表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

第12話 ワクワクさせる女

 樹海に入って最初に出会ったのは意思を持って動く大木、樹人間(トレント)だ。

 大木の枝や根で攻撃してくる魔物でとにかく手数が多い。


「せいっ! せいっ! せーいっ!!」


 しかしその手数の多い樹人間(トレント)の攻撃を盾役のビビアンが大盾で全て弾く。


「ふん!」


 弾かれ、弛んだ枝をロアンが斬っていく。


「ロアン、危ない!」


 地中からロアンの背後に根を伸ばし、ロアンの背を狙う樹人間(トレント)

 クレアはその根を投げナイフで迎撃する。


「気を付けなさいって!」


「ふん、お前が援護せずとも反応できていたさ」


「なんですとぉ!」


 騎士と錬金術師が共闘する時、基本錬金術師は援護に回る。

 クレアの場合は投げナイフによる援護だ。


「いったー! エマ、手首怪我した! 治して!」


「はいはい」


 エマは粉末状にしたヒールポーションをビビアンの手首に投げる。粉末を浴びたビビアンの手首はダメージを治していった。

 エマは多種多様な錬金液(ポーション)(錬金術で作り上げた薬液)を使用し、味方を治癒することを得意とする錬金術師だ。


樹人間(トレント)の急所の毒は除草剤の役割を持つウィードキラー・リキッド」


 シグレットはバッグの中から緑色の液体が入った瓶を出し、クロボシに渡す。

 クロボシは瓶の中の液体を矢尻に浸し、樹人間(トレント)に毒矢を撃った。


 毒矢を撃たれた樹人間(トレント)は明らかに動きを悪くする。その隙に駆け出したロアンが樹人間(トレント)を両断する。


 クレアは武器の投擲による援護を得意とし、

 エマはポーションによる治癒、

 シグレットは毒による相手の弱体化や破壊を得意とする。

 3人それぞれタイプが違う援護の形だ。


「みんなお疲れ様」


 シグレットは拍手する。


「え? 私たち、めちゃくちゃコンビネーション良くない!?」


 クレアが目を輝かせて言う。


「そうね。はじめてにしては中々良かったかも。役割がハッキリ別れてるからかな」 


 エマも同意する。


「……毒の錬成が得意な錬金術師と弓の名手のコンビ、抜群の相性だな」


 ロアンがシグレットとクロボシの連携を称賛する。


「あはは、元銀級(シルバーランク)に褒められるなんて嬉しいね」


 と笑顔で言いつつ、心の内では、


(ふん、まぁ動きは悪くなかったな。だがそれだけでクレアに相応しいとは言い切れない)


 シグレットは常にロアンの動きをチェックし、品定めしていた。

 戦闘に関しては今のところ、文句のつけようがなさそうだ。


 それから何体もの魔物を相手にしつつ、コンビネーションを高めたパーティは樹海の中にある野原にて一息つく。


「そろそろ岩人形(ロックゴーレム)の生息地だ。ここで一度休憩しよう」


 シグレットが提案する。


「ロアン君、水汲みを手伝ってくれないかな?」


「わかった」


 シグレットはロアンを連れて、森の中の川へ向かった。

 その背をエマは目で追い、


「クレア、2人の後をつけるよ」


「え? なんで?」


「面白そうだから」


「えー、疲れたから休みたい……」


 乗り気じゃないクレアをエマが引っ張って連れていく。



---



 川沿い。

 水筒に水を汲むロアンとシグレット。

 2人を木影から覗き見るクレアとエマ。


「率直に聞くよ、ロアン君」


「む?」


 エマは耳を尖らせる。

 シグレットは笑顔を剥がし、真剣な顔をする。


「クレアのこと、一人の女性としてどう評価している?」


 自分の話題が出てきたことで、乗り気じゃなかったクレアも耳を研ぎ澄まし始めた。


「……女性として、か」


 クレアはドキドキと胸を鳴らし、ロアンの答えを待つ。

 ロアンは「ふむ」と一息ついて、



「チビ、色気ゼロ、短気暴力娘」



 シグレットとクレアの額にピシッと血管が浮かぶ。


「あとはあれだ……」


 お、さすがになにか良いこと言うかな? とクレアは胸を躍らせる。



「発情期スケベ」



 そこまでロアンが口にしたところでクレアは「あの野郎……」と飛び出そうとするが、エマが「どーどー」とクレアを抱きとめる。


「まったく君はなにもわかっていない……!」


 シグレットが怒りを露わにする。


「クレアほど魅力のある女性はいないだろう!」


「ほう? ではどのあたりが魅力的か教えていただこうか」


「まずご飯を食べる時に、リスみたいに頬いっぱいに食べ物を詰める姿が可愛いだろうが!」


「……アレか。共に食事している時にやられると恥ずかしいだけだな」


「どんな人間が相手だろうと物怖じしないタフな精神力! 尊敬に(あたい)する!」


「少しは躊躇(ためら)いを覚えてほしいものだな、誰彼構わずドロップキックするのはどうかと思うぞ」


「武器の錬成能力は他を寄せ付けない、錬金術師として卓越した技術を持っている!」


「武器以外はまるで駄目だがな」


 シグレットの誉め言葉を全て打ち返すロアン。 

 言い淀んだシグレットはロアンを指さす。


「ならばなぜ君はクレアと組んだんだ! ただの成り行きか?」


 クレアも気になる質問だった。

 ただの成り行きと言えば成り行き。お互いパートナーから見放され、余り者同士組んだに過ぎない。例えロアンが成り行きと答えても責めることはできない……。


「ふん、どうせ本心では誰でもいいんだろう?」


 シグレットは視線を尖らせる。


「最初こそは成り行きだ。だが……」


 ロアンは小さく笑い、


「もし、学園の全錬金術師の中から自由に1人を選べと言われても、俺はクレア=シーフィアを選ぶだろう。アイツほど……なにをしでかすかワクワクさせる女はいない」


 ロアンの、真っすぐな言葉。嘘や冗談ではないと、声色でわかる。


 クレアはロアンを直視できず、つい顔を下げてしまう。


「ま、アイツほどなにをやらかすか不安な女もいないがな」


(その余計な一言を我慢できんのか、お前はぁ~!!)


 クレアは草陰から殺気をロアンの背中に送る。


「話は以上かな?」


 シグレットはロアンの迫力を前に、言葉を止めてしまった。


――その時だった。



「ガアアアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!」



 けたたましい魔獣の叫び声が4人の耳を貫いた。


「この声……!?」


「野原の方ね」


 クレアとエマは思わず立ち上がる。

 ロアンとシグレットは2人の姿を発見する。


「く、クレア!?」


「あっ、しまった……!」


「やれやれ、趣味の悪い」


「ごめんなさい。でも今はそれどころじゃない。早くビビアンとクロのところへ戻ろう。あの2人が待機している辺りから聞こえている気がする」


「ああ、そしてこの鳴き声聞き覚えがある……」


 ロアンは目を細め、



岩人形(ロックゴーレム)だ」



【読者の皆様へ】


この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださると自信になります。

面白くなかったら★1つでも全然かまいません。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最新作『間違いなくVtuber四天王は俺の高校にいる!』もよろしくお願いします。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ