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馬車から降りて来た青年を見て農民姿の淑女達は歓声を上げた。
「チャーリー!」
「お兄様!」
チャーリーは訝し気に二人を見た。そしてアッと気が付いて、大笑いをして言った。
「どこの農民が作業をしているのかと思った」
リリィは走って行って久し振りに会った兄に抱き付いた。
ダリアも惚れ惚れとする様な美丈夫になった甥っ子を抱き締めた。
チャーリーは留学を終えても、ずっとルシェンダ国で暮らしていた。
今回、暫く振りで国へ帰って来たのだった。
「ずっと働き詰めだったからね。たまには国へ帰って家族の顔を見て来なさいって上司が言ってくれたんだ。星祭でリリィは社交界デビューだろう? それを是非見たいと思ってね」
チャーリーは荷物を解きながらそう言った。
「えっ? そんなに長く休めるの?」
「ああ。早めの夏休みを取っていいと言われたよ。2か月間は休める。その代わり、お前の祖父母の領地へ行って薬草の様子を見て来いと言われた。何か新しい薬草は無いか、良質な薬草が出来る秘密を探って来いとか。俺はまあ、スパイだな。(笑)。仕事半分、休み半分といる所だ……はい。これはお土産」
チャーリーはみんなにお土産を配る。
「でも、お前のドレス姿が一番の目当てだ。そしてお前をエスコートするシリルと会うのがね。随分会っていない。どんな男に成長したかな」
チャーリーは目を細めて言った。
その言葉にリリィは少し胸が重くなった。
シリルとロメリアのツーショットが胸に浮かぶ。
けれど、久し振りに帰って来た兄をがっかりさせてはいけない。明るく微笑んだ。
「シリルはすごく素敵なの。一緒に踊るのが楽しみだわ。ドレスも新しく作るのよ。エレンおば様が作ってくれるの」
うんとはしゃぎながらそう言った。