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「ねえ、リリィさん。この街は美しいわね。先週はシリルに街中を色々と案内してもらっていたのよ。放課後に」

ロメリアが言った。

リリィは目を見張った。

思わずシリルを見た。

シリルはバツが悪そうに眼を逸らせた。


「色々な所に行ったの。公園や人気のお店。見て。これはその時、シリルに買って貰ったネックレスよ。素敵でしょう。一応これ金なのよ。石も本物。おもちゃみたいだけれど、綺麗よね。今度、リリィさんも買って頂いたら? ねえ、シリル?」

ロメリアがネックレスを摘まんで無邪気に笑った。

「……」

シリルは黙ってリリィを見ている。


「あら、どうしたの?シリル?」

ロメリアは不思議そうに聞いた。

「いえ、何でもありません」

シリルはそう言って紅茶を一口飲んだ。


ネックレスは金の細いチェーンに赤い小さな石が幾つか付いていて、可愛らしい物だった。

「私と色違いでどうかしら? 青もあったし、緑色もあったわよ」

ロメリアは楽しそうに言った。


リリィは微笑んだ。

「そうですね。是非私も今度連れて行ってもらいます。私、まだ王都の街を歩いた事が無いのです」

「あら、そうなの? ねえ。じゃあ、今度3人で行きましょうよ」

「ええ。楽しみにしています」

リリィはにっこりと返した。


フロア係がやってきてお替りのお茶を注いだ。

と、その時、ぐらりと建物が揺れた。

「地震だ!!」

「危ない!」


「熱い!」

ロメリアが叫んだ。

お茶がロメリアの腕にはねたのだ。

「大丈夫ですか? ロメリア様」

シリルは慌てた。

「シリル。怖い。怖いわ」

ロメリアがシリルの体にしがみ付く。


ばしゃりとリリィのスカートにお茶が掛かった。

「熱っ!」

思わず立ち上がった。

カップは落ちて取っ手が割れた。そしてからからと転がった。

「リリィ! 大丈夫か? ロメリア様。早くテーブルの下へ」

シリルはロメリアを抱えたままテーブルの下へ潜る。

「リリィ! 早くテーブルの下へ潜るんだ!」


生徒達はきゃあきゃあ言いながらテーブルの下に潜った。食堂は大混乱だった。

「火を止めろ!!」

シェフの声がする。


シリルがテーブルの下で見るとリリィの足元が見えた。

「リリィ。何をやっているんだ。早く、……ちょっと、ロメリア様、離れてください。リリィが」

「嫌よ!怖い!」

「おい。リリィ、何をやっている! 早くしろ!!」

揺れが収まった。


リリィが椅子を仕舞って立ち去ったのが見えた。

「リリィ。まだ危険……おい、どこへ行くんだ」

シリルがロメリアを引き剥がして立ち上がると、右往左往する生徒達の間を縫って去って行くリリィの後ろ姿が見えた。


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