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最終話 異世界


 ビルが立ち並び、自動車が行き交う。

 ナツキから聞いていた異世界。

「あ、またトラックが通ったよ!」

「そりゃあ通るよ。この世界では全く珍しいものではないんだから」

 ボクの隣を早足で歩く黒い猫。これがこの世界でのトラック様の姿だ。

 レンガ造りの建物と馬車の世界から来たボクにとってはそのどれもが想像以上だった。

 

 ボクがこの世界に来て数ヶ月が経ち、この世界の生活にも少しずつ慣れてきた。

 ボクの青い髪と瞳はこの世界では珍しいらしく、どこに行っても注目されてしまう。トラック様のアドバイスで東京の秋葉原という街に滞在することにした。ここならボクの姿でもある程度はごまかしがきくから、だそうだ。

 無理やり異世界に連れてこられたトラック様は最初は不貞腐れて口を聞いてくれなかったけど、三日もせずに口を利いてくれるようになった。トラック様は基本的におしゃべりなのだ。


「はやく元の世界へ帰ろうよ。君が協力してくれればボクも力を取り戻せる。君だって仲間たちに会いたいだろう?」

「嫌だよ。トラック様をあの世界に戻したら何するかわかんないし」

「もう悪いことはしないって。そうだ。君もボクと一緒に世界のバランスを取るというのはどうかな!?」

 トラック様が言うにはボクにはまだ願いの力が残っているらしい。ボクの『願い』を使えばトラック様はその力を利用し世界のエネルギーバランスを調整することで転生を行える、らしい。


「余計に嫌だ。そんなこと絶対にやりたくないし」

「ねえ、頼むよ。この姿、結構疲れるんだよ」

「いい気味だよ。しばらくはその姿で反省するといいんだ」


 ボクは秋葉原の街をズンズンと進む。

「待ってよ。君と一緒にいないとボクは野良猫として駆除されてしまうんだぞ? いいのか!?」

「嫌なら早く追いついてきなよ」

 トラック様は人混みを必死で避けながらボクの後を追いかけてくる。この人はもうずっとこのままでいいんじゃないだろうか。これならぎりぎりかわいいと思えなくもないし。


「それで、今日はどこへいくんだい? 髪も隠さないで。いくら秋葉原といっても君はやはり目立つんだから」

 確かに行き交う人々が皆ボクを見て振り返る。珍しいのもあるだろうけど

「自慢の髪だからね。今日はこのままでいたいんだ」

「ふぅん。それで、どこにいくの?」

「ここだよ」

 ボクは裏路地にある建物の前で立ち止まった。


「な、なんだいここは」

「ラーメン屋さんだよ」

「ラーメン?」

「この国のソウルフードなんだって」

「君の今の姿は青髪の女子高生なんだ。さすがにこの店に入るのは目立ちすぎるよ」

「ねえ、やめとこうよ。違うお店にしよう? 王宮ぐらしだった君がこんな小さな店の料理で満足できるとは思えないよ」


 そんなことはない。

 あの王宮の食事を食べた後に、お腹いっぱいであっても食べたくなると異世界人たちが口を揃えて言うくらいなのだ。絶対においしいに決まってる。

 さしあたって問題は種類が多いことだ。

 味噌、塩、醤油……いろいろあるけれどどれが一番美味しいかだけは異世界人の間でいくら話し合っても意見がまとまらなかった。ボクはいつもその様子を眺めているだけだった。

 次に皆がラーメンの話をするときにはボクも一緒に混じられるように全てのラーメンを食べてみなくてはならない。

 それが終わるまではこの世界にいようと思う。


「待って。ボクはどうすればいいんだよ一緒にお店に入れないんだけど?」







 終わり。







終わりです。完結まで1年もかかりました。これから少しずつ加筆修正も行っていこうと思います。

お付き合いくださりありがとうございました。

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