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4-8,不便な万能①




「こいつらは、俺をパーティから追放したんだ!」


 タツオが叫んだ。

 それは知ってる。もうプリムたちから聞いてる。何があったのかも。

 まさかタツオはそれを自分で言うつもりなんだろうか。


「こいつらは、俺を、利用するだけ利用してパーティから追放したんだよ!」


「う、うん。それで?」


 タツオはまるでボクの方が頭が悪くて理解できていないんだと言わんばかりの見下しためを向けてきた。


「だから、ひどいだろ? 追放したんだぞ?」


「どうして追放されたのかによるかな、と」


「はあ? お前そいつらの味方するのかよ」


 話が通じない! もうこの時点でボクだったら追放したい。


「待ってよ。追放されたことは気の毒だったと思う。そりゃあ辛かったんだろうね」


「そうだよ。ガキの割にはものわかりがはやいじゃねえか。追放だからな。復讐されたって文句は言えねえ。そうだろ?」


「うん、本当だね。よかったら追放されるときにどんなことを言われたのか教えてくれないかな」


 ボクの背中をつついてきたのはナツキだった。ナツキが耳打ちしてくる。


「お、おいタルト。大丈夫なのか? あいつどうみてもヤバいだろ」


「大丈夫、とまでは言えない。自信はないよ。でも今ここで、なるべくなら騒ぎを起こしたくないし、話し合いで解決するならそれに越したことはないよ。先にこちらから手を出すのもまずいしさ」


「わかった。危なくなったらすぐに言ってくれ」


「うん、ありがとナツキ」


 そう言ってナツキは少し後ろに下がった。

 ボクとタツオの二人だけが前に出て話をする流れに。




「それで、どうして追放なんてことになったの?」


「知らねえよ。急にあいつが『もうあなたとは一緒にパーティを組めない』と言い出したんだよ」


 と言ってタツオはプリムを指さした。


「なるほどね。理由は教えてもらえなかったってこと?」


「理由は、なんか言っていた気がするけど、忘れたな。それより追放だぞ。ありえねえよな」


 なんと言ったものか。ボクがプリムに聞いているのはタツオがパーティ内の少女に手をだそうをしたことが直接の理由だと聞いている。だけど今ここでタツオにソレを聞いたところで認めるとは思えないし。


「そうだね。プリムたちは君のことを利用していたというのはホント?」


「ホントだよ。だって、こいつらが出世したのも全部俺のおかげだからな。氷竜との戦いも、魔王との決戦も、倒したのは俺なんだぞ!」


 ボクがプリムたちの方を見るとプリムが口を開いた。


「確かのその通りね。魔王を倒したのはそいつよ」


 続いてルビアも「氷竜を倒したのはそいつで間違いないな」と言う。

 なるほど。タツオは嘘は言っていないんだ。だとしたら……タツオの言うこともわからなくはないかも


「だけどね、魔王を倒した技はあたしの技なのよ」


 プリムが不満げな顔で言った。

 ボクはイマイチ意味がわからない。言葉の意味はもちろんわかるんだけど、プリムがわざわざそんな事を言う意味がわからない。だってプリムはそんな他人の手柄を自分のものにしようとか考えるタイプでもない。


「どういうこと?」


「うん。だからね、魔王は私でも倒せたってことなの。魔王を倒すための技を私が編み出して、タツオはその技を使って魔王を倒したってわけ」


 う、うん。どういうことだ?


「氷竜もそうだ。剣も魔法も効かない氷の鱗に全員が苦戦していたところで│そいつ《タツオ》はあたしになんて言ったと思う?『さっさと倒せる魔法を考えろ』って言ったのよ。それであたしがこう、絶体絶命のときに王宮で見せたあの炎の魔法をかっこよく作り出したのね。それはもう、最高のタイミングで。その魔法でようやく氷竜にダメージが入るってのがわかったところで、その魔法をタツオが使って氷竜倒したのよ」


 なんかわかってきた。

 タツオの能力は相手の能力をコピーする。しかもコピー元よりも強力に。

 でもこれは強い相手がいて初めて意味がある能力なんだ。


「でも倒したのは俺だぞ。俺のほうが剣も魔法もうまく使える。俺のほうが強いんだよ」


 それはおそらく事実だ。

 だけど、例えば魔王が相手なら魔王を倒せればいいわけで、プリムの技でプリムが魔王を倒せていたのなら別にタツオは必要ない。氷竜でも同じことが言える。ルビアの魔法で倒せていたのだから。


「なるほど。タツオさんはあれだ。要らないんだ」


「おい! なんでそうなるんだよ!」


「だって、ねえ?」


 その場にいるほぼ全員が頷いていた。


「お前ら、それでも人間か? 俺の力で倒したのは事実だろうが! それにどんな技も、魔法も、俺のほうがうまくできる、俺のほうが強い」


「ねえ、タツオさん。あなたには「何が」できるの?」


「はあ? だから言ってるだろ。なんでもできるっつーの!」


「でも、それって全部他の人でもできることだったんじゃないのかな」


 タツオは口を開いたが言葉が出てこなかったようだった。ボクは続けた。


「剣はプリムが使えるし、魔法……炎の魔法はルビアが使える。治療はアコちゃんが使える。パーティのみんなはそれぞれお互いの能力を補完しあってるんだ。じゃあタツオさんは何ができるの?」


「全部だ! そのどれも俺のほうがうまく使える。俺ならその全てができるんだぞ!」


「……わかった。『タツオさん』が要らないんじゃない――」


 ボクはタツオの顔を見上げる。少し心が痛かったけど言わないといけない。


「――『他の全員』が要らないんだ」













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