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運命の出会い?

(なぜ私はベッドの上で仰向けになっているのかしら?しかも変な男が私を抱き枕にして寝ているし。

あぁ~男爵の趣味に感心していた私に言ってあげたい。3番目の扉を開く前に大広間に戻りなさいと。)


一時間前。


(何があるのかしら!魔物?それは流石によね。じゃぁ幽霊?)


はやる気持ちを抑えて壁伝いにゆっくりと進む。目がだんだんと暗さに慣れてきて、この廊下の壁にも絵画が飾れているのが分かる。さらに奥の方には階段の手すりも見えてきた。耳を澄ますと微かにうめき声と布をするような音が聞こえる。


(嘘!?本当に何かいる!)


カーペットが敷いてあるので靴の音が響くことはないけれど、そっと近づく。薄っすらと黒い影が見え、ハッ…ハッ…と言う短い呼吸に交じり時々悶えるような声もする。


(苦しんでるの?でも、もし本物の魔獣だったら…。)


好奇心だけでここまで来たけれど、遭遇した後のことまでは考えていなかった。この得体の知れない何かを目の前にすると急に怖くなる。もし襲われでもしたら…。最悪ここで死を迎えるかもしれないし、逃げ延びたところで騒ぎを起こしたとして治安部隊に突き出されるかもしれない。家門の没落前にジ・エンドだ。ここは気づかれる前に離れるのが得策。まずは後退りして…。


コトッ…


壁を伝った指先が絵画の額縁にかさる。


「…つっ!近づくなと言っただろう!!俺にかまうな!!!」


突然の怒鳴り声に驚いて心臓がビクっと跳ね上がる。


(え?なに?人?人なの?)


恐る恐る身を乗り出し目を凝らして見てみると確かに人っぽい。肩で息をしているのが分かる。


(お酒に酔っているのかしら。魔物ではないことに安心はしたけれど…。ん~どうしましょ。具合の悪い人にかまうなと言われて放っておくほど、私…薄情ではないのよね。)


はーっと深いため息をついて黒い影までぐんぐんと近づく。屈んで腕を掴み引っ張ろうとすると払いのけられる。


「だから、かまうなって…。」


振り払う手にも声にも力が無く、心なしかだらんとしているようにも見える。


(このままでは堂々巡りになりそうだわ。さっさとどこかで休ませて、そろそろ本気で帰りたい。こうなったら仕方がないわね。人の話を聞かない陽気な村娘作戦で行くわよ!)


エリゼはパンッと手を打つ。


「はい、は~い!お兄さ~ん!どこかに休める場所はないかな?二階かな?ここにいるってことは二階よね?行っちゃう?階段上っちゃう?」


強引に腕の下に滑り込み体を支える。


「おまっ…何を…止め…。」


(わっ重。力が抜けている人間ほど重いものはないわね。けれど無駄だと思っていた日頃の鍛錬がこんなところで役に立つとは世の中分からないものだわ。それよりも純情な乙女に変な吐息を吹きかけないで頂戴!)


「じゃあ行っくよ~。はい立ち上がりって右手で手すりを掴んで~しっかり力を入れて~。それ!いっち、に、いっち、に!」


呆気に取られているのかはたまたテンションについていけないのか、何とか言うことを聞いてくれている。踊り場で休憩を入れてあとは一気に上まで上る。


(やっとのことで二階まで来たのは良いけれど、同じような扉がいくつもあるじゃない。部屋には何の表示もないし、どうしましょう…。)


「ハァ…ハァ…手前から…三つ目はダメだ…。」


(あ?しゃべった。なら…三つ目以外なら大丈夫ってことね。じゃあ一番階段に近い手前の部屋をお借りしましょう。重いし。)


扉を開けて中に入るが灯りはない。しかし大きな窓から入る月明かりで部屋の中の様子がわかる。重厚な面持ちの調度品、毛足が長くふかふかな絨毯、繊細なレースが美しい天蓋付きの広いベッド。どれも高価なものだろう。


あとはベッドまで運んだらお終いね。


「もう少しですから頑張りましょう。」


ベッドまで体を支えて歩き、コートを脱がせ何とか寝かせることができた。クラバットを外し胸元をゆるめると呼吸もだいぶ落ち着いたようだ。


(あとは帰りがけにメイドにお願いすれば十分ね。そろそろリサも痺れを切らせて帰ったかしら。乗り合いの馬車がすぐに見つかれば良いのだけれど…。)


ベッドサイドから立ち上がると同時に腕を強く引っ張られ、一瞬でベッドに引きずり込まれて天井が見える。


(あれっ?…なにこれヤバいやつだ?)































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