15
ランチの席に着いた。
シリルの隣にロメリア。
そしてシリルの前の席にリリィ。
ぽつぽつとおしゃべりをしながらランチを食べる。
「ねえ。リリィさん。今朝、私とシリルが一緒だったのはね。くすくす。あなた、勘違いをしたでしょう? 顔が引き攣っていたわよ。(笑)。
あのね。昨日、私の馬車が壊れてしまって、それでシリルに送り迎えをして頂いているの。それだけの話なのよ。馬車が直って来るまでって、お願いしてあるの」
ロメリアは言った。
リリィは顔を赤らめた。
何て答えたらいいか分からなかった。
「昨日の帰り、ロメリア様の馬車が道脇の溝にはまってしまってね。飛び出して来た人を避けようとしたらしい。俺が学園に通う途中にロメリア様のコテージがあるから。だから、送り迎えをしているだけなんだ。それも数日で終わりだよ」
リリィは「そうなのね」と言って微笑んだ。
「あなた、私とシリルにやきもちを焼いたでしょう」
ロメリアが面白そうに言った。
「いえ、そんな事は……」
リリィは下を向いた。
「ねえ。リリィさん。これからも私はシリルにお世話になるのよ。でも、その度にリリィさんに不愉快な思いをさせてしまったら、申し訳が無いなって思ったの。だからシリルに言って、私も一緒に説明をする事にしたの。シリルだっていちいちあなたの顔色を窺っていたのでは、私のサポートに支障を来すでしょう? それは困るもの」
ロメリアはそう言ってリリィを見る。
それに対してシリルは返した。
「ロメリア様。私はいちいちリリィの顔色なんか窺っていません。これは生徒会役員としての私の仕事ですから。リリィはちゃんと理解してくれています。そうだよな? リリィ?」
シリルはリリィを見る。
「あ、……ああ。……そうですわね」
リリィは慌てて答えた。
「まあ、リリィさんって心が広いのね。良かった。これで私も心置きなく、シリルに甘えられるわ。リリィさん。一年間宜しくね。シリル。良かったわね。もうリリィさんを気にする事も無いわよ」
ロメリアはそう言ってシリルの腕に自分の手を置いた。
リリィはそれをちらりと見て窓の外に視線を移した。