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第54話 迷惑だぞ


 ――ズドーン!!!!


 俺は思い切り、世界樹を剣で殴りつけた。

 さすがは世界樹だ、俺の攻撃で揺れはするが、傷ひとつつかない頑丈さだ。

 この調子で世界樹に挑めば、いつかは俺の剣も最強になるかもしれない。

 俺はそんな単純な考えから、世界樹を殴り続けた。


「もういっちょ……! どっせーい!」


 ――ズドーン!!!!


 そのときだった。

 上から、蜘蛛の糸が垂れてくる。

 そして蜘蛛の糸から降りてきたのは、一匹のアラクネーだった。

 たしかこいつは、アラクネーのボスのアリアだ。


 いったいなにごとだろうか。

 アラクネーが接触してくるなんて、珍しい。


「セカイ様、なにごとですか……?」

「ああ、ちょっとな。修行をしてたんだ」

「あの……ふつうに、迷惑です」

「え…………」

「我々アラクネーはこの木の上に住んでいます。そう何度も揺らされると、迷惑なのです」

「ああ……そうか。それはすまなかったな……」


 これは我ながら失念していた。

 申し訳ないことをしたな。


「それに、いくらご自分の身体とはいえ、世界樹を殴りつけるのはいかがなものかと」

「まあ、それについても……はい。その通りだ」

「そんなにお強くなられたいのなら、私が協力しましょう」

「はい……? 待て、今なんて?」

「だから、私がセカイ様に剣術をお教えいたします」


 この申し出には驚いた。

 ふだんあまり関わってこないアラクネーが、俺に剣術を教えるなんて。

 それにわざわざアラクネーのボスであるアリアがだ。

 そういえば、アラクネーたちは戦争のときも、かなり大きな戦力になってくれていたな。

 アラクネーはその8本の脚で、器用に剣をつかいこなした。

 普通の人間なら、剣を持つ手は2本だ。

 そこをアラクネーは8本の腕で操れるのだから、必然、その手数も多くなる。

 さらに彼らは蜘蛛の糸をつかって相手を翻弄し、自在に動き回る。

 そんなアラクネーが、弱いわけがなかった。

 たしかに、アリアは絶好の修行相手だ。


「それにしても、本当にいいのか? どういう風の吹き回しなんだ?」

「私たちとしても、このユグドラシル王国の平和は大切なことです。世界樹が倒されては、住むところを追われますから。セカイ様が必死に世界樹を守ろうとするのなら、それに手を貸すのは当然のことです」

「そうか。ありがとう。じゃあ、俺に剣を教えてくれるか? アリア」

「もちろんです。どこからでもかかってきなさい」


 するとアリアはアラクネーの聖剣アルネクリオンを取り出した。


「いくぞ……!」


 俺はアリアに斬ってかかる。

 しかし、いとも簡単に剣を受け止められる。


「そこだ……!」


 次は切り返して、横から攻撃だ。

 しかし、アリアは瞬時に剣を別の腕で持ち替えて、防いでくる。

 さすがはアラクネーだ。


「次はこちらからいきますよ……!」

「うお……!?」


 アリアはその8本ある腕をつかい、俺に連続攻撃をしてくる。

 単純に人の4倍の腕があるのだ。

 縦横無尽にいろんな方向から、剣が飛んでくる。

 俺はそれを受け止めることができずに、逃げてかわす。


「逃がしませんよ……!」

「っく……!」


 俺が逃げた先に、アリアは糸を飛ばした。

 みごと、俺の足は糸にとらわれてしまう。

 俺は動きを封じられ、逃げることができない。

 アリアは次に、上方向に向けて糸を発射した。

 そして世界樹の枝にぶら下がると、上から剣で攻撃。

 まるでターザンロープのように滑空して、剣が上から降ってくる。


「うわぁ……!?」


 俺はしゃがみこんで、なんとか攻撃をかわす。

 しかし、直後、アリアは俺の後ろに着地。

 そして、俺の背後から、首筋に剣を押しあてた。


「これで……チェックメイトですね。戦場ならこれで死にます」

「っく……さすがだな……」


 アリアは思っていた以上に強かった。

 一対一で戦えば、俺なんかまったく歯が立たない。

 これは……ちょっとすごいな……。


「まさかアリアがこんなに強いとは……」

「まだまだ、修行は続けますよ?」

「もちろんだ」


 お互いに、位置を仕切り直し、もう一度剣を構える。

 そんなふうにして、俺とアリアとの修行は夜遅くまで続いた。

 この日、俺に初めて剣術の師匠ができた。


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