっしゃい」

司書の先生が優しく声を掛けてくれた。リリィは微かに微笑む。

「リリィ。どうしたの? 元気が無いじゃ無いの。顔色も悪いわよ」

初老の司書、ナンシーは心配そうに言った。

「何でもありません。ちょっと疲れただけで……」

リリィは言った。

「そう?無理はしないでね。ところで前にあなたが予約していた本が王宮図書館からやっと届いたわ。『象徴(シンボル)としての植物。そのダイモン』。禁帯出本だから閲覧室で読んでください」

「有難う御座います」

リリィは顔を明るくした。

「ふふ。さっきまでの暗い感じが消えたわね。本当にあなたは本が好きね。あなたはずっと領地で家庭教師に教わって来たのでしょう? 学園に編入したのも今年からだし。

ここの編入試験はめちゃくちゃ難しいっていう噂よ。あなたの家庭教師はとっても優秀だったのね」

そう言ってナンシーは書庫からぶ厚い本を持って来た。


リリィはそれを持って閲覧室へ向かう。そしていつもの場所に座る。窓際の席。

ここから庭園の噴水が良く見えるのだ。そして校舎の二階にある生徒会室も。

リリィはぼーっと生徒会室を眺めていたが諦めた様に本を開いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ