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第12話 抗争だよ


 一番顔がかわいい子、アンリというゴブリン。

 ある日、ちょっと遠出をしたアンリが帰ってこない。

 夜になっても帰ってこなかったので、ゴンザレスが探しにいった。

 すると、隣のゴブリン集落にアンリは捕らえられていたらしい。


「あいつらアンリを攫いやがって、許せねえ……!」


 筋肉ムキムキのゴンザレスが本気で怒るとマジ怖い。

 だが村長のリンダは冷静沈着だ。


「まあ待て。まだアンリがなにかされたと決まったわけじゃないだろう。ここは穏便に話し合いで解決したい」

「だめだ。村長。俺はあいつらが許せねえよ。根絶やしにしてやる」


 まあ、アンリは可愛いからなぁ。

 他の集落のゴブリンが奪いにくるのも、分かる気がする。


「一応、話し合いをしにいくということで、やつらのもとに向かう。話し合いで解決しなかった場合は……お前の力を借りよう」

「おう、まかせておけ」


 リンダとゴンザレスを筆頭とした主要メンバーで、向こうの集落までいくらしい。

 おいおい……戦争とか勘弁してくれよ、穏便にすめばいいんだけど……。

 メンバーは男衆15人。

 隣のゴブリン集落まで向かっていった。


 それから半日ほどして――。


 ゴンザレスがアンリを抱えて戻ってきた。


「がっはっはっは! 他愛もないやつだったぜ……!」


 ゴンザレスは、右肩にアンリを載せ、左肩にはいくつもの戦利品を持っていた。

 あ、これ穏便にはいかなかったやつだな。


「大丈夫だったか? 怪我はないか? なにもされなかったか?」

「うん……ありがとう」


 アンリは助けてもらったゴンザレスに、顔を赤くして答える。

 どうやら話をきくかぎり、アンリは人質として攫われただけで、なにも危害は加えられていないようだ。よかった。

 おやおや……これはもしかしたら、アンリはゴンザレスにほの字かもしれませんねえ。


「それで、結局なんだったんだ? なにがあった?」


 事情を知らない留守番ゴブリンが、リンダに尋ねる。


「あいつら、俺たちの集落が発展しているからって、嫉妬していやがったんだ。それで、俺たちから物資を横取りしようと、アンリを人質に……」

「そんな……ひでえやつらだな」


 だが、とゴンザレスが話に割り込んだ。


「そんなのは俺がゆるさねえ。あいつらには力でわからせてきてやったぜ。こっちは譲歩しねえ。物資はわたさねえし、アンリも返してもらったってわけよ。ついでに、むしろ戦利品をいただいてきてやったぜ」

「はは、お前はたのもしいな。この村の仲間でよかったよ。敵にまわしたらおっかねえ」


 ゴブリンたちはそんな会話で盛り上がっていた。

 その日はアンリが帰ってきたことを祝って、また祭りがひらかれた。

 こいつらは事あるごとに祭りをひらく。

 まあ、アンリが怖い思いをしただろうから、それを癒す意味もあるのだろう。


 祭りのあと、ゴンザレスがアンリに呼び出されているのを見た。

 つまり、まあそういうことなのだろう。

 ちくしょーリア充め。

 俺はこっから動けないってのに……。

 まあ、ゴブリンたちの恋をながめてるのもおもしろいからいいか。


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