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計画は順調?

旧市街にある侯爵家のタウンハウスから帝都の中心まで馬車で1時間ほどかかる。さらに10分ほど行った場所が目的地だ。今日の仮面舞踏会の主催であるグレイグ男爵は今や公爵家を凌ぐといわれるほどの大富豪。海運業を成功させ、商団の息がかかっていない店はないと言われるほどに商売を手広く繁盛させている。そのグレイグ男爵が数年前に大枚を叩いて皇室から買い取ったのが今日の会場となる水晶の離宮だ。小さな森の中に立つそれはまさに白亜の宮殿。皇帝が愛する皇妃のために贅を尽くして造らせた離宮で、何故か一度も皇妃が足を踏み入れることがなく売却された曰く付き…ではなく新築同様の美しい建物だ。


(まったく皇室も男爵も無駄遣いが過ぎるわね。それだけのお金があれば南部の領民全員が一生遊んで暮らせるのに。)


そんなことを考えると溜息しか出ないけれど、今日はそのお金持ちを捕まえに来たのだ。


確か男爵のお子様は3人…ん?5人?だったかしら?ご子息が…、え~と……。


「ねぇリサ。男爵様のご子息は誰と誰と誰と誰と誰だったかしら?」


ここまで来てそれも分かっていないんですか?それにそんなに息子はいないから!とリサの目が語っている。


「男爵様のご子息は3名です。エリゼお嬢様の狙いは婚約者がいらっしゃらない三男(16歳)のマーク様です。ですが、アカデミーにいらっしゃるので本日参加されるのかどうか…。」


お金持ちでかつ侯爵の名で商売をする恩恵を欲していそうな家門。数少ない招待状の中から選び出した結果がグレイグ男爵の仮面舞踏会しかなかった。もし男爵家とは縁がなかったとしても、それなりのお金持ちの方々が集まっているはず。


何だか打算的で申し訳が無い気がするけれど、利害が一致するならウィンウィンよね。


まぁ誰しもがしている政略結婚だもの。あちらのご家族と話をどんどん進めてしまえばお父様もお母様も断りづらくなるのではないかしら。


などどぼんやり考えているうちに目的地に近くまで来たようだ。かなりの人数が参加するようで、馬車が渋滞している。石畳で舗装はされているものの馬車がギリギリすれ違えるほどに道幅は狭い。


(なかなか前には進まなさそうね…。)


「いいわ。あと少しだから歩いていきましょう。リサは馬車の待機所で待っていてちょうだい。20時になっても戻らなかったら先に帰っていいわ。乗り合いの馬車があるはずだからそれを捕まえるわ。」


エリゼはお面を装着する。リサが心配そうな顔だ。命令ではあるけれど何をしでかすのかわからない主人を置いて帰っても良いのかと。


「心配はいらないわ。強引なことはしないと約束もする。それにあなたが側で読み聞かせをしてあげないとニコルが寝ないでしょ。だから大丈夫よ。」


リサの両手を包み込むように握る。


「ですが…。」


顔から不安な表情が消えることはなかったが、大きなため息をついて主人に従うことにしたようだ。

私が5歳のころから側にいるリサ。領地管理の責任者であるマイオール子爵に連れられて遊びに来たのが始まりだ。一緒に剣術の稽古をしたり、花冠を作ったりまるで本当の姉妹のように過ごして来た。


「ほ、ん、と、う、に!危険なことはしないで下さい。約束ですよ。」


そう言うとリサはマントについているフードを目深にかぶせた。


「とにかく会場で荷物を預けるまでは、そのお面が他人の目に入らないように気を付けてくださいね。」


あ~はい。




エリゼ・ブランデール…領民思いの無鉄砲侯爵令嬢。ひょっとこのお面を意外と可愛いと思っている。砂糖が乾燥したときは食パンを一緒に入れるとサラサラに戻ることを知っている。

リサ・マイオール…エリゼの護衛兼メイド。エリゼのことが心配で仕方がない。できればひょとこのお面を被ったお嬢様の姿を誰にも見られたくない。

ニコル・ブランデール…エリゼの6歳下の弟。甘えん坊の寂しがり。


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