番外――大前提の振り返り
破滅の塔の説明です
ここで一旦塔についての大雑把な説明をしておこう。
塔は直径二十メートル、高さはおよそ百メートルに届く円柱形をしている。最終戦争と呼ばれる人類史最大、そして最後の戦争が起きる十年前に完成した、これまた人類史最高の発明家、通称錬金術師アントニオによって手掛けられた、彼の最高傑作となった『作品』だ。その上この伝説に拍車をかける逸話は、これほどの巨大建造物を彼一人で創り上げた、というものである。建設作業は全て彼の忠臣である彼が生み出した無数の自動操縦ロボットだけで行われた。そのため塔の構造を細部に至るまで完全に把握しているのはこの世にアントニオただ一人しか存在しないのだ。
最初は皆面白がって集まったせいで、一時は見物客のあまりの多さに社会現象にまでなった。しかし普通に考えて誰にも設計図を渡さず完全に秘匿で作り上げられた、なんの装飾も施されていない完璧な円柱形を成す塔など不気味でしかないのだ。建設期間は数ヶ月かかったわけだがその間誰も工事風景を拝めなかったなんて話は不自然なのだ。人の流れをねじ曲げて塔の周囲一体を人工的なブラックボックスと変え、衛星写真に撮られることすら嫌って天幕を張るような徹底ぶり。それだけで大衆の不信感を煽るには十分すぎたのだが、それにトドメを刺したのは塔の基本構造にあった。
というのも約六千六百平方メートルもの表面をいくらなぞっても入口はおろか通気口さえ見つからないのだ。製作者本人ですら立ち入れないはずの真っ暗な闇に、しかしどうやってかアントニオは出入りしていた。外界とは完全に切り離された正しく異界。それをアトリエとする彼に、何も知らない大衆が恐怖を覚えるのは極自然な事だった。奴はあんな場所に閉じこもって一体何を作っているのか、と。
それに、これは後からわかったことだがその塔は外界からの一切の刺激を遮断する。X線すら通さないその徹底ぶりは彼の性格を端的に表していたとも取れるだろう。ともあれ戦時中は混乱を極めた。何をしても微動だにしない巨大な塔。その塔を彼が設計した量産型のロボットが一生懸命に破壊しようとする、などという状況が起きたのだ。ある者は、それは巨大な武器庫だと言った。またある者は、それはノアの方舟を模した核シェルターだと言った。挙句の果てには、それは世界の厄災を全て封じこめたパンドラの箱だという者も現れた。そのどれもがあながち間違っていないのだ。未だ答え合わせはされていないのだから。
そして遂に塔周辺を荒地と化した人類史最大、最後の戦争をすまし顔で生き残った最強のシェルターは、やがて『破滅の塔』と呼ばれるようになった。人々はパンドラの箱説を推したのだ。それを開ければ、人類史最大、最後の戦争の生き残りでも容赦なく喰い尽くす化け物が解き放たれるのだと。案外悲観的な世論は根拠も無い悪い噂を盲目的に信じたわけだ。
そうして畏怖と恐怖の対象となった塔は百年以上もの間吹きすさぶ風に晒され続けて研磨された、積もりに積もった絵空事の産物となった。
畢竟、当たり前といえば当たり前ではあるが塔に近寄る人もいなければ、いつの間にか話題に上がることすらなくなってしまった。触らぬ神に祟りなしというのにも似ていた。
要約すると近付くと危ないらしいから離れてそっとしておこう、それが世界中に浸透したのだ。
ただ一部だけを除いて。
ありがとうございました
自分でも驚く程に期間が空いたなって思いました
ここからは余談なんですが最近金色のガッシュ!!を全話読みました
おいフォルゴレお前かっこいいじゃねえか、としっかり感動しましたね
皆さん好きな呪文ありますか?
僕は圧倒的ジガディラス、ウル、ザケルガです語感がいい
ちなみに一番好きな魔物はロブノスです