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運命はまだ出会わない

扉をそっと押してみる。すると数歩先にはもう一つ扉がある。


(あら?二重扉だわ。こんなのなかった気がするけど…。あぁ入場時には扉が開け放たれていたから気が付かなかったのね。それに違っていたとしても引き返せば良いわけだし。)


もう一つの扉を引いて廊下にでる。パタンと閉めたとたんに、もう大広間での賑やかな音は聞こえてこない。等間隔に吊るされたランプの明かりは石造りの床に反射してさらに明るさを増している。


(男爵の羽振りを考えたらもっと派手に飾りそうだけど意外に落ち着いているのね。絵画が数枚とお花があるだけで後は何もないわ。)


よそ見をしながら歩いているともう一枚扉が出て来た。


(誰にも会わないし帰る人が一人もいないなんてあるかしら。女神像があの窓から見えるのだから方向的に間違いはないはず。)


とりあえずと目の前の扉を引いて向こう側に出てみる。廊下ではあるけれど先ほどの石造りとは素材が違うようだ。同じようにランプは灯っているけれど薄暗い。奥の方は暗闇だ。


(これ絶対に違うわ。戻るのが正解ね。)


扉へと体を向けた瞬間、背後から音がする。


(なに?)


振り向くとメイドらしき女性が暗闇の中から走っては転び、転んでは走ってを繰り返しどんどん近づいてくる。こちらにはまったく気が付いている様子はなくただ扉だけを見つめているようだ。そのままの勢いでノブに手をかけ力一杯扉を引く。そして引く。引く。引く。


(かなり焦っているようね。肩で息をして必死に扉と格闘する姿を横から眺めるのも面白いけれど、ここはひとつ教えて差し上げた方がよろしいかしら。)


「あの~もし…。その扉、内開きなのでこちら側から開けるには押さないと。」


その言葉にビクっとしメイドの動きが止まる。目だけがゆっくりとこちらを向く。

いるはずのないものがいる恐怖心。ランプにうっすらと照らされたその顔は…。


「ま…魔物?ギャーーー!」


メイドは一瞬にして扉を押してあっという間に出て行った。後には静けさだけが残る。


(魔物って?それらしきものはいないけど?)


エリゼはキョロキョロと辺りを見回す。ひょっとこのお面は棚に上げ、メイドの慌てようを思い出す。


(この奥は確実にエントランスではないけれど、驚くような何かがあるってことよね。もしかして魔物がでるからアデル皇妃様が嫌がったとか?それとも魔物ではなくて幽霊とか?)


こうなるとワクワクが止まらない。子供のころから興味がないことにはとことん無関心だけど、気になり始めると好奇心を抑えることができなくなる。ある時は庭の池に浮かぶ大きな蓮の葉に乗り溺れてみたり、ある時は屋敷の2階の窓から木に飛び移り毒虫に刺されて腕がパンパンに腫れたりと、とにかく行動が危なっかしいのだ。


(この先に何があるのかしら?知らないことを知ることは良いこと…よね。それに領地の運営に役立つ発見かもしれないし。)


リサがいれば発見などはないと一刀両断されるところだがリサはいない。こうなってくるとただの理由付けだ。


(リサは心配してああ言っていたけれど…。本当にちょっとだけ!ちょっとだけなのよ!)


後は屋敷に帰るだけのはずなのに好奇心に負け、薄暗い廊下の奥へと踏み入れた。































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