17
次の日、シリルは教室に入るとジョンを探した。
友達と話をしていたジョンの肩に触れると「ちょっと頼みがある」と言って廊下へ連れ出した。
「ロメリア嬢とランチ、数学ね。分かった。文句が言えない様に会長も連れて行く。それで、お前は?」
ジョンは尋ねた。
「ああ、ちょっと野暮用が……」
シリルは返す。
「リリィさんか?」
ジョンは返した。
「うん。……まあな」
ジョンは呆れた様に言った。
「だから、俺は言っただろう?」
「分かっている。大丈夫だ。じゃあ、宜しくな」
シリルはそう言うとジョンの肩を叩いた。
自席に戻るとシリルは頬杖を突いて窓の外を見た。
昨日はあれからリリィと会う事は無かった。
姿を探したがどこにも見当たらなかった。
お茶のカップが転がったからお茶がもろに掛かったのではと心配した。
どうしてリリィは突然席を立ってしまったのだろうと思った。
もしかしたら怒っているのか?
先週、ロメリアにずっと付き合っていたから見舞いに行けなかった。だから申し訳が無いと思って花だけ送ったのだが。
まさか、あんな場面でロメリアが街へ出掛けた事をバラすとは思わなかった。本人が目の前にいるのに。
それもネックレスを買った事までバラすとは。
超天然だという話は聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
リリィが「王都の街を歩いた事が無い」と言っていた。
そうだっけ?
シリルは記憶を辿る。
案内しようとしていて忘れてしまっていたのか……。
ちょっと可哀そうな事をしてしまった。
そう言えば、リリィが王都へ来てから大した話もしていない。
忙しくて。
新年度が始まってすぐに留学生の受け入れ準備で大忙しだったから……。二週間しか猶予は無くて昼は生徒会室で出前だった。
ロメリア様のサポートが始まってからはずっと彼女と一緒だったし……。
昨日、久し振りに会って話をした感じがする。
もう、何か月だ? えっ? 3カ月……以上?
うーん……。
リリィが寂しそうにしているというパドマの言葉が蘇った。
これはちょっと不味いなと感じた。
折角学園に入学して来たのに……。
放置し過ぎてしまったかも知れない。
今度の休みにはリリィを誘って街を案内して、それから何か、記念になる物を買ってやろうと思った。
そうすれば機嫌も直るだろうと思った。
今日のランチはリリィと二人で食べる。
リリィの見舞いに行かないでロメリアと街を散策した事に付いて説明をして、次の休みに一緒に出掛ける事を提案する。
そう決めるとさっぱりとした。