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寝ない

作者: 木野キヤ

 カフェインの致死量は、コーヒー換算で80杯、エナジードリンク換算で60杯だそうだ。私はたったの四、五杯しか飲んでいないので死ぬことはない。ただ、手が震えて、足の関節が痛み、筋肉が痙攣している。今まで最大でエナジードリンク三杯が限界だったので、今回は新記録だ。全く眠くない。これから寝ずに朝まで迎えるのに、何をしようか。ゲーム、映画鑑賞、動画鑑賞、読書、友達と雑談。言ってしまえば何でもできる。こっそり外に行くことだって、遠いところに行くことだって、何でも。一つだけ懸念点がある。頭痛がすることだ。この痛みを抱えて何かをするのは少し邪魔だ。加えて、外は雨が降っている。朝まで続きそうだ。となると、この暗い部屋で過ごすことになりそうだ。そういえば、一階の冷蔵庫に缶チューハイがあった。それとつまみを持って部屋に閉じこもって、ゲーム三昧がいいかも。それか動画でも見るか。とてもいい案だ。

 計画を建てよう。前提として、家族全員が既に寝ている。そのため静かに一階に降りないといけない。靴下を履いて音を立てないようにしよう。部屋のドアを開けるときもできるだけ、そぉ~っと開けよう。ガラガラと音を立てては私の夜が台無しになる。そうだ、コップに氷を入れて持ってこよう。いつも父がコップに氷をいれる時、かなり音が立っているから、気をつけよう。他に注意することはあったかな。よし、行動開始だ。

 まず、最初はドアを開ける。一秒に一センチ動かすかどうかぐらいで力を入れてみよう。この扉、思った以上に重たいな。もうちょっとだけ力を入れてみよう。少し入れすぎたかな、勢い余って結構音が立ってしまった。これぐらい開けたら通れるかな。狭いが通れそうだ。抜き足差し足、としている間に次の難関、階段だ。ここは長年上り下りしているから慣れたもんだ。つま先を立てて、まるでバレリーナのような歩き方で降りる。多少足音が聞こえるが、これぐらいはよしとしよう。

 計画外の出来事発見。リビングの扉が閉まっていた。ここも慎重に開けよう。出るときのことも考えて広めに開けよう。自分の部屋の扉もこれぐらい開けておいたら良かったなと今頃思う。電気をつけて、キッチンへ行く。棚を開けてコップを手に持つ。製氷機から氷をひとつかみ。冷蔵庫から缶チューハイを二、三本。いや今日は多めに五、六本持っていこう。私の夜はとても長い。

 やはり五、六本となると両手が塞がってしまう。一本減らそうか。いや、一本後ろポケットに入れよう。ズボンにゴムがないからずり落ちそうだが、落ちないように心のなかで神頼み。電気を消して、リビングのドアは放っておこう。階段もバレリーナ歩法で上りきって、自分の部屋まで抜き足差し足。私だけの宴会が待ち遠しくて速歩きになりそうだ。気持ちを抑えて、部屋に到着。机にコップと缶を置いて、宴会のはじまりはじまり。

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