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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

秋の夢

掲載日:2023/10/04

 

小さな子どもが言う。


 あのくろいところにあるやつ ここにかいて


 僕は言う。


 分かったよ、ちょっと待っててよ。今、描いてあげるから。


 小さな子どもが、また言う。


 ちがうよ それじゃない。きいろくてまあるい やつじゃない。あかくて するどいやつだよ。


 何言っている。あれは月といって、黄色いんだ。今日は特別に丸い。まあ、丸くない日もあるがね。


 ちがうよ ちがう。きょうは あかくて とがっている。きょうは つきじゃないの。きっと。


 何を言っている。いつでも月さ。日によって変わってもらっちゃ、毎日月を友に酒をころがす人間にとったら、たまったもんじゃあない。


 ちがうよ ちがう。にんげんは つきをしらない。しりっこないよ。だって ぼくたちを なんのざいあくかんもなくつぶすにんげんだよ。そんなやつらに つきなんて わかりはしないよ。


 確かにそうだな、人間は月を知らない。酒を友にしている奴なんて、実はいないようだな。


 そうだよ それより はやく あのあかい とがったもの ここにかいて


 何を言っている。だから、今日の月は、黄色くて、丸いではないか。それなら、もうここに描いた。


 ちがうよ、ちがう。どうしてあれがみえないの。



 僕は自分の目をこする。だけど、夜空にあるのは、同じ月。どうしようもなく、そこにある。それはきいろくて、まあるい月。


 僕は目を一個だけ潰す。


 だけど、夜空には、堂々と、月。きいろくて まあるい つき



 最後の目を潰してみる。


 やった。月が消えた。夜空だけが見えた。


 だけど、赤くて鋭いものは、夜空に浮かばない。


 僕は、小さな子供に聞いてみる。


 やっぱり、君が言うものはないよ。




 漏れる笑い声が、悲しく秋の風に乗る

 

 

 

 ちがうよ ちがう。ほんとうにしてほしかったことはちがう。




 その時、僕の身体には一瞬、電撃が走った。だけど、大丈夫。すぐに痛みは消えた。なあんにもなかった。




 僕は、今どこにいるのだろう。



 誰かを上から見下ろせているのかな。



 忌々しい人間に潰されたのかな。





 それとも、誰かの空腹を満たせているのかな。

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