表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/80

第5話 実がなったよ


 俺も7メートルほどの大木に成長し、そしてついに本日実がなった。

 なんの実なのかは自分でもわからない。

 自分で食うわけにもいかないしなぁ。

 とにかく、赤い実がなった。


 今日もいつものようにスライムたちが水を運んできてくれる。

 俺はためしに、スライムたちのもとに実を落としてみることにした。

 いつもありがとうなー的な意味を込めてだ。

 俺が実を落とすと、スライムたちはしばらくいぶかしげに見つめたあと、パクリと口にした。


 実を食べると、スライムはその場で進化をしはじめた。


「おお……!? お前らまた進化するの……!?」


 するとこんどは、スライムは人型の姿に進化した。

 さしずめヒューマンスライムとでも名付けようか。

 とにかく、人型のスライムがあらわれた。


「世界樹様、進化の実をお恵みくださりありがとうございます! きゅい」


 スライムはそういって、去っていった。

 どうやら進化の実なのか、あれは……?

 スライムたちが進化し、人型になったことで、スライムたちは喋れるようになったみたいだ。

 だがそのかわり、こちらからの声がきこえなくなってしまった。

 まあ、そのうちなんとかなるだろう。



 ◇

 


 それから、養分を持ってきてくれた白狼たちにも実をあげた。

 白狼たちも実を食べると、別の種に進化しはじめた。

 白狼たちは立ち上がり、二足歩行の獣人に進化した。

 獣人といっても、まだどちらかというと獣よりだ。

 ワーウルフとでも名付けようか。


「世界樹様、ありがとうございます。この恩には必ず報います……!」


 ワーウルフたちは俺にお礼を言って、去っていった。

 そういえば、すっかり俺はみんなから世界樹様とか呼ばれているなぁ……。

 まあ、俺もかなり大きくなってきて、周りの木にも負けないくらいになってきたからな。

 それでも、世界樹様は大げさだと思うが……。



 ◇



 それからしばらくして、今度は人間の集団がやってきた。

 どうやら旅の集団らしい。

 なにやら宗教的な衣服に身をまとった集団だ。


 キャラバンを引き連れていて、怪我人もいるようだ。

 人間は全部で15人ほどだった。

 人間たちは俺の木の根元までやってきて、そこで休憩しはじめた。

 俺がちょうど影になるから、ここを休憩場所に選んだのだろう。

 雨風もしのげるしな。

 

「どうしましょう……司祭が……このままでは司祭が……」


 一人の人間が、司祭と呼ばれた男を抱えながら、そんなことを言う。

 どうやら司祭は病気のようで、倒れて苦しんでいる。

 俺は、もしかしたらと思い、実をひとつ地面に落としてやることにした。


「こ、これは……? 司祭、とりあえずこの実を食べて元気を出してください……!」


 男が司祭に実を食べさせると、なんとみるみるうちに司祭は元気を取り戻した。


「おおおおおお……!?」

「司祭様……!」

「これはどういうことだ……!」

「わからない……だがこの実が……!」


 人間たちは大喜びしはじめた。

 俺も人助けができてよかったよ。

 どうやら人間は実を食べても進化はしないようだな。

 だが、病気まで回復してしまうとは、俺の実はいったいなんなんだろうか。

 すると、その宗教団体は俺のことを囲むと、万歳しはじめた。


「おお! 奇跡の実をお恵みくださったご神木さま……!」

「ご神木様に万歳……!」


 おいおい、大げさだな……と思うが、悪い気はしない。

 それからしばらく俺のもとで休憩したあと、彼らは去っていった。

 いったいなんだったのだろうか。


 彼らがおいていった布には、「エルドウィッチ教」と書かれていた。

 まさか俺が司祭を助けたことで、のちにあんなことになるとは、このときは思いもしなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の「☆☆☆☆☆」評価欄をワンタップして

「★★★★★」にして応援していただけると、とても励みになります!

どうぞよろしくお願いいたします!


コミカライズ1巻発売中!

ぜひよろしくお願いします!

↓の画像をクリックで販売ページに飛べます

gakllhtsd6eh3rt8cb1hiyi79tfi_nkg_a8_ei_11ea.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ