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4-6,異質





 よくわからないものだから恐怖を感じる。魔力がボクたちよりも身近にある彼女たちにとっては魔力の種類がわかるということは一番の理解につながる。

  試魔石による魔力チェックはフィオールの皆と、うちの異世界人二人が打ち解けるきっかけになってくれたのだった。


 翌日。

 今度はボクたちが質問する番だ。

 フィオールに現れたという異世界人についてボクは訪ねた。


「前にも言ったと思うが、あたしたちが出会った異世界人の名前はタツオ。見た目はリントやナツキと似た感じで若い男だった」


 ルビアの話を聞いたナツキとリントは顔を見合わせた。


「日本人だな」


「そっすね。日本人っすね」


 彼らは名前と風貌を聞けば民族名がだいたい分かるようだ。シューマのときもそうだった。


「変なこと聞くけどさ、お前らって何歳なんだ? どうもお前ら異世界人って見た目で年齢が分かりづらくってさ」


 ルビアの問いに、ナツキは「こっちにきて一年たったからたぶん十八歳」と答え、リントは「じゃあ俺は十九歳っすかね」と答えた。

 そういえばこの二人、こっちにきて暦が違うもんだから誕生日がないんだった。うーんどこかで作ってあげないとかわいそうかな。


「なんだ、見た目のまんまなんだな。タツオはお前らと殆ど変わらないくらいに見えたんだけどさ、本人は三十六歳って言ったんだよ」


 転生のときに見た目も変えてもらったとかそういうパターンだろう。ルイも転生時に見た目が大きく変わったそうだからトラック様にはそのくらいの力はあるみたいだし。


「あいつは性格はクソだったけど、能力はとんでもなかった。あいつの能力は最強のリミット・ブレイクって言ってたけど。なんでも最強の能力なんだと」


 最強の能力? うーん。最強と言っても、ナツキの願望器リアライズやシューマの百戦百勝トライアンフも見方を変えれば最強と言えそうな能力だし、いったいどんな能力をもらってそんな大言壮語を吐いたのだろう。


「あいつが現れるまでは私が王国で現役最高の炎の魔法使いだったんだ。だけど、あいつは私の最強魔法を見て「俺のほうがもっとうまくできる」って言ったんだ。そして、その場であたしの最高の魔法を使ってみせた。あたしが十年以上かけて手に入れた魔法をたったひと目見ただけで。しかも本当にあたしよりも強力な魔法を使ったんだ」


 ルビアは怒りとも悔しさとも恐怖とも取れるような顔つきで言った。


「私の奥義もよ」


 とプリムが続けた。


「私の家に伝わる秘伝の奥義も「自分のほうがもっとうまくできる」と言って、あっさりと使ってみせたわ。でもそんなこと「あり得ない」のよ。この奥義は見ただけで真似できるような簡単なものじゃないのよ。私だって体得するのに十年はかかったし、十年修行したから手に入るというものでもないの。私の家に伝わる秘技なの。数百年の歴史の上に成り立っている技だったのよ。だから見るだけで体得することなんてできるわけないのよ」


 プリムもルビアと同じく、思い出すのも嫌だといった様子だった。


「最強の矛、か。聞いた話から行けば見た技をすべて真似できてしまうみたいな能力なのかな」


 ボクがそういうとプリムが


「そんな魔法聞いたことないわ! 適正もなく修練も行わずに高等魔法を習得するなんて。フィオールにもそんな魔法が使える人間なんて歴史上にも存在したことないわよ。たぶん」


 そうだろうなと思う。でも異世界人ならそれが可能なのかもしれない。

 ボクは前回の戦争で出会ったシューマの話をした。

 魔法では説明の付かない能力について。

 プリムたちは信じられないといった反応だったけど、タツオの能力を思い出して、と言うとだまってしまった。


「なるほどね。異世界人ってなんでもありなのね……。一体どういう仕組みになっているのかしら。国につれて帰って徹底的に研究したいくらいよ。タルトの言う通りだとしたら見た能力をそのままコピーするなんて能力もあり得るのかもしれないわね」


 他にもタツオという異世界人について詳しく教えてもらった。

 トラック様はボクを倒すために刺客を差し向けると言っていた。

 トライアンフを下し、願望器であるナツキが側にいるボクを倒すというのだから相当な能力者を送ってくるに違いない。話を聞く限り、タツオはぶっとんだ能力を持っているようだし、彼がトラック様の刺客である可能性も十分考えられたからだ。

 


 そしてプリムたちが来てから一週間ほどが経った時、正式にトワイローザ王国はフィオール王国との友好条約を結ぶことを決定した。

 正式な書簡の交換や調印式は後日行われることになって、プリムたちは報告のために本国へ帰ることになった。

 短い期間だったけどナツキたちは同年代の女の子たちと毎日騒がしく過ごしたのは初めてだというのもあって別れをとても惜しんでいた。ボクだってそうだ。ボクも友達と呼べるような同年代はほとんどいなかったのでプリムたちと過ごしたこの一週間はとても楽しかった。


 そんな様子を察してくれていた国王ルイはプリムたちを国境まで護衛するという名目でボクとナツキとリント、そして精鋭部隊、その隊長としてクレアを任命してくれた。


 


 二日後。

 小隊を率いてボクたちは王都を出立した。

 旧国境まではゆっくり行けば数日はかかる。

 さらに、新たに拡大した王国領である戦後の情勢不安を抱えるアルムス自治領を経由することになるのでそれなりの護衛は必要だったけど、かといって大群を率いていってしまうとアルムスを刺激してしまうことになるので少数の部隊でいかざるを得なかった。


 かつてアルムス王国との戦争でシューマの率いた軍隊と激しく、数ヶ月に渡って戦った国境付近についたのは王都を出てから五日後だった。





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