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3-9,違えられた約束

【これまでのあらすじ】

 村の小さな少女タルトは森で異世界人の高校生の安藤夏樹ナツキと出会う。ナツキの周りには何故か美少女が現れないので仲間を探すために人がたくさん集まる王都にいく。

 そこで異世界人の今川凛冬リントと国王である佐藤るい(ルイ)たちと出会い彼らも助けることを決める。

 トワイローザ王国は隣国アルムス王国より戦争を仕掛けられており国王であるルイはその対応に追われていた。国力で大幅に勝っているはずなのに何故かトワイローザは戦いに敗け続けているという。その原因を探るためにタルト達は戦争の前線に赴いた。

 敵の将軍シューマも異世界人だった。



「そいつ異世界人だ。絶対に。しかも日本人だな」


「だな。シュウマとかいう名前もそれっぽいっすけど、千葉って言ったんならまちがいないっすね」


 ボクはナツキとリントにシューマ将軍とのやりとりをテントの中で報告した。

 ナツキとリントがそういうなら間違いなさそうだ。よかった。すべてが無駄じゃなかった。敵の将軍が異世界人ということがわかっただけでも一歩前進だ。小さな一歩だけど。

 そのまま作戦会議に突入する。

 

「異世界人ということはなにかの能力を持っている可能性が高いな……そうか! 今日のいきなりの大雨だ! 天候を変える能力じゃないか?」

 

 ナツキの予想。さすが異世界人らしい柔軟な発想だ。

 でも、ちょっとひっかかる。

 リントは大金持ちになりたい、ルイは本に出てくる王様になりたい、という願いが能力になっていた。ナツキだけは何の能力かよくわからないので、願いが能力になったかどうかはわからない。ナツキだって何かの願いが能力になった可能性はまだ残る。

 そして、三人ともトラック様によって転生したことは共通している。

 だとしたら、シューマ将軍は「天候を変えたい」と願ったことになるのだけど、転生するってときに、自分の願いが叶うっていうときに願うかな、そんなこと。そりゃ絶対にないわけじゃないと思うけどさ。

 それともシューマ将軍は本人の意思とは関係なく能力を与えられた、ナツキのような変則パターンなのかな。またはトラック様じゃない神様が転生させたとか? このあたりは今考えてもわからない。

 他にも引っかかる部分がある。

 クレアがシューマによって捕らえられたということとか。ボクがよく知っている三人の異世界人に共通してろ特徴に体力が低いってのがある。ましてや剣の腕なんかはこの世界の人間とは比べるべくもなく大きく劣っている。そんな異世界人のシューマ将軍がこの国でトップクラスの剣士のクレアに勝てるものだろうか。そりゃあ多勢に無勢だったから数に圧されたということも考えられるし、シューマの見栄、嘘、だった可能性もある。これも今考えてもわかることではないのだけど、わかっていることは結論を急ぐのはまだ早いってことだ。

 裕太将軍の能力は天候を操るなんてものではなく、もっと別の能力だとしたら? 例えば強力な魔法が使えて、雨を降らせたのはその応用した能力だったりするかもしれない。

 まだ情報が全然足りない。もっと情報を集めないといけない。それがボクたちが悩んだ末に出した結論だった。結局はまだ何も解決できていない。

 

 ――でもまだだ

 

 クレアが帰ってきたらまた何か情報をつかんでいるかもしれないし、新しい事がわかるかもしれない。

 テントの外で馬の足音が聞こえた。鎧の音も。誰かが近づいているみたいだ。

 ボクはテントの外に出て確認する。一頭の騎馬が近づいてきていた。騎乗しているのはその大柄な体格からすぐわかった。ガトー将軍だ。


「タルト殿、急ぎお耳に入れておきたいことがあります」


 表情が暗い。ガトー将軍は馬を近くの木につなぐとボクの近くへやってきた。


「なにかあったんですか?」


「アルムスが条件の一部を破棄してきました」


「ええっ!?」


「これまで戦いの度に何度も捕虜交換の約束を結んできたのですが、条件を破棄されるのは初めてのことです。あの男、性格はあのとおり異常だが、約束は違えない男だと思っていたのですが」


「それで、なんて言ってきたの!?」


「捕虜をすべて返還するという条件の一部を破棄。クレアだけは還さないと言ってきたのです」


「クレアだけが? なんでクレアだけなんですか?」


「わかりません。そして、クレアを還してほしい場合は……もう一度タルト殿と話をさせろと言ってきています。そうすればクレア殿を還す、と」


「ボ、ボク? ボクと話を? なぜ?」


「わかりませぬ。ですが、捕虜の段階的返還はまだ途中でして、今こちらも下手に相手を刺激するわけにも行きません。当然、相応の報いはいずれ受けさせるつもりではあるのですが」


「捕虜が実質人質だからってことですね……」


 シューマ将軍を刺激したのがまずかったか。シューマ将軍はボクに自分が異世界人だということがバレたことを気にしているのかもしれない。やりすぎたかもしれない。まさかクレアを危険にさらしてしまうことになるなんて、なんてバカなんだボクは。もっと慎重に発言すべきだった!

 相手がボクと話をしたいと、そうすればクレアを還してくれるというのなら選択肢は一つだ。


「わかりました。ボク、いきます」


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