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第5話「終焉の竜、再臨」

◇東京・ISO本部 特殊実験室


青白い光に包まれた実験室で、エリザは巨大な装置の前で黙っていた。その横には、ミロが不安げに立っている。


「本当にこれをやるつもりですか?」

ミロの声は震えていた。


「他に選択肢はない」

エリザは冷静に答える。「終焉の竜を倒さなければ、魔神たちを止められない。それに──」


彼女はポケットから小さな写真を取り出した。ガルムと写った古い写真だ。


「あの男を置き去りにした借りも返さないと」


装置のスイッチを入れると、低い唸り音が響き渡った。天井から機械のアームが降りてきて、エリザの腕に針を刺す。


「魔素適応プロセス、開始」

AIの声が冷静に告げる。


ミロは顔をしかめた。「異世界の魔素を直接体内に注入するなんて……普通の人間なら死にます!」


「私は『普通』じゃない」

エリザは痛みに耐えながら、歯を食いしばる。「私の体は幼い頃から実験体として調整されてきた。これが私の──『役目』だ」


皮膚に青い血管が浮かび上がり、エリザの目が異様な光を放つ。



1時間後・本部ヘリポート


レオンがエリザの変貌に目を見張った。


「その体……大丈夫なのか?」


エリザの髪は白く染まり、肌には青い光の紋様が浮かんでいた。彼女は黒いコートを羽織り、新型の魔導銃を腰に下げている。


「72時間持てば御の字よ」

エリザは淡々と答える。「その間に終焉の竜を倒し、ガルムを連れ戻す」


レオンは深く息を吐いた。「部隊を付ける」


「いらない」

エリザの声は冷たく響く。「これから向かうのは『次元の狭間』だ。普通の人間は耐えられない」


ミロが一歩前に出る。「僕は行きます!僕の魔法なら、エリザ博士のサポートができます!」


レオンは黙ってうなずき、二人をヘリコプターへと送り出した。



飛行中・太平洋上空


ヘリコプターの窓から、異常な光景が見えた。海上に巨大な渦が発生し、その中心から黒い竜巻が空へと伸びている。


「あれが『次元の狭間』……!」

ミロが窓に張り付くようにして叫ぶ。


パイロットの声が緊張に震える。「これ以上近づけません!ここから先は計器が狂います!」


「ここで降りる」

エリザは冷静に指示を出す。「ミロ、転移魔法を使えるか?」


「はい!でも精度が……」


「構わない。とにかく竜巻の中心へ飛び込め」


二人はヘリコプターから身を乗り出し、ミロの魔法で光に包まれる。次の瞬間──



次元の狭間


着地した足元は、色のない砂のようなもので覆われていた。空は灰色に歪み、遠くで雷のような光が走る。


「ここが……終焉の竜の領域……」

ミロが震える声で呟く。


突然、地面が揺れた。


ドゴオオオオオオオオ──!!


轟音と共に、前方の空間が裂ける。その隙間から現れたのは、漆黒の鱗に覆われた巨大な竜だった。


「ようやく会えたわね」

エリザの目が鋭く光る。


終焉の竜はゆっくりと首を動かし、赤い目で二人を見下ろす。


「再び来たか、愚かなる者よ」

竜の声は天地に響き渡った。「我は浄化の執行者。汝らの世界は既に滅びの時を迎えた」


「へえ、そう?」

エリザは魔導銃を構える。「でも私は『滅び』を認めないタイプなの」


銃口から放たれた光弾が、竜の顔面を直撃する。


「卑劣なる小虫が!」


竜の咆哮と共に、戦いが始まった。



死闘


エリザは魔素強化された身体能力で岩場を跳び回り、竜の攻撃をかわす。ミロは遠距離から支援魔法を放ち続けるが、竜の鱗は硬く、なかなか傷がつかない。


「くそ……!この防御力……!」


「博士!あの首元の傷跡を見てください!」

ミロが叫ぶ。「前回の戦いでついた傷です!そこが弱点かもしれません!」


エリザは銃を捨て、代わりにコートの下から二本の短剣を抜く。


「直接ぶち込むしかないか……」


竜の炎の吐息が迫る中、エリザは迷いなく突進する。灼熱の炎が肌を焦がすが、彼女は痛みにすら笑みを浮かべた。


「この程度……!」


一瞬の隙をついて竜の首に飛び乗り、短剣を傷跡に突き立てる。


「グアアアア──!!」


竜の悲鳴が世界を揺らす。黒い血が噴き出し、エリザの体を染める。


しかし──


「博士!後ろに!」


警告を受けて振り向くと、竜の尾が迫っていた。


「ぐっ……!」


直撃を受けたエリザの体が、砂漠の彼方へと吹き飛ばされる。



意識朦朧


遠くでミロの叫ぶ声が聞こえる。


「博士!しっかりして!」


エリザの視界はぼやけていた。体中の骨が折れたような痛み。魔素の副作用か、皮膚がひび割れ始めている。


(……まずいな)


ふと、視界の隅で何かが光る。


──剣だ。


砂に半分埋もれた、見覚えのある剣。ガルムの愛用していた魔導剣が、ぽつんと落ちていた。


「……はは」

埃まみれの顔で笑う。「やっぱり、こいつは生きてたか」


その時、背後から地響きが近づく。


振り向くと、終焉の竜が血を流しながらも、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「愚かな……小娘……」

竜の声は怒りに震えていた。「汝らの抵抗……無駄だ……」


エリザはガルムの剣に手を伸ばす。


「無駄かどうか……試させてもらうわ」


彼女の手が剣の柄に触れた瞬間──


「!?」


剣が激しく輝き始めた。



異変


光は一瞬で広がり、次元の狭間を白く染め上げる。


「これは……!?」

ミロが目を覆う。


光の中から、人影が現れる。


──ガルム・ヴァルターだ。


だが、その姿は以前とは明らかに違っていた。右腕が異世界の鎧のようなもので覆われ、目からは青い光が漏れている。


「おいおい……随分ひどい姿じゃねえか、エリザ」

ガルムは苦笑しながら、エリザの前に立つ。


「……遅いわよ」

埃まみれのエリザが咳き込みながら言う。「どこでサボってたの?」


「ああ、ちょっとした『契約』してたからな」

ガルムは異形の腕を見つめる。「魔神の力の一部を貰う代わりに、アイツらを倒すって約束したんだ」


終焉の竜が警戒して唸る。


「ガルム……!」

ミロが驚きの声を上げる。


「よぅ、ミロ。元気そうで何よりだ」

ガルムは飄々としたまま、剣を竜に向ける。「……で、エリザ。あと何分持つ?」


「せいぜい30分よ」


「そっか。じゃあ──」


ガルムの剣が青白く輝く。


「その間に片付けようぜ」


終焉の竜に向かって、二人が同時に駆け出した──

次回予告

最終決戦の結末!

ガルムとエリザの運命は?

そして、魔神たちの真の目的とは──?

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