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リリィは洗面所に行って顔を洗った。

自分のさっきの態度を振り返った。

「ちゃんと笑顔で冷静に出来たわ。」

そう呟いた。


平常心でいなくてはと思った。何をするにも冷静さは必要だ。

けれど、また心から何かがひとつ剥がれて落ちる気がした。

こうやって痛みを伴って一枚一枚剥がれて落ちれば、いつかは恋しい気持ちも無くなって平気になるのかしらと思った。


リリィは髪を整え、口角を指で上げた。

「淑女はいつでも冷静に穏やかにするものですよ。何があっても慌てないの。鷹揚に構えているのよ。心の中はどうでも外に出してはいけません。常に笑顔を忘れてはいけませんよ」

母の声が蘇った。


「……今更、不信の種が一つ増えても変わりはしないわ」

リリィはそう呟くと教室へ向かった。



平静な顔をして授業を受けた。

それでも心の中はぽっかりと穴が開いたみたいだった。そこにすうすうと冷たい風が吹く。風は収まりそうになかった。

リリィは心の扉を閉める。

冷たい風を追い出すのだ。


―ぱたん。

もう大丈夫。もう平気。


ランチの時間になった。

外はいい天気だ。サンドウィッチでも買ってベンチで食べようかしらと考えた。


と、ドアの所できゃあきゃあと騒がしい声が聞こえた。

頬を紅潮させたクラスメイトがリリィに声を掛けた。

「ねえ、リリィ様。シリル様がお呼びですわよ。一緒にランチをしましょうって」

「ちょっと、こんな事って初めてですわ!」

まるで自分達がランチに誘われたみたいにはしゃいでいた。


リリィはドアの所を見る。

シリルが腕を組んでこちらを見ていた。


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