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決戦は何曜日?2

会場となった大広間は帝国の催事も執り行えるように設計され、かなりの大きさがある。天井には大きなシャンデリアがいくつも吊るされていて、そのすべてに幾重にもカットされた水晶が使われている。四方に反射した光はダンスに興じる紳士淑女に降り注ぐ。


(まさか俺が水晶宮に来ることになるなんて。)


ボーイに手渡されたワインを一気に飲み干し、ふーっと溜息をついた。疲れているせいか先ほどからずっと完熟した桃のような甘い香りが鼻に張り付いている気がするのだ。長い時を経て濃さはだいぶ薄まっているものの体に流れている狼の血が嗅覚を敏感にさせるのだろうか。


(やはり今日は屋敷で休むべきだったな…。)


少しだけウエーブがかかった黒髪に青味がかった黒い瞳。剣を振るうために鍛え上げられた体はまるで鋼だ。性格はやや難ありだけれど、誰もがその佇まいに見惚れてしまう。


ここ最近、皇帝からの派遣要請がどうもおかしい。小規模災害に村同士の小競り合い、家畜の伝染病防疫などなど。領主に任せておけばいいようものをことごとく皇室第一騎士団に押し付けてくる。そろそろ体力も限界に近い。


(アデル皇妃とうまくいっていない腹いせか?いつでも皇帝陛下の愛は一方通行だけどな!)


うっかり口に出しそうなところをギリギリでつぐんだ。声に出してしまったら明日には不敬罪で俺と妹の首が大広場に並んでしまう。可愛げのない妹だけどそれはそれで申し訳がない。


「お客様、お飲み物はいかがですか?」


声のする方へ振り向くと主催者の子息ユーリがシャンパングラスを両手に持ちニコニコしながら立っている。彼とは同い年、アカデミーで知り合った。見た目は優男だが頭が切れる。来年には事業を継承して商団のトップになるらしい。私生活では妻と可愛い娘がいて人生順風満帆だ。そんな奴に俺は友人認定されているらしく夜会を開く度に必ずと言っていいほど招待状を送ってくる。


「久しぶり、元気…ではなさそうだな。たまには楽しんではどうだい?そのための仮面だろ。」


ユーリが令嬢たちに目を向けニコっと笑うときゃきゃと黄色い声が上がった。そんな様子を見ても溜息しか出ない。


「分かった!第二皇女の結婚問題だろ?来年早々第一皇女か西国に嫁ぐから陛下は第二皇女を手元に置いておきたいはず。そうなると…婿候補の筆頭はリオンお前だ。すでにお互い適齢期を過ぎているから…婚約をすっ飛ばして結婚とか。」


明らかにユーリはからかいに来ている。ニヤニヤしている顔が恨めしい。図星を指されてイライラするが、ユーリの話は的を射ている。


(あの女と結婚して毎日顔を合わせるなんてまっぴらごめんだ。蛇のように執拗に干渉してくるのが目に見えている。幸い皇帝陛下は俺のことを良く思っていないが、第二皇女の願いとあらば王命を下すだろう。そうなる前に何とかしたいが…。)


「結婚なんて空虚だ。」


ふとユーリを見るとまだニヤニヤしている。たった今何かを思い出したかのように耳打ちしてくる。


「そんなお前に耳より情報だ!今日はブランデール侯爵のご令嬢が来ているんだ。会ったことないだろ?」


ブランデール侯爵家と言えば建国時からの名門ではあるけれど、しばらく中央政界からも離れていて、ここ最近その名を耳にすることもなかった。侯爵とは王城で数回顔を合わせたことはあるけれど娘がいることは知らない。


「バターブロンドを探してみれば良いよ。それに…ククツ、ククククゥ~~~!」


ヒーヒー言いながら涙を流して笑うユーリを冷ややかに見つめる。












リオン・メルケ…黒髪に青味がかった黒い瞳の狼の血をひく公爵。基本的に誰にでも塩対応でワーカーホリックぎみ。第二皇女との結婚は絶対に阻止したい。

ユーリ・グレイグ…リオンとは友達だと思っている。リオンをエリゼに会わせてハプニングが生まれることを期待している。

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