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4-10,不便な万能③




「待てよ」


 ボクたちは動かなくなったタツオの横を素通りしようとしたのだけど、ボクはタツオに肩を掴まれてしまった。


 やっぱり戦うことになるんだろうか。

 出来ればプリムたち使節を無に事もなくフィオールに送り届けたい。戦闘は避けたかったのだけど。


「ここまで言われてしまったら俺ももう後には引けない。みんな死んでもらうしかない……」


「お、落ち着こう? 何も殺さなくても。タツオさんのことは皆で忘れるということでどうだろう?」


 ボクが皆の顔を見渡していく。全員がボクと目があうたびに頷いてくれた。

 一番最後に目が合ったアコも頷いた。アコが良いというのならもうそれで終わりにできるんじゃないかな。

 正直言えばこれ以上関わりたくないというのが全員の本音だと思うけど。


「ほら、皆もそれでいいって。だから、タツオさんもプリムたちのことはもう忘れてさ、新しい人生を始めるというのはどうかな」


「……信用できない。お前らの誰かが俺の過去を暴露したらと思うと、俺はもう夜も眠れない。だったら、今、ここで、お前たち全員を殺すしか無い!」


 タツオは手のひらに炎を生み出し、左手で腰の剣を抜いた。

 剣技はプリムよりも上、炎の魔法はルビアよりも上。

 こんな「最強」を相手に勝つ方法は……。


 ――ある。なんとなくだけど、勝てる気がする


 こちらにはナツキという「願望器」の能力、ボクの願いを顕現する能力者がいる。

 それがタツオよりも上回っているとは思えない。

 だけど、タツオの能力って「あの」トラック様が与えた能力だ。

 だったら、そんな万能な訳はない。

 

「じゃあ、その、戦うの?」


「そうだ。なんか悪いけど、お前も、お前たちも、全員死んでくれ」


 タツオが魔法を放つ。

 ルビアがそれを防ごうとするけども、威力がタツオのほうが高いので吹き飛ばされてしまう。

 タツオが剣撃を放つ。

 プリムがとっさに防ごうとしてくれたけど、タツオの剣技のほうが早く、プリムは傷を負ってしまう。


「俺は│最強のワンヘッドの能力をもっているのは聞いているな? お前たちがどんなに強くとも、俺は常に「最強」だ。更に上の力を手に入れることができるんだ。好きなだけ反撃しろ、全力で攻撃してこい、その全てを乗り越えて俺が勝つ。俺の力のほうが常に上なんだ!」


「そうだね。きっとそれは本当なんだ」


 ボクはナツキに作戦を話した。

 作戦は簡単明快。


「全員で戦うんだ。バラバラじゃなく、全員で、一気に畳み掛ける」


「だけど相手は「最強」なんだろ? 一時的に倒せてもすぐに力を塗り替えられてしまうんじゃないのか?」


「ねえナツキ、最強ってなんだろうね」


「おいおい、今禅問答をしている場合じゃ……」


 ゼンモンドーというのが何なのかは置いておいて。


「最強ってさ、一番強いってだけでしょ? でも一番強いからってそれが絶対に戦いに勝てるってわけじゃない。タツオはトライアンフとは違うんだよ。タツオはプリムよりもルビアよりも強い。きっとここにいる誰よりも強い。最強だと思う。だけど、それって全員よりも強いということではないと思わない?」


「な、なるほど、そういうことか! よし、じゃあ俺も皆の加勢に入ってくるよ!」


「お願いね! あとけが人が出たら回復薬での治療もお願い。ボクは願いの力でバックアップしてるから!」


 ナツキも乱戦模様のタツオせんに加わっていった。

 予想通り、タツオは誰よりも強いけど、複数を相手の戦闘に戸惑いを見せていた。

 タツオたちが倒してきた相手は魔王やドラゴン。いつも相手は単体だった。しかも、氷竜にいたっては最初は倒せなかった、と聞いた。

 だったらタツオの能力は相手が人間の時、しかも相対的に発動するものじゃないかと予想したんだけど、それは当たってそうだった。


「な、タルトっち。俺は何したら良い?」


「リントは出来ればボクを守ってくれないかな。ボクたちに敵わないと理解したら、最後に誰かを道連れにしようとすると思うんだ。その時に狙う相手は、たぶんボクだ」


「なんかタルトっち変わったな」


 ドキっとして振り向く。


「いや、いい意味でさ、なんていうか頼りがいが出来たっていうか、凄みが出てきたっていうかさ」


「そ、そうかな」


 どうだろう。そうかもしれない。

 あのアルムス戦争は数ヶ月にわたって戦争の指揮を獲ったりしていたし、成長せずにはいられなかった。それに今はトラック様が、得体の知れない神様のような存在がボクの命を狙っているわけだからボクは気を抜いてはいられない。だけどあんなやつに簡単に殺される訳にはいかない。

 ボクは皆がボクのことを守ってくれると言ってくれた時に覚悟を決めた。

 何があっても絶対に最後まで抗い続ける。絶対に諦めないと。

 リントはそういうちょっとした変化なんかを敏感に感じ取る繊細さを持っているのはすごく頼りにしてるところだ。これはナツキには、ない。アイツは割と鈍感だからね。


「でも、俺には戦う力無いからなあ。いざとなれば札束でもだして目眩ましするくらいしか」


「それでも助かるよ! でも、リントって試魔石で反応が出てたでしょ? 詳しくはわからないけど、たぶん本当は魔法だって使えるはずだよ。ボクと違って魔力があるわけだしね」


 プリムの剣はタツオに簡単に防がれる。その瞬間を狙ってルビアとナツキが炎で攻撃を入れる。その炎もさらに強力な炎でかき消す。だけど、両手がふさがった瞬間を狙ってさらにアコとクレアが攻撃を加えていく。少しずつ、確実にタツオを追い詰めていく。


 ここにいる全員がタツオより「弱い」だからタツオはこれ以上強くなれない。

 だけど、ここにいる全員が力を合わせればタツオを倒すことはできるんだ。




 そして最後の時が来た。


 タツオは予想通り、やぶれかぶれの突撃で、全員を吹き飛ばし、一瞬のすきを狙ってボクの方へ飛び込んできた。


「せめてお前だけでも、殺す!」


「させねえよ!」


 リントが札束を大量に出して視界を塞ぐ。だけど、タツオの炎で全て焼き払われる。

 

「こんな紙切れで俺の攻撃がふせげるかあぁぁぁぁっ!!」


 タツオが更に炎を一回り大きくしたものを放った、が、その炎はすべて目の前に現れた金色の壁に防がれた。


 金色の壁、というか、金色になったリントがボクの前に立っていた。


「な、何だお前!? 金属人間!?」


 そのあまりに不気味な金色の人間リントを見てタツオが一瞬怯んだすきにプリムが背後から一撃を加え、タツオは気を失って倒れた。

 













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